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熱い気持で振り返り、冷たい理性でみるべきニューコア合意書

[寄稿]チモンミ、ニューコア労組

オ・ドヨプ(作家)/ 2008年09月08日0時47分

8月は恐ろしかった。キリュン電子労働者の戦いが千日と百日過ぎて、キム・ソ ヨン分会長はとても記録することも恐ろしいほどの時間を断食で抵抗している。 セマウルとKTX乗務労働者がソウル駅の40メートル鉄塔で高空籠城に入り、釜山 でもハンストを始めた。江原道ムンマクのトルコ非正規労働者も正門前に鉄塔 をたてて首が抜けるばかりに工場の中を覗いている。忠清道オチャンのハイテ クCRTコリア労働者も工場にテントを張った。長ければ三千日以上道路で戦う労 働者たちだ。

生計を失った労働者にとって一日とは命がけの時間だ。彼ら労働者を街頭に追 い出した事業主は、法院で不当解雇と不法派遣と判定された。法は労働者の手 をあげたが事業主たちはまだ工場を運営し、株式と不動産投機で利益をあげて いる。だが法で復職判決を受けた労働者は工場の前で野宿をしなければならな い悲劇の時間が流れている。8月の蒸暑さより恐ろしい残忍な現実の前で、怒り まで燃え上がり、胸の中が白い灰の粉になった。

簡単にニューコア合意を言う報道機関と人が悲しい

恐ろしい八月の最後の日をさらに悲しくさせたのは、ニューコア労働者たちの 交渉妥結の知らせだ。400日を越えるニューコア労働者の闘争が終わったという ことを喜べない協議案を見て、砕けそうなほど奥歯を噛みしめなければならな かった。これは、事業主が400日以上戦ってきたニューコア労働者の最後の息の 根を止める内容だった。労働組合と労働者を交渉の対象どころか人として見も しないんだと考えるほかはなかった。これは資本主義社会の労働者と事業主の 関係ではなく奴隷制社会で主が奴隷に加えるムチほどに苛酷だった。

ニューコア労働者に暖かい茶一杯を送りたかった。あなた方がこうした事業主 と400日以上戦うことがいかに大変で、偉大な行動だったか、熱い胸で抱いてあ げたかった。あなた方の胸にできた奴隷主義のムチに打たれた深い傷跡をさわっ てあげたかった。

新聞とインターネット言論を見て怒りがわく。保守言論は戦う労働者の愚かさ をののしり、進歩言論はそうした協議案に印を押した残念さと共に『白旗投降』 だの『屈服』だのと突きつけ、またニューコア労働者にムチを打ち下ろしてい るのではないか。ある進歩インターネット言論ではインタビュー元を明らかに しないまま引用符をつけ「ニューコア労組幹部が自分個人を守るために労組を 売り払った」という話をためらいなく記事に送りだした。同じ記事にニューコ ア労組の上級団体であるサービス連盟委員長の声として「イーランド一般労組 のストライキにも莫大な影響を及ぼす」という、それも『莫大な影響』という 記事を書いた。

昨年夏、ニューコアの正規職労働者は非正規職の戦いのために、外注化阻止の ために、正規職の既得権をみな捨てて戦った、それも434日をすさまじく戦った という大切な痕跡はみな消し去ろうとしている。上級団体は、他の事業場に 『莫大な影響』と話す前に、その戦いを守ることも出来なかった反省が先立つ べきではないだろうか。『個人のものを守るために労組を売り払った』という コメントを取るのではなく、ニューコア労働者が戦っているのに上級団体が手 を引いた情況をまず扱って指摘するのが正しくないか。労使合意文の道徳的な 限界を指摘する部分で、『個人の損害賠償と仮差押さえだけを解決して、労組 と連帯組織の損害賠償は知らんふりをした』という指摘がある。労働者たちの 被害を防ぐためにサービス連盟も民主労総も作られたのだ。当然、上級団体が その問題について戦わなければならず、解決しなければならない問題であって、 ニューコア労働者を評価する道徳の定規ではない。

言いたい。ニューコア労組の正規職労働者ほどに、他の正規職労働者と上級団 体が戦っていたなら、いやその半分でも戦っていたなら、少なくともキリュン 電子のキム・ソヨン分会長が80日を越える断食をすることは韓国でなかっただ ろう。

