

4月27日投開票のうるま市長選で「オール沖縄」派の照屋大河氏が大敗したことは、1月の沖縄市長選に続いて、「オール沖縄は崩壊に近い状態にある」(4月28日付沖縄タイムス社説)ことを印象付けました。
このニュースを韓国で琉球新報、沖縄タイムスの電子版で読んだ時、1つの疑問が浮かびました。沖縄と韓国はアメリカとの軍事同盟下にある共通点から政治、社会状況で似ている点が少なくありません。韓国では尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を罷免に追い込むなど市民運動が大きな力を見せているのに対し、「オール沖縄」は衰退の一途。この違いは何なんだろう。韓国の市民運動と「オール沖縄」はどこが違うのだろう―?
この問題を考える手掛かりは、民族問題研究所の金英丸(キム・ヨンファン)対外協力室長のインタビュー(4月11日のブログ)にあったと思います。
次の大統領は市民の声を反映した政権になるだろうかと質問したのに対し、金室長はこう答えました。
「市民の運動次第だ。…これまでも市民運動が政治を軌道修正してきた。韓国の市民社会(組織・運動)は政党とはまったく別組織として自律している」
金氏の話では、市民団体・運動から政治家になる時はそれまで属していた団体とは完全に関係を切るのだそうです。それが「市民社会の政党からの自律」だそうです。
翻って「オール沖縄」はどうでしょうか。
「オール沖縄」はもともと、辺野古に新基地を造らせないという1点で結集した市民運動です。しかし、その運営の中心は各政党の代表が担っており、とても「政党とはまったく別組織」とはいえません。
そして、翁長雄志氏が当選した知事選挙(2014年)から、実質的な選挙母体となってきました。市民運動・市民団体というより、政治運動・選挙団体という色合いを強めてきました。
今回のうるま市長選の結果を受けて琉球新報が社説(4月28日付)で、「「オール沖縄」勢力は…政治運動としての再構築が必要だ」と論評しているのは、「オール沖縄」が政治勢力とみられている証拠です。
市民団体・市民運動であるはずの「オール沖縄」が、政治運動さらには選挙運動を担う政治団体になってしまった―これが「オール沖縄」衰退の根源ではないでしょうか。
それは市民団体・市民運動としての「オール沖縄」の衰退を招いただけでなく、反作用として、構成員である政党の低落をも招くことになりました。「オール沖縄」が様々な政治的立場を包含する組織であるため、「オール沖縄」として政治・選挙活動を行うかぎり、政党が独自の政策の主張・宣伝を控えるようになったからです。日本共産党が「オール沖縄」結成以来(翁長県政発足以来)、「日米軍事同盟=安保条約廃棄」の政策を沖縄でも主張しなくなったことに典型的表れています。
韓国では、昨年12月の「内乱」以降、1732の市民団体・組織によって「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」という市民社会(諸組織・団体)が形成され、罷免後も名前を変えて引き継がれています。
政党から完全に独立・自律した大小さまざまな市民運動・組織を草の根のように張り巡らせ、どのような政権(県政)が誕生しても市民の側に立って政治を修正していく。そんな韓国式の市民運動・市民社会が沖縄で、そして日本で切実に求められています。
「オール沖縄」の衰退(消滅)は、そのことを反面教師として教えているのではないでしょうか。