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LNJ Logo アリの一言:「戦後復興」で朝鮮を無視したNHK「映像の世紀」
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「戦後復興」で朝鮮を無視したNHK「映像の世紀」

2025年09月05日 | 日本人の歴史認識
   

 1日放送のNHK「映像の世紀」は、「昭和百年」シリーズ第2回「焼け跡からの再出発 日本人を励ました敗れざる者たち」でした。きわめて問題のある内容でした。

 番組は「日本人を励ました者たち」として、手塚治虫、井深大(ソニー創業者)、本田宗一郎(ホンダ創業者)とともに、プロレスラー・力道山(1924〜63)を取り上げました(写真)。もともと大相撲の力士だった力道山がプロレスに転向したことには触れました。しかしその理由には言及しませんでした。

 力道山は本名を金信洛という在日朝鮮人です。関脇まで進んだ力道山が相撲界を去らざるをえなかったのは、親方から「朝鮮人は横綱にはなれない」と告げられたからです。日本中が熱狂した「プロレスラー・力道山」誕生の背景には露骨な朝鮮人差別があったのです。番組はそれを無視しました。

 当時のスポーツ記者の回想が流れました。

「力道山が朝鮮人であることはスポーツ記者ならみんな知っていた。しかしそれを書く者はいなかった。力道山は日本の力道山でなければならなかったのだ」

 番組は井深や本田の業績を詳しく報じ、「戦後復興は奇跡だった。日本人は本当によく働き頑張ったのである」という半藤一利氏の言葉で締めくくりました。

 そこには重大な欠落があります。それは「朝鮮戦争」(1950〜53休戦、写真右=別の番組から)にまったく触れなかったことです。

 「戦後復興」の「奇跡」は「朝鮮(6・25)戦争」を抜きには語れません。

「戦後日本の経済復興とその後の高度成長は、その土台が、朝鮮戦争の「特需」によって据えられたものである。日本は不況と貧困とそして政治的・経済的危機から朝鮮戦争によって救出された。今日、世界を席巻しているトヨタなどのグループはすべて朝鮮戦争中、戦場から送り込まれてくるトラックや戦車の修理、組立からの巨大な利益を飛躍のバネとして成長した企業である」(ガバン・マコーマック・オーストラリア国立大教授著『侵略の舞台裏 朝鮮戦争の真実』シアレヒム社発行1990年)

 「朝鮮(6・25)戦争」の元凶は言うまでもなく日本の朝鮮植民地支配です。日本には植民地支配と朝鮮戦争の二重の加害責任があるのです。しかもそのうえ日本はその「戦争特需」で巨大な利益をあげ、今日の「経済大国」を築いた。

 にもかかわらず、「戦後復興」を特集した番組でそれに一言も触れなかったのは、たんなる無知ではなく、意図的な“朝鮮戦争隠し”と言わざるをえません。

 力道山といい、「朝鮮戦争特需」といい、日本の「戦後復興」は在日朝鮮人の力、朝鮮半島との関係を抜きには語れません(「日本人を励ました」在日朝鮮人は力道山だけではありませんが、紹介されることはほとんどありません)。
 それを隠すのは、朝鮮・朝鮮人を日本・日本人に都合のいいように利用する今日的植民地主義と言って過言ではありません。

 ガバン・マコーマック氏はこう指摘しています。

「日本の指導者たちは朝鮮の悲劇(朝鮮戦争)を「旱天の慈雨」などという言葉でよろこび喝采を送った。朝鮮人が(南北いずれを問わず)日本が再び自分たちの苦悩から利益を得たことに憤激を感じるのも無理はないだろう。日本人と朝鮮民族との間の最終的な和解のためにはこのことに対する日本人側の理解が必要である」(前掲書)

 「朝鮮(6・25)戦争」はまだ終結していません。日本の大軍拡、日米軍事同盟深化の根源にそれはあります。
 私たち日本人は、「朝鮮(6・25)戦争」の現代史的意味を凝視するとともに、1日も早くそれを終結させなければなりません。

Created by sasaki. Last modified on 2025-09-05 07:59:01 Copyright: Default

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