ガザの人々が日々殺されている現実を目の当たりにして、国際社会はなぜイスラエルのジェノサイドを止められないのか? アメリカの後ろ盾があるからだけど、はたして理由はそれだけか?
そんな根源的疑問に対する1つの回答を見ました。月刊「地平」(熊谷伸一郎編集長)10月号に掲載された国連特別報告者報告「占領経済からジェノサイド経済へ」(6月30日報告)です。報告者はイタリア出身の研究者・フランチェスカ・アルバネーゼ氏(翻訳・甘糟智子氏)。以下はその一端です(太字は私)。
<イスラエルの違法な占領、ガザで進行中のジェノサイドを支えているのは法人組織である。法人組織とは、民営・公営・国営の別を問わない、多国籍を含む企業、営利・非営利の事業体を指す。
イスラエルは米国のロッキード・マーティンが主導する史上最大規模の防衛調達計画であるF−35戦闘機プログラムの恩恵を受けている。このプログラムには、イタリアのレオナルド社を含む少なくとも1650の企業と8カ国が参加している。
日本のファナックのようなサプライヤーは兵器製造ラインに産業用ロボットを供給している。
デンマークのA・P・モラー・マークスをはじめとする海運会社は、2023年10月以降、米国が供給する軍事装備の安定的な流通を支えている。
IBMは1972年からイスラエルで事業を展開し、パレスチナ人の生体認証データの収集・保存・利用を可能にし、イスラエルの差別的許可制度を支えている。
マイクロソフトは1991年からイスラエルで事業を展開し、その技術は入植地を含む刑務所、警察などに組み込まれている。
2021年、イスラエルは基幹技術インフラを提供するため、アルファベット社(グーグル)とアマゾン・ドットコムに12億ドルの契約を発注した。
キャタピラー社は数十年にわたり、パレスチナの住宅やインフラの破壊に使用される機材を供給してきた。
韓国のHD現代、スウェーデンのボルボ・グループなどの主要重機メーカーは、長年にわたってパレスチナの財産破壊に関与してきた。
(結論)イスラエルによるジェノサイドがなぜ継続しているのか―それが多くの者にとって利益をもたらすからである。終わりなき占領が兵器メーカーや大手テクノロジー企業にとっていかに理想的な実験場となっているか。そこには無限の需要と供給が存在し、監視はほぼ皆無で、責任は一切問われない―投資家および民間・公的機関は、そうした中で自由に利益を享受している。あまりにも多くの影響力ある法人組織が、イスラエルのアパルトヘイトと切り離せない関係にある。>
そしてアルバネーゼ報告書はこう結ばれています。
「世界が目撃している残虐行為には、緊急の責任追及と正義の実現が不可欠であり、大量殺戮へと変質した占領経済を維持し、そこから利益を得てきた者たちに対し、外交的・経済的・法的措置を講じることが求められている。今後の展開は、すべての人々の手に委ねられている」
トランプ大統領は7月9日、同報告書はイスラエルと米国に対する攻撃であるとして、アルバネーゼ氏への制裁を発表しました。
同報告書の解説を寄稿した早尾貴紀・東京経済大教授はこう指摘しています。
「イスラエル支持が米国の国益にならないところまで(米国を)孤立させられれば、米国はここまで逸脱した姿勢を取ることはできなくなるだろう。そうすればイスラエルのジェノサイドも止まるだろう。それには、どれだけアルバネーゼ報告に世界的な支持が集まり、この報告内容が常識として受け止められるかにかかっている」(前掲「地平」10月号)
イスラエルのジェノサイドが止められない、否、止まらないのは、それを陰で支え利益を得ている多国籍企業はじめ多くの「法人組織」があるから。「無辜の人々の抹殺を可能にし、そこから利益を得る商業活動は、ただちに終止されねばならない」(アルバネーゼ報告書)のです。


