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貧しい人には死刑宣告…年金公団の勤労能力評価を「糾弾」

勤労能力評価・障害等級審査の結果、受給権剥奪の威嚇高まる

ハ・グムチョル記者 2015.08.07 11:09

国民基礎生活保障法(以下、基礎法)には、生計給付を受ける対象でも勤労能力があれば、 働くことを条件に給付を受ける「条件付き受給」の条項が存在する。 「仕事を通じた脱貧困と自活」を促進するためだ。 しかし最近、この制度が体調が悪く働けない人々にまで『勤労能力あり』と判定し、 事実上、強制労働に追いやっているという批判が高まっている。 障害・貧民団体はこの問題の核心的な原因は、 国民年金公団が実施している不合理な勤労能力評価にあると指摘する。

貧困問題解決のための民生保委(以下、民生保委)、 障害等級制・扶養義務制廃止共同行動など障害・貧民団体は8月6日、 ソウル市広津区の国民年金公団の前で記者会見を行って、 不合理な勤労能力評価制度の改善を要求した。

▲不合理な勤労能力評価制度改善を要求する参加者.

現在の勤労能力評価制度の問題が最も克明にあらわれたのは1年前、 条件付き受給者だった故チェ・インギ氏の死亡事件が起きてからだ。 座席バス運転手として働いていたチェ氏は、 2005年に胸部大動脈類診断を受け、二回にわたり大動脈を人工血管で置き換える手術を受けた。 手術後に経済事情が難しくなり、2008年から基礎生活受給を受けるようになった。

彼は長く歩くこともできず、少し階段を登っても息が切れるほど健康状態が悪く、 10年近く働けなかった。 基礎生活受給が唯一の所得だった。 しかし彼は2010年、勤労能力評価事業が国民年金公団に委託された後、 勤労能力評価を受けろという通知を何度も受けた。 水原市勧善区庁と住民センターは、6か月ごとに勤労能力評価用診断書を持ってくるように要求した。 その結果、2014年1月、チェ氏は結局「勤労能力あり」と判定を受けた。 一般受給者から「条件付き受給者」になったのだ。

結局彼は昨年2月からアパート地下駐車場の清掃をするようになった。 だが仕事をするようになると、彼の健康は急激に悪化した。 結局昨年5月、働いていた時にチェ氏は突然倒れ、集中治療室に運ばれた。 移植を受けた血管周辺で感染が広がり、もう手が付けられない状態になって、 彼は結局2014年8月28日に死亡してしまった。

しかし当時、勧善区庁はチェ氏が生死の境をさまよっている状況でも、 彼の妻のクァク・ヘスク氏に電話して「なぜ働かないのか」と促した。 公務員たちの話に憤慨したクァク氏が 「病院に直接きてみなさい」問い詰め、その時になって勧善区庁はチェ氏を一般受給者に転換した。 だが彼の死を防ぐにはすでに手遅れだった。

夫の死の後、クァク氏は夫に「勤労能力あり」の判定がなぜ出たのかを調べるために、 昨年9月、国民年金公団に情報公開請求をしたが、公団はこれさえ拒否した。 記者会見で当時の状況を説明したクァク氏は 「もうすぐ夫の1周忌だ。 だが今までなぜこんなことになったのか、誰も明快に説明しなかった。 すべて『私の責任ではない』、『私は知らない』と話すだけだった」と憤激を放った。

▲ある参加者が病気の受給者にも働くことだけを強要する国民年金公団を批判するプラカードを持っている。

この日の記者会見に集まった団体は、こうしたことは単に故チェ・インギ氏だけのことではないと指摘した。 特に勤労能力評価をさらに合理的かつ客観的に行うという名目で、 この業務を国民年金公団に移管した2010年以後の状況はますます深刻になっている。 年金公団に業務が移管される前には5%台に過ぎなかった「勤労能力あり」の判定割合は、 2014年には14.2%と3倍近くに急増した。 また、勤労能力評価に直接影響を及ぼす障害等級審査の場合も、 2009年に「等級外」の判定は2.5%に過ぎなかったが、 年金公団が判定業務を始めた2011年と2014年にはそれぞれ17.3%と16.9%に急増した。 障害1〜4級の判定を受ければ「勤労能力なし」と認められて一般受給者になるが、 その他には必ず勤労能力評価を受けなければならない。

