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情報提供 : 木村雅英

報告【院内ヒアリング集会】東電柏崎刈羽6号機再稼働の危険性

 去る12月9日に原子力規制庁及び内閣府にご出席していただき、福島みずほ議員ほか30名でヒアリングをした。以下にその概要をお知らせする。

ヒアリング結果
〇柏崎刈羽6号機のプラントで制御棒トラブルや核物質防護違反多発などで、原子力規制庁と東電との面談が今も行われている。
〇地震・津波についても地震本部の24年8月の評価に対して、そのまま当てはめると許可が与えられない状態で、今も原子力規制庁が東電の回答を待っている。さらに地震本部が佐渡・新潟地域の長期評価を評価するべきと私たちは考える。
〇原子力災害対策指針に基づく避難計画には、多くの矛盾があるが、時間切れで追及はできなかった。
〇山中委員長の9月10日記者会見発言<東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえますと、あれぐらい大きな原子力発電所の事故になっても、放射線の影響で何か健康被害を受けた方というのは、今のところ全くおられない。>には多くの反例を用意したが、原子力規制庁は時間切れとして追加質問に応じなかった。

山崎久隆さんの報告・感想
1 規制庁の回答に見られる主な矛盾点
1-1 「再稼働の是非は規制委の判断ではない」とする一方で、実際には運転許
容・検査の枠組みで事実上の許容判断を行っている点。
 規制庁は「再稼働の是非について判断する立場ではない」と明言しているが、
一方で検査結果の評価(重要度評価やSL判定)やLCO(運転上の制限)逸脱時の
扱い等を通じて、実質的に「運転継続可能/不可能」を左右する対応を行ってい
る。これが責任の所在を曖昧にし、市民に「規制が行われているのか判断されて
いるのか」分かりにくくしている。
1-2 「事案は『自律的改善で対応可能=重要度は緑』と評価して検査で監視
する」とする一方で、同種の事案が繰り返し発生していることについては十分に
厳しい措置を取らない姿勢が見える点。
 規制庁は複数の文書管理・持ち込み関連事案を「重要度:緑/深刻度:SL4」
として自律的改善で処理するとしたが、同種の不祥事が頻発している点(報告・
不適合の多発)を踏まえると、同評価が妥当か疑問である。市民からの「東電に
はより厳しい対応が必要」との指摘に対し、規制庁は「トラブルはゼロにできな
い」「自律的改善の仕組みが回っている」と説明しており、再発リスクの評価が
甘い。
1-3 技術的に重大な問題(例:制御棒駆動機構の固着)について、「原因は推
定でよい」「事業者の是正と現場確認で良し」とする回答の矛盾。
 制御棒駆動機構の不具合は「何らかの引っかかり」として推定に留まり、事業
者は部品交換や電流負荷測定で「健全性確認した」としているが、原因特定や分
解検証が十分に行われた証拠は示されていない。規制庁は「事業者のCRや立ち会
いで確認した」とするのみで、根本原因追及の不足を自認している。安全上重要
な機能に対して「推定で良し」とする姿勢は不十分である。
1-4 GTG(代替交流電源)配置・故障についての説明で、「第1は基準適合」「第2は自主対策」と区
別しつつ、設置場所や運用に関するリスクの説明が不十分。さらに停止原因の調
査資料は「公開できない」として情報非公開を正当化している点。透明性とリス
ク評価が矛盾している。
1-5 「可搬機器で代替できるから特重(特定重大事故等対処施設)がなくても
致命的ではない」との立場と、同時に工期遅延の理由や日程の根拠は事業者任せ
にしている点。安全上重要な設備の遅れを合理的に説明できていない。
 規制庁は「基準適合か否か」「検査での確認」という形式的ラインを重視する
が、繰り返す不具合・複数領域にわたる不備・情報非公開という実態を踏まえる
と、評価・対応の一貫性と厳格性が欠けているという矛盾が浮かび上がる。

