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われわれは会社が望む時間に合わせて暮らすことはできない

[企画連載]すべての労働に捧げます(1)

オム・ジンニョン(全国不安定労働撤廃連帯常任執行委員) 2019.03.05 11:00

〈すべての労働に捧げます〉連載を始めるにあたって

非正規職が増えるにつれ、労働者の権利はますます剥奪された。 ところで労働者たちが正規職になれば幸福になるのだろうか? 今は正規職労働者も雇用不安に苦しみ、未来の希望を失っている。 少しでもさらに稼ぐためには長時間労働も拒まず、 差別と階層化に馴染み、非正規職を蔑視したりもする。 時には非正規職を雇用の安全弁にしようとする。 非正規職という雇用形態が労働者の権利を傷つけているが、 非正規職運動の目標は単に雇用形態を正規職に変えるだけではなく、 「すべての労働者の権利を保障」することでなければならない。 非正規職ない世の中作りネットワークと全国不安定労働撤廃連帯は、 労働者にとってどんな権利が保障されなければならないのか、 非正規職の目で見て共に討論しながら「非正規職社会憲章」18条項を作った。 その内容は「すべての労働に捧げます(五月の春出版社)」という単行本で発行された。 そのうち4つの条項について読者と共に話したい。

[出処:全国不安定労働撤廃連帯]

非正規職ない世の中のための社会憲章

7条 労働時間に対する権利がなければならない。

9条 健康を威嚇する長時間労働はもうやめなければならない。

最近、経済社会労働委員会(以下経社労委)で、 労使政が弾力的勤労時間制拡大に合意した。 この合意は法案にされて、国会が開会すると処理されることが予想されている。 1週40時間、1日8時間という法に定められた労働時間は、 もはや労働時間制限の基準としての役割を果たすのが難しくなった。 労働時間の境界はなくなり、 労働者は企業が望む時間に自分のからだと生活を合わせなければならない状況を目前にしている。

弾力的勤労時間制の拡大の最初の問題点は、 労働時間が長時間化されることだ。 法が定める基準があるが、 弾力的勤労時間制の適用に合意をすれば、 この労働時間の基準はなくなり、 制度が適用されて長時間の労働が可能になる。 その時間は2018年の改正法が適用され、 週52時間限度の労働時間が適用される公共部門と300人以上の大企業では 最長64時間まで可能になり、 まだ改正法が適用されていない事業場では80時間まで延ばせる。 労働者の健康に深刻な影響を与えるしかない。 またその反対に、労働時間が極度に減るかもしれない。 そのように増えたり減る時間を平均して、法定勤労時間の限度に合わせれば、 延長労働に対する追加的手当てを支払わなくても良い。 労働者は制度適用以前と平均して同じ時間を働いても、 さらに低い賃金を受け入れなければならない。 これまでの3か月単位の弾力的勤労時間制でも 労働者の長時間化と不安定性が問題なのに、 これを6か月単位に延ばせば問題はさらに深刻になるほかはない。

二つ目の問題は、これにより発生する生活の不安定だ。 今回の経社労委の合意は弾力的勤労時間制の期間を3か月から最長6か月に延ばしただけではなく、 細部の内容も改悪した。 前は毎日の労働時間を事前に決めていたが、 経社労委の合意案ではこれを週単位で決めれば良いとしている。 特定の週に何時間働くかは事前に決まるが、 具体的な労働時間は2週間前までに決めれば良いようになっていて、 労働者はそれまで自分の正確な労働時間を知るのは難しい。 つまり、労働する時間が不確かになり、その反対の生活時間も不安定になる。 余暇、休息だけでなく、個人的な仕事のために計画しなければならない労働者の生活は保障されない。