前の金曜日、キリュン電子の断食場に行くと、今断食を中断すればトルコ労働 者の戦いにも影響が及ぶので、どうして止められるかという話を聞いた。ある 記事では「ニューコア労使の合意は彼らだけの問題で終わらないというところ にある。まさにニューコア労組とともにストライキを始めた同じイーランドグ ループの流通業社、ホームエバーの非正規職問題も直撃弾を受けるようになっ た」と書いた。

果たしてホームエバー労働者はどうか? 旧盆対応集中闘争をするホームエバー 上岩店を訪ねた。イーランド労働者の顔を見た。表面は違わなかった。いや、 さらに余裕がある姿だ。イーランド一般労組のイ・ナムシン首席副委員長は、 直撃弾を受ける心配よりニューコア幹部がこの苦しい時間をどう勝ち抜くのか を悩み、一日も早く会って一緒に解決したいという仲間の愛情が含まれた心配 をした。交渉でもちろん影響があるだろうが、イーランド資本がどれほどあく らつかを見せたので、戦いの正当性と道徳的優位を獲得でき、憂慮するだけで はなかった。

そうだ。会社と合意した内容のために胸が痛かったのではない。あまりに簡単 に合意内容を語り、断罪する報道機関と人たちに胸が痛かった。労働組合の降 伏文書だったという表現で、他の長期闘争事業場に及ぼす波及効果を突きつけ ながら批判したり残念がった。その気持は理解しながらも腹が立った。ニュー コア労働者の434日がそっくり目に映ったためだ。一日を戦ったのか、百日を戦っ たのか、千日を戦ったのか、数字で計算することほど佗びしいことはない。こ の長い日々がどうして労働者が戦った日なのだろうか。事業主が戦わせた日で あった。労働者に、それも非正規労働者には、ただ一日働かないだけでも命を 差し出すことと同じだ。労働者が戦わずに得ることができるものはない。それ も、頑強に、しつこく戦ってこそ得ることができる。それでこそ賃金の奴隷で ない人になれる。分かりながらも、労働者にこの時間は死よりつらい時間なの で、簡単には話せない。

朱肉ではなく自分の血で捺印したニューコア合意書

ニューコア労働者の400日を越える抵抗を振り返る。その抵抗の瞬間瞬間を、 ニューコア労働者の気持になってながめる。この時間を『熱い胸』で見た後に 今回選択するほかはなかった合意書を『冷たい理性』で見れば良い。その合意 書に朱肉ではなく自身の血で捺印せざるをえなかった労働者の血走った目を見 れば良い。

ニューコア労働者の闘争は、多くの希望を与えた。非正規悪法施行を控えて始 まったニューコア労働者のストライキは、見えないさまざまなところで非正規 労働者の職場を守ってくれたということも知ってほしい。昨年6月、ストライキ を選択した時に駆け付けたように、今回の合意書の選択にも愛で訪ね、ニュー コア労働者に会えば良い。その次に批判もして、評価もして、非難もすれば良 い(ただしニューコア労働者に時間を与えた後で会って話そう)。どうせ労働者 は、命をかけた限りない選択を強要されなければならないのだから。これから も、この1年よりさらに難しい選択をニューコア労働者はし続けなければなら ないのだから。

今は当分、ニューコア労組から送られる携帯メールがないということもわかる。 今、携帯メールを受けるのではなく送る時ではないかと考える。『守ってやれ ずにごめんなさい』。あなたの家と積金通帳が損害賠償で仮差押さえされた瞬 間、家庭が破壊されようとしていた瞬間、生計に苦しんでいた瞬間、『守って やれずにごめんなさい』と。

ようやくニューコア組合員とインタビューができた。口があっても話す言葉が ないと言う。彼はすでに8月初めに支部組合員と現場に復帰したのに、何が言え るかと言葉を慎んだ。18人の解雇者問題はとてもつらく、一生心に抱いて暮す ことになりそうだと話した。もちろん外注化の部分も残念だが、非正規職労働 者がまた働けるようになったことは、これからどうなろうと最後まで幹部らが 非正規労働者の悩みを放さないことではないかと話した。ニューコア正規職労 働者たちは、それこそ何も得ることはなかった。だが、ニューコア労働者の 434日の闘争は、あまりにも大切で美しい戦いとして残るだろう。

戦いは勝つこともあり、負けることもある。妥協もあり屈服もある。労働者の 戦いはその結果は別として、その過程がとても貴重だ。その貴重さを自ら否定 する必要はない。パク・ヤンス委員長と共に酒一杯飲む日を待つ。待つ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-09-11 10:22:44 / Last modified on 2008-09-11 10:22:44 Copyright: Default

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