
*レイバーネットMLから
浅井健治@週刊MDS編集部です。
以下、12月15日の「高市発言撤回!官邸前緊急行動」終了後、台湾人参加者と日本人参加者
が交わした会話を文字起こししました。[ ]内がわたしを含む日本人参加者の言葉、[
]はわたしの補足です。
−ここから−
元留学生です。シールズが出来てきたとき、集団的自衛権や共謀罪の問題で何度もここ[
官邸前]に来たことがある。何回も沖縄に行って反基地運動に参加したことがある。だか
ら、日本の右派より左派・リベラル系の人に親近感を感じる。
とくに沖縄の人と連帯したいんです。なぜなら、同じ"帝国のはざま"の中に生きてきた人
間ではないですか、台湾と沖縄は。そこで複雑になるのは、沖縄の方にとっては一番弾圧
されるのはアメリカ帝国。だから沖縄の活動家たちが「中国を軍事脅威として見ていない
」と言うのを聞いたとき、ほんとに台湾人にとって心痛いんです。
なぜなら、そういう発言で、台湾人が中国政府に弾圧された日々の経験が否定された感じ
です。台湾でも誰も戦争、欲しくない。でも私たちにとって中国は侵略者です。それを認
めてほしいです。その部分が正直、日本の右派の政権より左派の人と連帯したいんですが
、それを理解しない限り連帯しにくいんです。その部分が複雑です。
[台湾人の人権を守らなければいけない、それを踏みにじっているのが中国政府だ、と言
いたい?] そうです。[そのことを日本の左派はあまり言わない。そこに複雑な思いが
ある、と?] はい。もうちょっとそこに焦点を当ててほしい、台湾人として。
[いろいろ言論弾圧がある] きょうも香港の新聞社の人が有罪判決を受けていて、まさ
に人権侵害じゃないですか。それに焦点を当てたくて。
いま台湾の人たちが結構、高市首相好きです。好きな人が多い。でも、好きな理由を理解
してほしい。中国を侵略者として見ていて、あと、私たちも日本の右翼は好きではないが
、戦後今まで台湾を見てくれたのは左派より右派です。日本の左派は中国や朝鮮・韓国よ
り台湾をもっと見てほしいんです。
私は中国人ではなく台湾人です。どこでもそれを言います。[侯孝賢やエドワード・ヤン
の映画が好き。日本の植民地支配、国共内戦、国民党の統治、先住民族…複雑な歴史があ
る。中国との関係もむずかしい。でも、"ありのままの私たち"を認めてほしい、という思
い?] 中国と統一したい台湾人ももちろんいるが、少数です。台湾人のアイデンティテ
ィについて毎年世論調査があって、2000年以降は「中国人ではなく台湾人」と考えている
人たちが6割を超えている。
でも今回、とくに日本の左派とリベラル系の論述の中で、台湾の親中派の人たちの発言を
引用・翻訳して「台湾人は自分を中国人と思っている」と言っている人たちが多くて、そ
れを見るとほんとに心痛いです。私たち"台湾独立派"のほうが日本の左派と価値観が近い
のに。
[沖縄に親近感を感じるのは、沖縄も台湾も大国のはざまにいて大国によって意思を踏み
にじられ、植民地扱いされているから?] はい。そうです。なのに、日本の左派の人た
ちは台湾独立派を敵として見ている感じがあって。いや、私たちのほうが日本の左派・リ
ベラル系の人たちと連帯したいんです。
[官邸前に来ている人も親中派ばかりではない。さっきも高田健さんが「中国の軍事演習
にも反対」と言っていた] はい、聞きました。[先週、東大生の金澤伶さんもはっきり
「中国が武力行使をほのめかしていることに私は反対」と言っていた] そういう人とつ
ながりたい。[ここにもそういう人はいます] 教えてくれてありがとうございます。少
し安心しました。
[何を一番訴えたいですか?] 中国のほうが侵略者、ということを伝えたい。でも、私
たちがなぜここに来たかという理由は、右翼より左翼のほうが親近感があるから。SNSに
「一緒に行く台湾人いますか」とポストしたら、台湾人意識の高い友達から「台湾人がそ
ういうところに行くべきではない」と批判された。「そこに行ったら反高市と見られる。
