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韓国:『国家公認家政婦』と呼ばれる療養保護士
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『国家公認家政婦』と呼ばれる療養保護士

老人長期療養保険施行1年、低賃金と雇用不安に苦しむ療養保護士

イ・コンマム記者 iliberty@jinbo.net / 2009年06月18日20時34分

療養保護士金某氏(51才)は疥癬という皮膚病で6月8日、労災を認められた。 見ていた対象者の病気が伝染したのだ。

京畿道高陽市にある老人療養施設のS療養院で働いていた金某氏は、担当病室が 変わって20日後に対象者が持っていた病気にかかった。初めて病室を変わった 日、患者は全身をかいて傷だらけだったが、看護師は問題にする必要はないと 言い、よく洗って軟こうを塗ってやれば良いとだけ言った。1か月に二日を除 き、24時間、対象者を世話した。

1か月が過ぎて病室を変わったが、療養院院長の指示だと言って「どうせ感染し たのだからその部屋で働き、治療しなさい」と強要された。金某氏がいっそ止 めると言うと療養院側は「他の療養保護士にもうつるかもしれないので、もう やめろ」と言った。

死角地帯の療養保護士

▲老人長期療養保険広報ポスター

7月1日で老人長期療養保険制度導入1年になる。急速な高齢化に老人福祉を拡張 するという肯定的な面だけが浮き彫りにされ、老人を直接介助する療養保護士 の労働条件は視野にない。

老人長期療養保険制度が始まって導入された療養保護士は、「老人福祉法の人 材の家庭奉仕員と生活指導員より機能、知識水準を強化」するために国家資格 証明を取らなければならない職業だ。『療養専門担当者養成』目標を押し出し ても、現場で働く療養保護士は長時間低賃金労働に苦しむ上、金某氏の例の ように各種の疾病に露出している。

チョン・グムジャ全国療養保護士協会会長は「介助の対象者に対する正確な情 報が与えられないまま、不適切な業務指示の中で働く療養保護士は、常に被害 者にならざるをえない」と指摘する。

長時間低賃金に非正規職として暮す

療養保護士の高強度長時間低賃金労働の問題は、療養サービスの質を落とす直 接の要因になる。全国療養保護士協会によれば、療養保護士は12時間二交代か、 24時間ずっと対象者とともに過ごす形態で勤務している。施設で働く療養保護 士は月100万ウォン程度、家を訪問する療養保護士は月6-70万ウォン程度の賃金 を受けとる。

公共労組医療連帯のヒョン・ジョンヒ分科長は、「療養保護士の労働実態と療 養サービス水準を一言で表現すれば『国家公認家政婦』、『現代版高麗葬』だ」 と話した。

▲療養保護士正規職および直接雇用非正規職勤務形態別賃金[出処:全国療養保護士協会]

▲裁可療養機関(訪問療養)療養保護士給与形態[出処:全国療養保護士協会]

彼らはほとんどが派遣業者を通した間接雇用非正規職の形態で働いている。老 人長期療養保険法施行規則のうち長期療養機関および裁可長期療養機関の施設・ 人材基準では、施設の場合「すべての従事者は機関の長との勤労契約が締結さ れた者でなければならない」と直接雇用を明示しているが守られていない。

チャムセサンが確認した結果、ソウルにある市立S老人専門療養センターは療養 保護士を直接雇用せず派遣専門担当者N社とM社を通して、雇用していた。

保健福祉資源研究院のチェ・ギョンスク常任理事は「療養保護士は低賃金・長 時間労働の非正規職を量産した」とし「裁可療養機関の場合、時給制で、8時間 労働をしたくても時間制でするほかはなく、その上に深刻な雇用不安に苦しん でいる」と明らかにした。

療養保護士1人が世話する対象者も2.5人に達する。4組3交代と仮定すると、療 養保護士1人は10人の対象者を世話しなければならない。カチョン医科大学のイ ム・ジュン予防医学科教授は「こうした人材基準でケアを遂行すること自体が 不可能な水準」とし「政府の予算で運営される機関さえ長期療養保険に変わっ てから配置人材数を減らし、サービスの質が落ちている実情」と伝えた。

教育機関の乱立で就職も難しい療養保護士

悪条件だが、療養保護士の就職は難しい。教育機関の乱立で需要より多くの療 養保護士が輩出しているためだ。これは療養保護士が悪条件を我慢して働く原 因の一つとなる。

保健福祉部資料によれば、長期療養機関は今年3月を基準として1881か所の施設 と1万2千か所の裁可施設がある。療養保護士教育機関は1106個所で、輩出した 療養保護士だけで42万6495人だ。このうち就職した療養保護士は5万人程度に過 ぎない。

療養保護士労働条件改善=サービス質改善

専門家は、療養保護士の労働条件を改善するために政府が老人長期療養保険制 度が持つ弊害を認め、公共療養機関を拡大する方向に転換すべきだと指摘する。

チェ・ギョンスク常任理事は「政府が(老人療養施設の)民間市場化を推進した 結果、施設と人材の需給および療養人材養成など政策の失敗を持たらした」と し「療養労働者の安定した労働条件は、良質のサービスを提供するために必要 不可欠」と説明した。

ヒョン・ジョンヒ分科長は「全体施設の半分程度は中央または地方政府が設立 した後、地方自治体で直接運営すれば療養サービスの商業化と不適切なサービ スなどが予想される民間施設の牽制も容易になる」と述べた。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2009-06-22 02:35:45 / Last modified on 2009-06-22 02:35:47 Copyright: Default

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