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セウォル号と人種主義

[ヤン・ギュホン コラム]多くの約束・公約が反故になるまで

ヤン・ギュホン(労働者歴史ハンネ代表) 2014.09.22 13:28

セウォル号惨事の発生からもう5か月が過ぎた。 遺族は子供と家族が死んでいく生々しい過程を現在も体験している。 痛みと絶望の連続だ。 国家の統制と調節と保護機能が失踪した中で、セウォル号特別法を要求する闘争は光化門と青瓦台近隣、そして国会で続いている。 国会は朴槿恵(パク・クネ)政権の補完勢力になって大統領の口だけを見る格好で、 野党圏も政党の存在価値が疑われる状況だ。 すべての政治的課題に民生が優先という大統領の主張が笑いを誘発する理由は、大統領が民生の本質を理解できないためで、民生の範疇から労働者、民衆は除外されているという事実だ。 「増税ない福祉」を主張した朴大統領の公約の実体的内容にも「金持ちは除外」であり、庶民には間接税方式の税金砲弾を浴びせて財政の不足分を満たそうとしている。 このように目に明白に見える本質的な問題をごまかそうとしていることが笑わせるということだ。

セウォル号惨事と進行の過程で、われわれは国家の役割と労働者・民衆にとって正しい「政治の像」が何かを見ることができる。 セウォル号に乗ったという理由で殺されたのに、国家の最高責任者と政界の無気力は度を越している。 保守政党はもちろん、進歩政治さえ無気力な雰囲気に包まれ、セウォル号闘争の尻を追いかけるだけの姿に転落した。 こうした苦しい状況で、主要な争点が議会の中に閉じ込められ、もがいている間、進歩政治も突破口を用意できずにはっきりしなくない世論だけを眺めている格好だ。 労働者闘争の成果から出発した進歩政治は、国会で壁に遮られれば路上に、労働現場に飛び込んで、大衆を組織して闘争戦線を用意しなければならない。 そうした運動方式で積極性が担保された時、進歩政治は大衆から信頼され、進歩の展望をひらけるのではないか。 限界に当たったセウォル号闘争を路上闘争により労働者大衆を組織して、階級政治を復元させてこそ進歩政治が生きていける。

光化門座込場にはセウォル号惨事で犠牲になったユミンのお父さん、キム・ヨンオ氏の命を賭けたハンストを契機として多くの人々が同調ハンストを続けている。 青瓦台のそばでは遺族が大統領面談を要求して1か月近く野宿座り込みをして朴槿恵(パク・クネ)政権を圧迫している。 しかし朴槿恵政権は真相究明に意志を示すどころか、一人も救出できなかった責任を他人のせいにして、真相調査を妨害しているようだ。 そればかりか、遺族に不純のレッテルを貼る姿を見て、恐ろしい維新政権の反逆の旗が目の前になびく。

セウォル号特別法制定を要求する署名が450万人を越え、500万人に近づいている。 歴史的に400万人を超える署名は一回もないと記憶する。 それでも朴大統領の支持率が50%を越えるという発表について実際の内容が知りたいことも事実だ。 朴槿恵政権が世論を主導し、操作するすべての監査機関と報道機関と国会までも支配し、 自由に統制する状況では、セウォル号の署名が1千万人をはるかに超えても支持率は変わらないだろう。

国家最高責任者の約束が有名無実になった時、その社会は混乱するという事実が歴史の真理だ。 朴大統領の多くの約束と公約がごみ場に舞う紙切れになり、セウォル号事件に関する約束も煩わしく散っている。 特別法について「セウォル号惨事の徹底した真相調査による正確な究明、責任者処罰、積弊打破、官僚ムラ清算を通した安全な大韓民国」を主張し、 遺族に「訪ねてくればいつでも会う」と約束した。 ところがセウォル号惨事の原因究明は放棄して、遺族を不純勢力と追い込んで、政治戦線を構築して遺族を政治的反対勢力と規定している。 いつでも会うという遺族が青瓦台近隣に1か月近く野宿をして面談を要請しているが、青瓦台に通じる道は警官と警護員が堅く防いで立っている。

