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韓国:ウリ銀行正規職化合意への憂慮
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ウリ銀行正規職化合意への憂慮

分離職群制の固定化と差別是正不可など、 半分はよくなるか?

イ・コンマム記者 iliberty@jinbo.net / 2006年12月22日19時09分

ウリ銀行労使、3100人を正規職化

ウリ銀行労使は20日、正規職の賃金凍結を前提とし、直接雇用の非正規職 3100人を来年3月から正規職化することに合意した。これが今後、非正規職 労働者にどんな影響を与えるのかが注目されている。

現在、ウリ銀行の非正規職労働者は1万1千人に達する。このうちおよそ30% が正規職化される。ほとんどが女性労働者で、窓口業務を担当するMass Marketing職群、事務支援職群、コールセンター業務を担当するCustomer Satisfaction(顧客満足)職群で働く労働者だ。

ウリ銀行労使は20日、共同記者会見でこのような合意事項を発表し、2月末 まで実務協議を行った後、来年3月1日から合意事項を履行する予定だ。

今回のウリ銀行の労使合意について、関係者は非正規職の雇用安定を図る試 みだという点では肯定的に評価しているが、金融界に導入されている分離職 群制を固定する恐れがあり、差別是正効果も小さいという否定的な評価もある。

非正規法案を避けるために職群を分離して正規職化、賃金格差はそのままで差別是正は不可能

まず特定の業務を分離して職群にすることは、非正規法案通過以後の差別 是正措置と2年後の正規職化の負担を避けるためだという。

ウリ銀行労使の合意で完成された分離職群制は、すでに2005年から提起され ていた。ひとまずウリ銀行をはじめとする金融圏が、分離職群制を主張する のは、期間制法の「2年まで自由な雇用、2年後の無期契約転換条項」と、 「差別禁止条項」に対応するために用意された。これは公共機関である鉄道 公社がKTX女性乗務員を全員外注化したのに続いてセマウル号乗務員も全員 を外注化し、公社に所属するすべての非正規職労働者を外注化する試みと同 じ脈絡だ。

9月13日に段炳浩議員室が開いた討論会で、韓国非正規労働センターのキム・ ソンヒ所長は「外形的に非正規職の業務が正規職と区別が難しい場合、作業 場の分離と業務分離が可能なら、外注化で差別禁止条項と期間制限の両方の 適用を避けようとするだろう」と指摘した。

全国金融産業労組非正規職支部のクォン・ヘヨン委員長は「雇用安定を達成 したという点では肯定的だが、賃金格差をはじめとする差別を是正するあら ゆる通路が封鎖された」と指摘した。今回の正規職化の合意で、これにより 形成される職群と、他の正規職との間の賃金格差、昇進の問題などを克服す ることができないという限界を持っていることは、ウリ銀行労組も認めてい る。正規職に転換される契約職労働者は現正規職労働者の30〜40%しか賃金 が支払われない。

全国事務金融連盟のチョン・ヨンゴン委員長もこれについて「とても画期的 なことだと言われるが、職群で正規職に転換することは、事実上、同一労働 同一価値の適用がまったく不可能になる」と指摘した。

雇用は安定するか?

二番目に、雇用も完全な保障ではないということだ。

ウリ銀行労使が合意文を公開していないため未確認だが、合意草案には解雇 のために業務非適合警告3年なら解雇、2年以上C、D等級を受ければ解雇など の内容が含まれていたことが分かった。

クォン・ヘヨン委員長は「実際、成果給も維持され続け、成果により解雇の 問題を抱いて行く状況であり、完全な雇用保障とは言いにくい」と説明した。 チョン・ヨンゴン委員長は「等級を分けて、必要な部分は希望退職を要求し 続けるだろう。契約職には名誉退職金がなかったが名誉退職金をちょっと出 して自由に解雇できる部分はそのまま残っている」と指摘した。

非正規職問題が正規職の譲歩で解決できるか

三つ目は「正規職の譲歩で非正規職の処遇を改善した」という部分の問題だ。 これは、非正規職の問題を事業主と政府の問題ではなく「正規職がとても多 いために生じる問題だ」という資本の論理をそのまま持ち続けることである ためだ。

非正規職の問題は、資本が利益を創出するためのコスト削減で、もっと賃金 が安い労働者を探すことから始まり、労働者への雇用保障問題や福祉問題の 責任を負わないようにするために非正規職労働者を使おうとする部分にある。 これが資本の労働柔軟化戦略だ。これにより、資本は労働者を一度使ったら 捨てる使い捨て紙コップに転落させているのだ。

これに対してクォン・ヘヨン委員長は「当然、非正規職を量産するのは資本 と社会の問題であり、正規職の責任ではない」とし「もちろん共に生きてい くために、互いに少しずつ譲歩することも必要だが、賃金の問題は当然使用 者が担う役割だ」と伝えた。

チョン・ヨンゴン委員長も「正規職の譲歩より優先されるべきことは、企業 があげた利益を労働者に戻すことで、政府はこれを支援しなければならない」 とし「だが実際には企業は自分たちがあげる利益を労働者に戻さず、正規職 労働者のせいにするのは問題がある。したがって正規職の譲歩で非正規職の 問題を解決しろというイデオロギーを作ることは誤りだ」と明らかにした。

結局、今回のウリ銀行労使の非正規職正規職転換合意は雇用安定という成果 を持たらしたが、今後、さらに大きな問題がブーメランのように戻ってくる 可能性を残した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンス:営利利用不可・改変許容仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2006-12-27 02:10:43 / Last modified on 2006-12-27 02:10:43 Copyright: Default

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