本文の先頭へ
韓国:4〜50代女性労働者への「勝利」が「栄光」なのか?
Home 検索

4〜50代女性労働者への「勝利」が「栄光」なのか?

[寄稿]パク・ノジャが鄭夢準議員に送る抗議書簡

パク・ノジャ(オスロ大)/ 2007年03月20日11時25分

鄭夢準議員様、こんにちは。

チョン議員様が理事長をしている蔚山科学大学で3月7日に起きた一連の事態を 見て、私だけでなく国内外の多くの人々が驚きに耐えません。

パク・ノジャ教授

チョン議員様が象徴する現代の製品は-自動車から船舶まで- 私が住むノルウェー をはじめとするヨーロッパ各国、世界各国で広く愛用されており、私が勤める オスロ大学だけでも現代の自動車に乗る教職員と学生は少なくありません。

ところが彼らがもしチョン議員様が理事長をしている蔚山科学大学で非正規職 の中年・老年女性が5〜7年の誠実な勤務に対する「補償(?)」として解雇され、 それでも足りずに人間の尊厳を踏みにじる待遇にあい、裸で外に引きずり出さ れたことを知ったら、果たしてチョン議員様が象徴する現代の製品を楽しい気 分で利用できるでしょうか?

世界の消息に明るいチョン議員様もよくご存知と思いますが、労組に対する不 許可方針あるいは弾圧などで汚名を得たウォルマート(Walmart)やマクドナル ド(McDonalds)等の企業が、多くの国々で消費者、市民からボイコットされ、 その上「不道徳な資本」「悪徳企業」の象徴的な存在としての烙印を押されて いるのです。

チョン議員様は、商店の陳列台で現代の製品を見る世界の人々の頭に、裸で抵 抗する50代の女性労働者の絶叫が空を刺すようすがすぐ浮び上がる状況が現実 になることを望んでいらっしゃいますか?

チョン議員様は、小利のため大利を失うという言葉をよくご存知でしょう。今 70万ウォンもならない何人かの非正規職の月給とは、価値を比較できないほど 大きなものを失っていることがなぜわからないのですか?

恐らくチョン議員様は、今回の事態が現代傘下の企業ではなく、学校で起きた ことで、自分も現代財閥も責任はないと答えられるかもしれません。ところが チョン議員様が理事長として責任を負っている学校で起きたことは、さらに驚 き、また信じられないことです。

「学生が、力の強い人に立ち向かえなくても、弱い人を踏みにじってもかまわないという、真理ではない真理を学び、身につけることを望んでいるのですか?」

授業だけでなく、キャンパスで起きるすべてのことが学生にとっては「教え」 になり、社会の新人としての「経験」になります。果たしてお母さんのような 女性が裸で地下から引きずり出して、学生に何を教えるつもりですしょうか? 学生が学校時代にこの社会では正義は遠く、拳は近く、強い人に立ち向かえな くても弱い人を踏みにじってもいいという真理ではない「真理」を学んで身に つけることを今望んでいるのですか?

蔚山労働ニュース

学生の中で、少数であっても今回のことを契機として弱者に共感する心を育て、 暴力の前から退かずに疎外された者とともにすることを学ぶことを心より願っ ていますが、もしこの事件が学生に暴力の万能を教え、学生たちが「力こそ正 義」と信じるようになったとすれば、これははなはだ嘆かわしいことです。

力だけが崇拝される社会は、平和で調和せず、いつも詐欺、犯罪、背任、不誠 実の温床になるものです。いや、チョン議員様が、議員様の子供達が、ホッブ スが語った「すべてとすべての戦い」が一日ごとに現実になることを望んでい るのですか?

それを望まないのなら、講義室で弱い労働者を暴力ではなく理性と法、そして 和解の心で対し、「労組加入」が勤労者の基本人権になるということを忘れな いで下さい。

何人かの蔚山科学大学の学生が、暴力にあった女性労働者に「授業を妨害して いる」と抗議したという知らせを何日か前に聞いた時は、私は教育者として激 しい虚脱感を感じました。

10代後半〜20代序盤にすでにこの程度に人間本来の惻隠之心を失い、死刑宣告 のような解雇通知を受け、絶望的に最後の残った力で抵抗しても、これを自分 への「妨害」としか考えられないほど利己心に染まっているなら、果たして大 きくなって名実共に社会人になってから、どんな人間になるのでしょうか? チョン議員様が「私」だけを知り「他人」を知らない人々が未来の大韓民国の 「主流」として君臨することを幸せな未来と思うのですか?

チョン議員様、一つを肝に銘じて下さい。

国内外の労働者、市民の多くは、裸で引きずり出された年を取った女性の絶叫 を傍観し、やり過ごすほど人間の心を持たない人々ではありません。これは隣 人への愛や自尊心の問題でもありますが、一方では共同利害関係に対する認識 の問題です。

「40〜50代の女性労働者への『勝利』が『栄光』だと思いますか?労働者、市民社会の審判、そして歴史の審判に目を開いて下さることを切実に願います」

今日この年を取った女性たちが非正規職になり、こうして犠牲になり、明日は 同じ労働者の私もいくらでもその次の犠牲者になることができるためです。そ れゆえ、今回の蔚山科学大学の非正規職女性労働者の座り込みを多くの人々が 熱心に見守り賛同して連帯して、座り込みをしている労働者の要求が貫徹され るまで、チョン議員様を非難する声も静まらないでしょう。

果たしてチョン議員様は市民の記憶の中で、さらに歴史の本で「加害者」とし て残りたいですか? 40〜50代の女性労働者への「勝利(?)」が栄光だと思いま すか?

ぜひ労働者、市民社会の審判、そして歴史の審判に目を開いて下さることを切 実に望みます。

私たちすべてがそうですが、チョン議員様もいつかこの世を去り、あの世にい きます。この世を去る瞬間、人は自分の人生のすべての大小の事件を映画のよ うに、また思い出すといいますが、現世を去る瞬間にチョン議員様の耳に今、 蔚山科学大学で苦しむ女性の方のうめきが聞こえないという保障がありますか?

他人に悪ではなく善を行う者だけが平和に暮らし、平和に死ぬのです。ぜひ、 何か決定をする前に、人間は結局自ら行ったことが、現世でも冥土でもその報 いを受けるのだということを忘れないよう希望してやみません。

ノルウェー、オスロ大人文大学東方言語および文化研究学科(韓国学)教授パク・ノジャ(Vladimir Tikhonov)拝

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンス:営利利用不可・改変許容仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2007-05-29 05:01:17 / Last modified on 2007-05-29 05:01:18 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について