2 柏崎刈羽原発の再稼働に関する具体的懸念
A.主要機器(安全系)に関する懸念
2-1 制御棒駆動機構の不具合(固着)
 原因が「推定(ローラーがガイドに引っかかった等)」に留まり、根本原因の
分解解析が不十分。205本中一部を交換・残りは電流負荷測定で「問題なし」と
判断しているが、潜在的な設計欠陥や初期不良の可能性は依然残る。運転中に同
様事象が起きれば致命的なリスクとなる(制御棒は炉の停止に直結する)。
2-2 GTG(代替電源)の信頼性と配置
 重大事故時の代替電源(第1GTG)は海岸付近にあり、規制側は設置高さが想定
津波より高いとする一方で、GTG停止の原因(ケーブル接続部の「錆らしき汚
れ」)が発生している。基礎的な維持管理・腐食対策の不備が示唆され、津波以
外の脆弱点(腐食・接続不良)で機能を失う恐れがある。
B.組織・運用上の懸念
2-3 頻発する文書管理・セキュリティ事案
 ID不正や文書持ち込みといったセキュリティ/管理の不備が継続して発生して
おり、企業文化としての安全管理の弱さがうかがえる。これらは小さく見えて重
要な信号であり、安全文化の欠如は重大事故の確率を高める。
2-4 事業者自己判断への過度の依存
 規制側が事業者の「自律的改善」に頼る姿勢が明瞭で、事業者による報告ベー
スで「健全」判定するケースが目立つ。独立した徹底的な検証(分解検査や第三
者解析)が必須であるにも関わらず、その実行が不十分。
C.防災(避難計画)に関する懸念
2-5 地域住民の不信と説明不足
 県民アンケートで「準備できていると思わない」割合が高く、規制側は技術的
説明に限定する姿勢で住民感情の回復を図れていない。避難計画の現実的実効性
(交通、被曝防護、長期避難先の確保等)に関する実証的議論・演習結果の公表
が不足している。
2-6 特重施設の遅延と連続運転日程の疑念
 特重設備(重大事故対処設備)の完成が遅れている一方で、運転日程が事業者
側の都合で“接続”されている疑いがあり、万が一の際の致命的対応能力が確保
されないまま運転継続・再稼働が進む可能性がある。これは避難計画や事故時対
応能力にも直接影響する。

3 これらを元に再稼働に反対する論点
3-1 安全機能の根本原因が特定されていない機器が残る以上、再稼働は容認で
きない
 制御棒駆動機構の不具合は原因究明が不十分であり、運転中に同様事象が発生
すれば炉の停止・制御に重大な支障を来す。単なる部品交換や電流測定だけで
「健全」と判定するのは不十分。
3-2 代替電源や重要機器に対する脆弱性が残るため、重大事故リスクが増大す

 GTGの停止原因が配線腐食等の基本的な劣化に由来する可能性があり、津波想
定以外の脆弱性で代替電源が失われれば炉心冷却に致命的影響が出る。
3-3 運営・管理の信頼性が低い(セキュリティ・文書管理の繰り返し不備)た
め、重大事故防止の安全文化が確立しているとは言えない。
 ID不正や文書管理問題が繰り返され、規制側が「自律的改善で十分」と評価し
ていること自体がリスクの見落としに繋がる。
3-4 難計画は不十分であり、重大事故が発生したときの現実的な被害軽減能
力は担保されていない
 住民の不信、情報公開の不足、特重設備遅延を併せると、甚大事故が起きた場
合の長期避難や応急対応が破綻する危険がある。
3-5 規制当局の姿勢(形式的適合確認・事業者報告の受け止め)では、事業者
を厳格に縛ることができない
 規制庁は必要な場合に対応を求めると述べるが、現実には情報非公開や「事業
者理由」の受容が多く、厳格・独立した監査・検証が欠ける。
 現在の情報と規制の運用状況を踏まえれば、柏崎刈羽6/7号機の再稼働は重大
事故リスクを増大させるため反対すべきである。

4 避難計画の主要な欠陥
 実効性評価の欠如
 想定被曝線量/避難時間のシミュレーションや、交通遮断による実際の避難完
遂性試算が示されていない点。住民の移動能力や避難先の受入れ能力が見えてい
ない。
長期避難・帰還計画の欠如
 放射性物質拡散による長期避難要請に対する恒常的受け入れや補償、医療体制
が不十分。
情報公開・住民参加の不足
 規制庁も「技術説明に限定する」と述べており、住民の心理的不安を払拭でき
ていない。透明性の改善・公開演習の実施が必須。

5 規制庁の姿勢に対する問題提起
5-1 事業者報告ベースの確認に依存しすぎ
 事業者が作成するCR(是正処置報告)や現場説明を前提に「健全確認」を行う
だけでは、恣意的な報告や情報隠蔽のリスクを排除できない。規制側自らが分解
検査や第三者検査を強制する権限をより明確に行使すべき。
5-2 情報非公開の常態化
 例えばGTGのケーブル調査報告等、重要な調査資料を「公開できない」とする
運用やPPについては議事録どころか概要さえ示さない対応は、透明性と説明責任
を損なっている。
5-3 「自律的改善」を過度に評価
 東電の不祥事の経緯を踏まえれば、単なる「自律的改善の仕組みが回ってい
る」という説明は説得力に欠ける。繰り返し違反や重大事象がある事業者には、
より厳格な一時的運転停止や追加的な外部監査を課すなどの強制手段を用いるべ
き。

