本文の先頭へ
韓国:正規職化すれば『大量解雇』を誘発?
Home 検索

正規職化すれば『大量解雇』を誘発?...「社会的純益」

経営界、「48万の総雇用が減少」 VS 労働界「社会経済的な肯定的影響」

ユン・ジヨン記者 2012.07.23 22:35

非正規職の正規職化が総雇用の縮小などを誘発するという資本側からの攻勢に、 労働界が正規職転換による社会経済的効果を持ち出した。

全経連付設研究所の韓国経済研究院は6月、[正規職転換義務が雇用に及ぼす影響] 報告書を発表した。報告書には、非正規職の正規職転換を義務化すると、総雇用が 約46〜48万人減ると予想した。

また、減少した雇用はすべて既存の非正規職雇用なので、正規職転換義務化の 政策は非正規職勤労者の雇用安定性を向上する非正規職保護政策にもならない と主張した。事実上、こうした議論は2003年の韓国労働研究院と2004年、韓国 経営者総協会の主張をはじめ、現在まで経営界側から提起し続けてきた争点だ。

これに対し韓国非正規労働センターと民主労総は7月23日午後、民主労総大会議室 で月例非正規労働フォーラムを開き、『非正規職解決法の雇用効果比較評価』 の討論会を進めた。労働界はこの席で非正規職の正規職転換は付加価値増大効果 と社会的純益が発生すると主張した。

非正規職正規職化が大量解雇を誘発する?

韓国経済研究院は報告書で「非正規職の正規職転換が義務化されると、退職金 や退職慰労金など雇用調整に関する費用が急増し、企業はできるだけ少ない人 員を雇用するようになる」と見通した。

雇用調整費用が増加し、労働需要が萎縮して、結局韓国の総雇用は減るという 説明だ。また平均失業期間が現在の2.6ケ月から1か月以上延び、各々3.6ケ月 と4.2ケ月になると展望した。

これに対して問題提起をしたキム・ソンヒ高麗大労働大学院教授は「これまで 『差別禁止解消による人件費増加で雇用減少』の主張よりさらに弱点が多い」 と批判した。まず正規職と非正規職の生産性の格差の議論で提起される『差別 を除く純粋な生産性の格差』は存在しないという指摘だ。

キム・ソンヒ教授は「非正規職差別が業務と教育訓練、勤続にも反映されるが、 これを分離するのは非正規職の固着化を前提にしなければ成立しない」とし 「純粋な生産性格差は存在しない。純粋ではない差別の複合物」と説明した。 これを取り除くには非正規職を正規職と同じ業務と労働条件を保障しなければ ならないという。

また、キム教授は該当報告書が雇用調整費用(解雇費用)を中心に結論を導いた ために、非正規職の解雇費用が非常に誇張されていると指摘した。非正規職の 解雇費用の導出方式も『不思議な結論先行型』と評価した。

キム教授は「無理に正規職と非正規職の生産性格差を導入し、雇用形態差別と 区別できない生産性格差を仮定して、非正規職と正規職の解雇費用を無理に設 定しており、実質失業率により意図した結果にしている」と批判した。

民主労総政策研究院のイ・サンホ研究委員は、報告書の論理が『労働費用上昇- 雇用調整費用上昇-企業費用競争力弱化-労働需要弱化』という判で押したような 論理に従っているとし、資本のパラダイム変化を要求した。

イ・サンホ委員は「企業競争力への影響要因における人件費(総費用の10%以下)の 割合はとても低いという点を考慮すれば、今、韓国の企業もこれ以上労働費用 などのせいにせず、『質的』な競争力の要因に注目しなければならない」と注文 した。『工程賃金支給-熟練と技術人材採用-高生産性と高付加価値達城-企業 競争力強化-労働需要(良質の雇用)増加』という『高進路戦略』にパラダイムを 転換すべきだという説明だ。

「正規職化は内需増大および社会的な純益を発生させる」

また労働界は非正規職の正規職転換が肯定的な社会経済的な効果をあげると 見通した。

キム・ソンヒ教授は非正規職正規職転換の予想効果として内需増大および付加 価値の増加を選んだ。また非正規職労働者だけでなく、正規職労働者を含む 労働者全般の生産性増大が起きると主張した。

キム教授は「政府の差別解消基準により非正規職の処遇を改善する場合、15.9 兆ウォンの消費増大と12.6兆ウォンの付加価値増加効果がある」と説明した。 また経済人総連の予想通りに正規職対応非正規職賃金割合を85%に調整し、付加 給付の恩恵率を正規職水準に上げると16.5兆ウォンの消費増大と13.1兆ウォン の付加価値増加効果があると主張した。

また「労働生産性が2%以上に上昇すれば、費用負担を差し引いても政府の案と 経済人総連の予想のどちらでも6兆ウォン以上の社会的純益が発生する」と分析 した。非正規職の差別改善と正規職転換による生産性向上の十分な誘引として 作用し、これにより発生する生産性の向上のうち1%だけでも社会的純益が創出 されるというわけだ。

また低賃金と雇用不安定に苦しむ非正規職労働者を量産する『労働による貧困 からの脱出』政策がすでに失敗したので、今の内需不振と景気低迷長期持続の 核心的な原因である低所得層の貧困化の解決策に脱出口を探せという指摘も続 いた。キム教授は「社会的純益を持たらす正規職化と差別改善方向の労働市場 政策への一大転換が出発点になる」と主張した。

民主統合党ウン・スミ議員室のキム・チョルヒ補佐官も「最近、国会の中では 所得未満減税者への過度な探索が問題になっており、非正規職の正規職化によ り国家財政を拡充しようという話が出ている」とし「労働者が減税負担を背負 い、国家と社会に堂々と要求できるようにし、福祉政策が丈夫な基盤で運営さ れることが必要だ」と説明した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-07-24 03:59:24 / Last modified on 2012-07-24 03:59:27 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について