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中国:フォックスコンのあるベテラン女性工員の闘争記(そ の1)
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〔レイバーネット国際部・I〕

選挙、いろいろありますが、とりあえず沖縄選挙区は与党に競り勝ちましたね。全体的に は与党は票を減らしていますが、「よ党」と「や党」の中間の「ゆ党」どころか、より極 右の政党が伸びてる?(><) 海外の友人から「極右が移民排斥などの主張で伸びているようだが、日本は労働力不足な ので、資本も困るのでは?」と質問が来たので、「移民排斥の主張が資本にとっても意味 があるのは、資本は人権意識や生活者としての労働者ではなく、たんに資本のゆうことを 黙々と聞く労働力が欲しい。移民排斥の主張で移住労働者らを黙らせ、日本人労働者と外 国人労働者のあいだに分断を持ち込む効果のある極右の主張は、低賃金で過酷な使い捨て 労働を維持するために資本にとっても必要だ」と答えました。 万国の労働者、団結せよ。 前振りが長くなりましたが、以下、「その1」です。結構長い。いつ終わることやら。「 フォックスコン」は台湾資本のホンハイ(鴻海精密)の中国での製造会社の名前です。 =================== フォックスコン:あるベテラン女性工員の闘争記 フォックスコンで長年働いてきた小芳(シャオファン)は、不公平な業績評価への署名を 拒否し、労働組合へ苦情を申し立てたが解雇された。こうして彼女は自らの権利を守るた めに長く困難な道を歩み始めた。職場での嫌がらせ等の陰湿な圧力に直面しながらも、彼 女と友人たちは互いに支え合い、権利のための活動に立ちふさがる壁を乗り越えようとし てきた。組立ラインから裁判所へ、沈黙から声を上げるまで、小芳はたたかいを通じて自 分を取り戻した。 筆者:水瓶紀元、2025年7月8日 原文 https://aquariuseras.substack.com/p/fushikang-xiaofang 文章:张燚燚 編集:滚木 ウェブ編集:cc 友玲と別れ、アパートに戻ったのは夜12時近くだった。小芳は机に向かい、頭が冴えてい るうちに何か書こうと考えていた。 机の上には小芳のニットウェア、フラワーアレンジメント、絵の具、そしてわざと白い部 分を残していた塗り絵が置いてあった。それは、咲き誇る美しい花束の絵だった。この家 に引っ越してきたばかりの頃、ベッドの下には蜘蛛の巣が張っていた。小芳はそれを一つ 一つ剥がして掃除し、「ネズミの巣穴」から「盤糸洞」に引っ越してきたみたいだと冗談 を言った〔盤糸洞は『西遊記』にでてくる蜘蛛の精の女怪の巣穴〕。しかし、南向きの窓 とバルコニーがあり、明るく風通しの良いこのワンルームに小芳はとても満足していた。 以前のアパートは湿気と寒さでゴキブリやネズミが出没し、来客が吐きそうになっていた からだ。新居の壁は、自分の身長と同じ高さまで白のペンキで塗り替え、棚や机、椅子な どを配置して、すっかり住みやすくなった。この年は15歳で工場の寮に入って以来、初め て自分のプライベート空間を持つことができた年になった。 (写真)フォックスコンの古い作業着を着て動画を撮影する小芳(動画より) 原稿を書き終えた。小芳は、前に住んでいた工場の寮の自分のベッド用のカーテン――星 がちりばめられた薄い夜空の模様――を引っぱりだして、壁際に置かれたベッドのベッド ボードに掛けて背景を作った。今夜、彼女は新たなアイデアを思いついた。フォックスコ ン工場ではすでに廃止された古株だけが持っているバラ色の作業服を引っ越しの荷物の中 から取り出した。スマホスタンドを設置して作業服を着ると、小芳は新たな動画を撮影し た。「管理職は労働者にどのように意地悪をするのかというと…」。動画は真夜中に配信 された。動画の上部に表示されていたタイトルには「あるフォックスコンのベテラン女性 工員の闘争記」という文字が浮かび上がっていた。 ◎屈しない 小芳は2017年7月に「三赢科技(深圳)有限公司」(フォックスコン傘下の会社)に就職 し、フォックスコン工場の生産ラインの工員になった。2023年末、彼女は同社と無期雇用 契約を締結した。しかし1ヶ月後、彼女が労働問題で労働組合に訴えると、フォックスコ ンは「欠勤」を理由に彼女との雇用契約を解除した。小芳は労働仲裁を申し立て、解雇無 効の確認と損害賠償を求めた。仲裁手続きで会社は、従業員マニュアル研修会で彼女が署 名した記録を証拠として提示した。小芳はこの筆跡は自分のものではないと異議を申し立 て、署名が偽造されたものだという判断されたにもかかわらず、仲裁判断は依然としてフ ォックスコンによる解雇を支持するものであった。