6 東電の体質・対応姿勢への批判
6-1 安全文化より費用・スケジュール優先の姿勢
 特重の工期変更の説明が不十分で、工程を“接続”し連続運転を可能にする日
程が事業者都合で組まれている疑いがある。被害回避より事業継続を優先する姿
勢が透ける。
6-2 事象発生時の対応が場当たり的
 制御棒不具合で「とりあえず交換・電流測定でOK」として深掘りを避けた対応
や、燃料装荷の時期判断など、リスクを先送りしている印象がある。こうした“
場当たり”の運用が重大事故発生確率を高める。
6-3 情報を出さない・公開を避ける習慣
 重要調査や資料を「公開できない」とする扱いが繰り返されれば、外部の検
証・市民の監視が働かず、問題の隠蔽や軽視につながる。
6-4 再発防止への意欲の欠如が疑われる
 繰り返す内部不祥事を受けてなお「自律的改善で対応可能」とする自己評価が
出る体質は、外部から見て改善の根本的実行を疑わせる要因である。

7 立地自治体が本来ならばとるべき対応姿勢とは
7-1 原因究明の徹底要求
 制御棒機構については、事業者に対し分解・材料・摩耗の第三者解析を実施さ
せ、その結果を公開するよう規制庁に要求すること。
7-2 GTG故障の詳細な報告公開要求
 接続不良の調査報告書、交換部の調査結果・腐食原因の推定・再発防止策を公
開させる。公開拒否が続く場合は、公開の法的根拠や理由を具体的に議会・行政
側に問い質すこと。
7-3 特重設置工程の根拠と監査
 工程接続の合理性を示す具体的根拠(工程管理表・資材手配・人員計画)を開
示させ、遅延リスクがある限り再稼働を認めないよう求める。
7-4 避難計画の実効性検証
 住民搬送シミュレーション、避難所・医療・長期受入の実地検証、公的演習の
実施とその結果公開を求める。
7-5 規制庁の独立性・権限の強化要求
 事業者報告一辺倒の審査を改め、規制庁が強制的に現物検査・第三者検査を指
示できる手続きを求める。

8 まとめ
8-1 提示資料(規制庁回答)を整理すると、技術的未解明事案・複数領域の維
持管理不備・情報非公開・事業者任せの運用が同居しており、これをもって柏崎
刈羽の再稼働を正当化することは難しい。規制庁自身が「自律的改善」と評価し
ている部分が多いが、繰り返す事案と住民の不信を踏まえれば、より厳格で透明
な検証が先行すべきである。
8-2 参加者の意見として
 東電柏崎刈羽原発の「再稼働」において、少なくても彼らが主張する安全性を
確保できるとする論拠が成立するる根拠が認められない。
 少なくとも(a)制御棒駆動機構等の根本的原因究明と第三者検証、(b)GTG
等重要設備の調査報告の完全公開、(c)特重施設の工程・完成確度の実証、
(d)避難計画の実効性実証くらい満たされるまでは再稼働の準備が整っている
とは到底言えない状況だということは指摘できる。
 加えて規制庁による地震本部長期評価に対する確認会合で指摘されていた事実
関係について、東電はまともな回答ができていない。この評価結果については、
既許可を覆す可能性があると思われるのに、漫然とヒアリングを続ける一方で、
その結果にかかわらず再稼働を強行する姿勢は、安全側に立った姿勢とは認めら
れず、この一点においても再稼働をするべき原発ではないと考える。
 以上、ヒアリング集会に参加した感想です。

【院内ヒアリング集会の概要】
日時    2025年12月9日(火)    13時00分〜16時00分
会場    参議院議員会館 議員第1会議室(1階)
進行 1 事前学習会    (13時15分〜13時45分)
        東電柏崎刈羽6号機再稼働へ動き
東電の原発稼働資格
        柏崎刈羽6号機プラントの問題点
柏崎刈羽原発の地震・津波想定の問題点
柏崎刈羽原発の避難計画の問題点
福島健康被害と「7つの約束」
    2 ヒアリング     (14時00分〜15時30分)
1 セキュリティ対策の欠陥を抱えたままの再稼働
2 制御棒駆動機構のトラブルについて
3 GTGの停止・運転制限の逸脱について
4 特定重大事故等対処施設(特重)の設置未了原子炉の再稼働問題
5 地震・津波リスクについて
6 柏崎刈羽原発の避難計画の問題点
出席要請:原子力規制委員会
紹介:参議院議員 福島みずほ議員事務所
主催:再稼働阻止全国ネットワーク
質問者:山崎久隆、木村雅英ほか

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