最大の問題は、このように不安定になる労働時間を統制する権利が労働者からさらに遠ざかることだ。 弾力的勤労時間制の適用において必要な手続きである「労使合意」は、 労働者が自ら労働時間を防御する最低限の措置だが、 経社労委の合意案ではこの合意の内容そのものを緩和させてしまった上に、 労働時間の決定が集団的に統制されるのではなく、 使用者の権限で付与される。 労働者の労働時間は少なくとも2週間前に決まるが、 これは使用者が決めてから通知することになっていて、 労働者が拒否する権利には言及していない。 その上、事前に決めた週労働時間も業務量が突然増えたりするなどの理由で変更されるかもしれず、 それによって労働者の毎日の労働時間はまた変わる。 この時にも使用者に通知すればそれだけで、労働者に労働時間を決める権利はない。

元に戻して、労働時間について、勤労基準法は勤労時間の基準を決め、 1週間の延長勤労時間の限度を12時間と定めており、 この延長勤労は労働者が同意する場合にのみ可能だ。 また勤労基準法が定める他の休息に関する条項である年次有給休暇は、 労働者にその時期を指定する権限があり、 使用者は必要な場合、その時期を変更することはできるが基本的に労働者の権限になっている部分だ。 すなわち、労働時間と休息において、労働者が自分の労働を統制する最低の力として付与されている部分である。 ところで弾力的勤労時間制の拡大は、こうした労働者の統制権を剥奪する。 延長勤労は弾力的勤労時間制に合意することで強制残業に変化して、 年次休暇の期間もまた実質的にユーザーの望む期間に配置されるほかはなくなる。 労働者は企業の必要によって、使用者の要求によって活用される部品に過ぎなくなったのだ。

全国不安定労働撤廃連帯は昨年「すべての労働に捧げます」という単行本を発行して 「非正規職ない世の中のための社会憲章」として労働時間に対する2種類の目録を入れた。 そのうち「人だから会社が望む時間に合わせて生きることはできない」という文句は 「労働者は機械ではない」というフィラデルフィア宣言の最初の文句と同じだ。 労働者は人なので、労働だけに追いやられるのではなく、 適切な休息と余暇を楽しむ権利があり、 そうした生活の豊かさを追求する権利がある存在だ。 弾力的勤労時間制拡大の議論は相変らず韓国社会において、 労働者は人権を持つ存在として思考されていないということを示す断面だ。 労働者の時間は考慮されず、企業の時間だけが残る。 結局、長時間労働につながり、労働者の生命を害するほかはない。

労働時間の長さと配置に対する労働者の選択と決定が否定されれば、 労働者は結局社会と分離するほかはない。 夜間労働をすれば昼には眠るので家族の顔を見るのが難しいという話、 夫婦が二交代で働き、労働時間が互いに違うので、 時々共に時間を過ごすと落ち着かないという話は昔の話ではない。 今進められている労働時間改悪が現実化すれば、もう働く家族は互いにいつの顔をあわせるかも分からない 解体された生活を送ることになりかねないということだ。 不安定な労働時間は労働者の生活リズムを破壊し、 結局日常的な生活を維持することがますます難しくなる状況に追いやられるだろう。 家族と周辺と、また社会とともに生きていくことが難しい物事になれば、 労働者は果たしてこの社会の一員といえるだろうか。

労働者の時間がまさに企業の利益なので、企業は絶えず労働者の時間を統制し、 自らのものにしようとする。 そして今、今日のこの戦いではまるで資本が勝利しているように見える。 社会とともに生きていく人生を持つことが労働者にとってますます難しいことになりつつあり、 人間らしく暮らしたいと叫んできた労働者たちの声は、今また敬遠されている。 弾力的勤労時間制拡大改悪の試みからまた 「非正規職ない世の中のための社会憲章」の権利目録を思い出す理由だ。 「労働時間に対する権利がなければならない。 適正な休暇と休息時間を享受して、望む時間に働けるようにするべきだ。 人だから会社が望む時間に合わせて生きることはできない」、 「長時間労働はもうやめなければならない。 死を呼ぶ夜間労働と24時間労働、強制残業と特別勤務はなくさなければならない」。 まさに今、企業の強い要求で始まった強制残業が、 政府の政策により、労使政合意の外皮をかぶって私たちの人生を威嚇している。〈終〉

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-11 14:10:22 / Last modified on 2019-03-11 14:10:23 Copyright: Default

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