台湾人が行く場所ではない」と。そういう[台湾]人は[日本の]左派と全く対話したくない
。でも私は右派より左派と対話したいから来たんです。対立したいわけではなくて、つな
がりたい気持ちで、でも「[日本の]左派から見た台湾人についての論述は台湾人にとって
ほんとに問題ですよ」と伝えたい気持ちで、来ました。
[頼清徳政権については?] 不満な部分はいろいろある。例えば、パレスチナ[問題]で
は台湾ははっきりイスラエル・アメリカと同意している。でも、頼政権はつい1か月前、
「中国の侵略のスケジュールは2027年」と言った。周りの台湾人の友達はみな「来年侵略
されるとしたら私たちはどう生きていこう?」と考え始めていて、戦争が身近なところに
ある。
人間としての感覚は全然違う。今いろいろな動きがある。SNSでこの集会に来ることを友
達に批判されたときも、その友達に「私は高市政権あまり好きじゃない」とは言いにくい
。なぜなら、もし戦争になったら私は台湾[独立]派の友達と一緒に戦わないといけないん
です。だから、この場で左派右派と分裂されるのが台湾人にとっても良くないこと。そこ
が複雑です。私の周りの台湾人の友達みな「高市政権大好き」「トランプ政権大好き」。
ほんとにつらい。
[でも、台湾では軍事訓練などしているが、戦争したいと思っている人はいないのでは?
] いない。だって中国と戦って勝つわけない。[シェルター訓練だってみんな好きでや
ってるわけじゃない] 違う違う。誰も[戦争]やりたくない。徴兵も周りの男性はみんな
、いやです。
[中国の侵略を、戦争ではなく別のやり方で止められないだろうか?] 私たちもそうし
たい。でも、私の立場から言うと、沖縄の反基地運動を応援するが、沖縄の友達にも言っ
たことがある。「ある日、米軍が完全に沖縄から撤退したら、台湾人として怖い。中国が
どういう動きをするのか。ほんとに怖い」と。それを理解してほしい、沖縄の人に。でも
、価値観としては沖縄の反基地運動を私は支持する。
最近、台湾と沖縄と韓国の済州島とでピーストークという交流、平和キャンプがあった。
台湾人だけ済州と沖縄の反基地運動の活動家たちと立場がすごく違う。なぜなら、いま台
湾人として完全な反軍事化は言いにくいんです。中国が強すぎるから。今の台湾は全く軍
事化しないという選択肢がないんです。
[それが頼政権の軍拡政策を多くの台湾人が支持している理由?] もちろん支持してい
ます。でも複雑な気持ちです。今回私が台湾に戻っていたとき、頼政権が各家庭に非常時
の対応のパンフレットを配っていて、それを見るとほんとに怖い。「一番近いシェルター
はどこ」とか「家の中に必ず水を置け」とか。ほんとに考えたくないんですよ、そんなこ
とは。
[東アジアの平和共同体を市民レベルでつくっていきたいが、軍縮に向けた外交の動きが
なかなか見えない。台湾と沖縄が自分たちの立場を主張するのは東アジアの平和の基礎に
なる。住民主権で東アジア共同体がつくれないか?] それができたらいいと思う。でも
、今ほんとに難しいです。沖縄の友達から「ウクライナ戦争はウクライナとアメリカがロ
シアを煽りすぎるのではないか」という意見を聞いたりすると。
[いい知恵を絞りましょう][中国や台湾の市民団体とネットワークをつくる動きもある
。そういうつながりをつくりたい。そこに希望がある] ありがとうございます。[やっ
ぱり民衆外交だ][台湾の反原発運動の人たちが代々木公園の集会に来ていた] はい。
私の友達も日本の反原発運動の研究をしている。つながりがある。[脱原発したのは民進
党政権] はい。民進党政権とは政治的立場が一緒の部分もあり、違う部分も結構ありま
す。複雑です。
−ここまで−
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staff01.
Last modified on 2025-12-20 07:37:37
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