●渡部通信（3/24） :
明けない夜はない（305）＜若者を再び戦場に送るな！（55）「君が 代」裁判・第五次訴訟での原告の声＞
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ 本日（3月24日）、東京地裁で、 「君が代」裁判・第五次訴訟の第16回口頭弁論（最終）が行われました。 以下の方々が弁論しました。 �々洪景柤澄κ疹省杆郢� ��原告・Yさん（K高校勤務） �８狭陝�Iさん（前D高校勤務） �す餞�国歌強制の真の目的について・雪竹弁護士 �シ�法判断の客観的アプローチについて・白井弁護士 �Φ�立斉唱強制は憲法19条に違反する・山本弁護士 �Ш枸霧△琉鐫ν�用について・金井弁護士 �┝蠡海�的違法について・今田弁護士 ��裁判所に望むこと・澤藤弁護士 最終弁論にふさわしく、いずれも力のこもったものでした。 その中でも、特に印象深かったのは原告2人（いずれも女性）の方の陳述でした。 そこで、少し長くなりますが、以下にその全文を紹介します。 お読みください。 ＜��原告・Yさん（K高校勤務）＞ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 家庭科の教員です。2016年卒業式での処分の取り消しを求めています。 1993年に都立高校の教員になり、A高校定時制に勤めました。定時制の生徒の多くは、 中学校時代まで不登校だったり問題行動を起こしたりで、 教師や社会に対していい印象を持っていません。 真剣に向き合わないと欺瞞や嘘はすぐ見抜かれてしまいます。一日一日が真剣勝負です。 私は生徒と同じ目線で対話を繰り返すことで信頼が生まれること、 信頼関係ができれば生徒も変化していくことを学びました。 外国籍の生徒も多く、ある在日韓国人の生徒の家庭訪問をくりかえすうちに、 彼女の母親から戦中戦後の苦労話を聞きました。 生徒たちが抱えている問題の背景には戦争があることを実感しました。 侵略戦争のシンボルだった日の丸君が代は、 特にアジアの人々には強制すべきでないと確信を持ちました。 4年生の担任を受け持ったクラスには、60代のOさんがいました。 卒業前のHRでどんな卒業式にしたいかが話し合われ、日の丸君が代が話題になったときで す。 普段寡黙なOさんが怒りをあらわにしました。 「私は小学校の頃、ガキ大将だった。戦争中は休みの日にも 天皇関係の行事で学校があり、サボると教師に殴られた。 戦争が終わると黒塗りの教科書になり、教師達の言うことが180度変わった。 教師なんて信用できない。教育なんてくそ喰らえ、と思って中学卒業と同時に働きに出た が、 社会に出ると学歴の壁は厳しかった。人生のしめくくりとして高校にきました。 その卒業式に日の丸・君が代はやめてください。」 Oさんが教育に対してそんな思いでいたとは驚きでした。 時代によってコロコロ言うことが変わるなんて信用できない。 Oさんの言う通りです。Oさんに信用される教師になりたいと思いました。 10・23通達が出された時、私はT高校定時制の4年生の担任でした。職場は大混乱。 学年合同HRで卒業式の説明を行いました。 1回目のHRは、不登校や引きこもりだった「おとなしく真面目な生徒たち」だけが参加し ていました。 「教員の私には内心の自由はないけど、生徒のみんなには内心の自由があるよ。」と説明 しました。 しかし、いくら説明しても、「〇〇〇も一緒に座ってよ」と、声があがるだけでした。 「〇〇〇」は私の下の名前で、私も一緒に座って欲しいというのです。 式場で立つように言われて立たないのは勇気の要ることです。 私が座ればそれが防波堤になると思いました。 翌週2回目のHRの時は、前の週欠席していたやんちゃで派手な生徒たちの一団が加わりま した。 彼らは日の丸君が代があると「式っぽい」とか「かっこいい」と大賛成。そのとたん、 前回のHRで「〇〇〇も一緒に座って」と声をあげていた生徒達が一斉に口をつぐみました 。 彼らが怖くて自分の意見が言えないのです。気まずい雰囲気のままHRは終了しました。 