社会的争点が解決せず、労働者民衆の要求らが政治的に反映されない時、われわれは光化門と市庁の前に集まって要求を貫徹させるために意志と決議を集めてきた。 このような集会に必ず現れて集会を妨害する集団は「オボイ連合」、「ガスボンベ ハルベ」たちだ。 彼らは子供が解雇されて雇用を失い、生存の崖で生活の希望を探すための苦闘にも耳を傾けるどころか、「アカは北朝鮮に言って抗議しろ」と嘲弄する。 彼らの頭脳の中には民生を話すこと自体がアカに見えるようだ。 ところがセウォル号遺族と市民がハンストを始め、座り込み反対勢力が拡大した。 初めは濃いサングラスをかけた「オンマ部隊奉仕団」が来て根拠のない文句で遺族の心を深く傷つけた。 続いて「暴食闘争」という奇怪な方式で遺族に皮肉と嘲弄を続ける「日刊ベスト保存所(イルベ)」が登場した。 イルベはこれまでオンラインに留まっていた限界から抜け出して、今はオフラインで現実政界に本格的に介入するものと読まれる。

セウォル号惨事以後のイルベの活動がオンラインからオフラインに移動した点が多くの示唆を投げているのは、これまでオンラインで主張されたワーディングが常識や慣習はもちろん、人間の思考から程遠い奇怪で想像に絶する発想だからだ。 強者と弱者の力学関係で自分の夢を実現させてくれる強者のモデルを見つければ、彼は崇拝の対象であり英雄だ。 イルベにとって社会的弱者はアカか、さもなくば別の人種に分類される。 特に彼らにとって全羅道は「チョルラディアン」で絶滅すべき海外の「エイ族」だ。 女は「キムチ女」で軽蔑の対象、合法的強姦の対象でしかなく、セウォル号も「呪いの土地の全羅道に行ったから呪われた」とする。 イルベにとって労働者や庶民は他の人種のように(自分たちの身分もこの範囲から抜け出さないのに)、人種主義的主張と「湖南抹殺」の主張で自分たちを結束させてきたイルベが、オフラインに出てきた理由は偶然ではないと思う。

イルベは愛国保守を自称し、へどが出るような人種主義的な態度を見せて100%米国主義でかたまった「KKK団」を連想させる。 「KKK団」の白人優越主義は、すべての人種がアメリカ化されなければならないという理念で提示され、彼らの主張は「溶鉱炉理論」だ。 多様な不純物が混ざった鉄類(金属)を溶かし、鋼鉄を作るように、世界各所の多様な人種と宗教、言語そしてそれぞれ異なる文化と風習を持つ人々が米国人として生まれ変わるべきだと主張したのがKKK団だ。 特に黒人、黄色人種が溶鉱炉に入って白人と同じにならなければならないという恐ろしい主張だ。 イルベの態度も湖南人と社会的弱者はもちろん、愛国保守に分類されない自由主義者、進歩主義者は「溶鉱炉理論」を押し付けようとする。 愛国保守主義者でなければ、なくすべき対象に区分するので、KKK団の溶鉱炉理論と違うところがない。

死んだ人がなぜ死んだのか、どのように死んだのか、悲劇の再発防止の努力は生きている人々の社会的道理だ。 ここには保守も進歩も左と右の論理も反論はない。 もし国家らしい国家に対する部分に関心を持ち、安全の対策を用意することを放棄したり反対するということは、政治ではなく破倫だ。 事案がこうなっても国民の生命と安全に対して左右の論理だとか、保守進歩の対立だとかというものは政治権力の工作だ。 ところがこうした工作が現在成果を上げている。 真実ではない現象を真実に操作していく過程がいかにとんでもない犯罪行為なのかを考えなければならない。 そしてイルベが人種主義的分類の定規で横行する姿は、自分が属する政治勢力の役に立つという理由で肩を持ったり黙認すること自体も歴史的犯罪になるだろう。

セヌリ党は所属国会議員がイルベを訪問する写真が撮られるほどだから、イルベと関係が深いと見る。 だが新政連はその政治的支持の中心を湖南有権者とその地域の出身者に置いているのに、湖南に対する人種主義的嫌悪と差別発言を続けるイルベの凶悪に対し、何の公式発言もないという事実は驚くほどだ。 新政連はその前身の民主党の時も、イルベの不条理やその他の地域差別問題に関し、たった一件の公式論評も出さなかったという事実をわれわれは明確に記憶している。 イルベの今回の光化門暴食闘争に関し、セヌリ党と新政治民主連合、そしてもうひとつの院内政党である正義党は何の公式論評も発表しなかった。 この現象は、わが国の制度政界がこの問題について見せてきた偽善と浅はかな現実認識をそのまま見せる。 その結果がセウォル号遺族さえ人種主義の定規が適用され、他の人種に分類され、嘲笑される代価を払っているのだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-09-23 22:56:21 / Last modified on 2014-09-23 22:56:22 Copyright: Default

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