小芳はこれを不服として控訴した。第 一審は2025年4月に開かれ、判決はまだである。 北京冠楠法律事務所の郝正新弁護士は、小芳にオンラインを通じて法的支援を無償で提供 してきた。郝弁護士は長年、労働側弁護士として代理人を務めてきた。前に小芳と会った ときに、彼女が保管していた証拠や書類も確認していた。郝弁護士は、小芳が「信頼でき る」「揺るぎない粘り強さ」「簡単に諦めない姿勢」に感銘を受けたと述べた。「彼女が 経験した権利擁護のプロセスは、法的に労働者が利用できるあらゆる手段を尽くし、中国 における労働者の権利擁護のあらゆる側面の困難さを明らかにしました」。 仲裁の申し立てを決意するまで、小芳は耐え難い一週間を過ごした。 小芳によると、彼女が「C評価」の業績評価報告に署名を求められたのは2024年1月10日の ことだった。工員はだいたい3年ごとに1級昇進し、昇給幅は50元から500元になった。当 時、勤続6年半の小芳は「工員2」の身分で、普通なら2024年内に「工員3」に昇進するは ずだった。しかし、「C評価」は「業績不良」に分類され、昇進や昇給の可能性は低く、 支給される年末ボーナスにも影響が出ることから彼女は納得していなかった。年間を通し て遅刻、早退、欠勤といった勤怠記録もなかった。なぜ勤怠記録で減点された他の同僚と 同じC評価を受けなければならないのか? その疑問に課長はこう答えた。「不満なら夜 勤に回すよ」。 翌日、会社との調停の最中に小芳は家族からSNSでメッセージを受け取った。会社が何度 も家族に電話をかけ、小芳が病気で自殺願望があり、家族に彼女を自宅へ連れて帰るよう に伝えていたことを知った。その後の数日間、小芳は「C評価」評価書に署名するよう何 度も出社するよう求められた。小芳が署名を拒否すると、職場ででっち上げの懲罰を受け た。ラインの副リーダーが1日12時間、彼女の勤務を監視し、また突然残業時間情報への アクセスができなくなった。アクセスが制限されると残業申請ができないので、当然、割 増賃金賃金もなくなる。何度か残業を申請したが却下された。「残業手当」がない場合、 毎月基本給しか受け取れない。そこから社会保障費、法定積立金、食堂の食費などの経費 も差し引かれる。当時の小芳の基本給は2950元で、深圳市の最低賃金2360元と610元しか 違わないほど少なかった(深圳市の最賃は2025年には2520元に引き上げられる予定)。 明らかな嫌がらせに直面しても、小芳は屈しなかった。2024年1月20日、彼女は事務棟の あるエリアに「従業員アピール」を掲示し、自分が受けた不当な扱いと残業への参加を訴 えた。しかし、すぐに報復が始まった。その日の午後、彼女は「職務違反通知」に署名す るよう求められた。それを拒否すると、早番と週末の勤務から外すと脅され、その日の早 番から外されてしまった。早番と週末勤務は時間外労働なので割増賃金が支払われる。こ れは、労働者にとっては「福利厚生」でもあった。翌日は日曜日だった。小芳は週末勤務 で稼ぐ機会を諦めたくなかった。出勤時間を打刻して業場に入った。残業させないのは「 雇用差別」だと訴えたが、すぐに現場から締め出された。管理者がまた違反通告に署名を 求めてきたので、再び拒否すると、現場の管理者ら5人に囲まれて「警察に通報した」と 恫喝された。同じ日、他の従業員からも嫌がらせを受けたが、その様子はスマホに録画し た。その日の夜、班長から連絡があり、この日の出勤は労働ではなく「自発的なボランテ ィア」だと告げられた。 「工場に残るのは絶対に無理でした」と小芳は語る。工場には至る所に監視カメラが設置 されていたが、工員らが電子機器を持ち込むことは禁止されていた。その後、小芳は毎日 出勤し、会社の労働組合に行って、8つの問題を解決してほしいと組合に要望した。1週 間後、彼女は4日間の欠勤を理由に解雇された。解雇の根拠は、フォックスコンの「グル ープ従業員懲戒管理規定」だった。そこには「時間通りに出勤しない、または8時間以上 欠勤する者は解雇される」と規定されていた。 不当な扱いを受けて、毎日会社に行って労働組合に権利を主張することが欠勤とみなされ るのか?これは、小芳の裁判のなかで重要な争点の一つとなっている。弁護士の郝正新は 、明確な法的規定はないものの、標準的な意味での「欠勤」とは「無断で職場を離れた」 または「理由なき欠勤」を指すと指摘した。小芳が労働組合に苦情を申し立てる前に、長 時間にわたって上司に苦情を申し立て、話し合いを重ねようとしてきたが、何の成果も得 られなかったことから、「彼女は自らの権利を守るために生産現場を離れて組合に訴えた 。これはある程度、理由のあることだ」と述べた。 (つづく)

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