公益人権法財団共感のパク・ヨンア弁護士は 「国民年金公団の中で誰が、どのように審査したのか、 具体的な内容は全く分からず、情報公開もできないことが問題」とし 「再審申請の制度があるが、初めに『勤労能力あり』の判定がどうして出てきたのか、 何の情報も与えない状況では、 当事者は反論を展開する方法を見つけることができない」と明らかにした。

パク弁護士は今の制度が自活事業の当初の趣旨からも外れると指摘した。 彼は「基礎法に勤労能力がある受給者は自活事業参加を条件として生計給与を実施し、 この時に自活支援計画をたてることになっている」とし 「しかし今施行されている勤労貧困層就職優先支援事業は、 『勤労能力あり』の判定を受ければ無条件に仕事をするようにさせ、 後で就職が難しくなればその時が自活支援計画を樹立するという調子」と批判した。

人道主義実践のための医師協議会のキム・デヒ事務局長は 「年金公団は受給者の診断書、医務記録だけを見て障害等級と勤労能力の有無を判断する」とし 「しかし医務記録には以前の患者の長期間の状態変化については詳しい内容が含まれていない。 これだけで勤労能力の有無を判断するのは全く合理的ではない」と指摘した。

この日の記者会見では最近、勤労能力評価により、 受給脱落の危機に置かれた人々が直接出てきて困難を吐露した。

身体障害5級のチャン・スノ氏は、 2012年から基礎生活受給者として給付を受けてきた。 彼は腰が悪く、糖尿の合併症などがあって働くのが難しい状況だったが、 公団は引続き「仕事をしろ」と要求した。 自活事業や就職をしなければ「条件不履行」により受給権を剥奪されるので、 苦しくても我慢して働くしかない状況に追いやられているのだ。

数年間、野宿生活をしてきたチュ・ヨンボク氏は、 ホームレス行動の支援で今年の初めから受給者になった。 長い間、塩田、海苔養殖場、海老漁船などでつらい仕事をしたが、 正当な代価を受け取れず、学校に通ったこともなく、読み書きもできない状況だった。 だが彼は働かなければ受給を受けられない「条件付き受給者」だった。 社会福祉専門担当公務員の勧誘で、知的障害検査を受けて障害等級を申請したが、 年金公団は「知的潜在力が境界線水準まで可能と判断される」とし 「等級外」判定をした。 自活相談をした公務員も就職が難しいと思うと述べたが、 年金公団はこうした情況をすべて無視して彼を職場に追いやったのだ。

▲パク・サラ ホームレス行動活動家(左)が勤労能力評価被害者チュ・ヨンボク氏(右)の事例を説明している。

民生保委は「非障害者の身体を基準で損失を測定する反人権的な障害等級制と、 基礎生活受給者に強制労働を勧め受給権剥奪の威嚇を加える勤労能力評価は、 根本的に廃止されるべきだ」とし 「まず年金公団は、死亡者と被害者の前で丁重に謝罪し、 再発防止対策を樹立しろ」と要求した。

彼らは記者会見の後、年金公団の関係者との面談でこのような内容を伝えた。 公団側は8月13日までにこれに対する回答を出すことにした。

▲勤労能力評価と障害等級審査により死んだ人々を追慕する参加者.

付記
ハ・グムチョル記者はビーマイナーの記者です。この記事はビーマイナーにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-08-08 17:50:19 / Last modified on 2015-08-08 17:50:21 Copyright: Default

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