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アリの一言:高市「台湾有事」答弁・「日中喧嘩両成敗」ではない
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 「台湾有事」の際、どういう場合に集団的自衛権を行使できる存立危機事態になるのかという質問に、「戦艦を使い、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になりうるケースだと考える」とした高市早苗首相の答弁(7日の衆院予算委員会)が波紋を広げています。

 

 中国政府の撤回要求に対し、高市政権はあくまでも撤回を拒否しています。高市答弁はうっかり口が滑ったというものではなく、高市氏の確信発言です。

 

 問題は、この状況についての日本メディアの論評です。「朝日」「毎日」「東京」はいずれも18日付の社説で論評していますが、共通しているのは日中両政府双方に「冷静な対応」を求める「喧嘩両成敗」論に立っていることです(「読売」「日経」「産経」は対象外)。

 

「両国には、さらなる事態の悪化を招かぬよう冷静な対応が求められる」(毎日新聞社説)、「対立を激化させぬよう、双方に賢明な判断を求めたい」(東京新聞社説)

 朝日新聞に至っては、「不毛な対立」だとし、「中国の姿勢にも大いに疑問がある」などとむしろ中国側に問題があるかのように書いています(18日付社説)。

 

 こうした日本メディアの論評は根本的に誤っています。その理由は2つあります。

 

 第1に、「高市発言は内政干渉だ」とする中国側の抗議に対し、「台湾は中国の領土の一部であるというのが中国政府の譲れぬ立場」(朝日社説)だと、あたかも中国側の一方的な主張であるかのように述べていますが、「台湾は中国の領土の一部」というのは日中共同声明(1972年9月29日)の公式文書に明記されていることです。

 

 「共同声明」第3項はこうです。

「三、中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」(外務省HPより。なお「ポツダム宣言第八項」とは「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」です)

 

 「日中共同声明」に照らせば、「台湾有事」に軍事介入すると表明した高市答弁が「内政干渉」であるという中国側の主張は正当です。

 

 しかし、この「日中共同声明第三項」に触れたメディアの社説は皆無です。

 

 なお、中国駐大阪総領事の「首を斬る」投稿が不適切であることは言うまでもありませんが、それは高市答弁の問題性を考えるうえで本質的なことではありません。

 

 第2に、高市答弁の核心は存立危機事態という名のもとに集団的自衛権を行使すると言明したことであり、集団的自衛権の行使は明白な憲法(前文、第9条)違反だということです。

 

 それは安倍晋三内閣が閣議決定し(2014年7月1日)、戦争法(安保関連法)に盛り込んで強行成立させた(15年9月19日)、安倍政権の悪しき遺産の1つです。

 

 問うべきは集団的自衛権行使の違憲性であり、必要なのは憲法に立脚して戦争法(安保法制)を廃止することです。それは日本の責任です。

 

 集団的自衛権行使が違憲であることは憲法学者の間では定説であり、戦争法が強行されたときは反対・廃止の声が高まりました。

 それから10年。今回の問題でこの点を指摘している日本のメディア(識者も含め)は皆無です。

 

 政界はもとより、メディア、識者、市民に広がっている憲法感覚の麻痺・劣化。それこそが最大の問題です。

 




Created by sasaki. Last modified on 2025-11-20 07:33:00 Copyright: Default

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