口をつぐんでいた生徒の一人が寄ってきて「歌いたくない人は座ってもいいでしょ」 と念押しにきました。意見を言えなくても行動ができる生徒がいると救われた気持ちでし た。 さて、私はどうすべきか。HRで自分の意見も言えない弱い彼らを守るには 私が座るしかないと思いました。しかし、職務命令に従わなければどうなるのか。 恐ろしさは半端ではありません。悩み抜いた結果、苦渋の選択で立ちました。 すると「〇〇〇も座って」と言っていた生徒たちがうらめしそうにこちらを見ています。 そして「座ってもいいでしょ」と念押しにきた生徒だけが座りました。 彼は落ち着きなさそうに周囲をきょろきょろ見渡し、居たたまれなくなって 曲の途中からゆっくりと腰をあげ、曲の最後には立ちました。 この光景は忘れられません。立ったことを後悔しました。 私を頼ってきた生徒の信頼を完全に裏切ってしまいました。 「教師なんて信用できない。教育なんてくそ喰らえ」と言ったOさんを思い出しました。 しかし、生きていくために働かなくてはいけない。命令に従うしかない。 そう自分に言い聞かせて、君が代が流れる40秒間だけ心とからだを分裂させ、 「私はここに立っているけど私の魂はここにはない」と念じて、やり過ごしました。 しかし、いっくら自分をごまかしても、息苦しさは増すばかりでした。 もはや生徒を裏切った私は生徒と向き合う自信がありません。 担任の話があっても断っていました。 そんなある日、Ａ高校定時制の元生徒が癌で余命宣告をうけ、私に会いたがっていると知 りました。 「死ぬまでに会いたいリスト」の３番目が私だというのです。 死ぬまでに会いたい1番が彼女、2番目は幼馴染。それに続いて3番目に高校の担任。 呼ばれたことにびっくりしましたが、彼に病床で、絞り出すような声で 「高校時代が一番楽しかった。」と、お礼を言われたとき、 「この子と向き合ってよかった。今まで生徒と向き合ってよかった。本当によかった。」 と思い、 それから少しずつ自信を取り戻しました。 2013年に担任を持つことになりました。10・23通達の出た年以来10年ぶりの担任です。 今度は後悔したくない。また生徒と真摯に向き合いたい。そう思うと、もう入学式でも 卒業式でも立つことっはできませんでした。 生徒それぞれにいろいろな背景やルーツがあります。君が代の強制は生徒を苦しめていま す。 生徒を苦しめることに加担することは、教師としてできません。 どうか裁判所にはそのことに目を向けていただき、 10・23通達を違法とする判断をお願いいたします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ＜�８狭陝�Iさん（前D高校勤務）＞ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この問題がどれほど重大な人権侵害であり、 学校教育にどんな深刻な影響を与えてきたのかということについてお話しします。 私が君が代斉唱時に起立できなかったのは、国歌斉唱を処分で脅して強制するとは、 日本の民主主義は一体どうなっていくのだろうと、本当に恐ろしかったからです。 今、この強制は間違いだと声を上げなければ、我が子や生徒の未来に 取り返しのつかないことになるのではないか。 自分はやるべきことをやらなかったと後で大きな後悔をするのではないか。 娘が大きくなった時、「どうしてお母さんはそんな大事な時に 反対しなかったの」と非難されるのではないか、そう思うと恐ろしくてなりませんでした 。 また、生徒の中には起立斉唱するのがとても辛い生徒たちがいるのに、 私が立てば彼らに起立を強制する側に立ってしまう、 生徒の人権を踏みにじる力に加担してしまう、それだけはできないという思いもありまし た。 私の生徒には、外国籍の生徒、日本の占領下にあった国にルーツを持つ生徒、 沖縄に祖父母がいる生徒もいました。日の丸君が代に賛成できない思いを持つ彼らに 立って歌えと強制するなどあってはならないことです。 日本は少数派に対する想像力が低い国です。それでも2003年の10.23通達発出以前は、 私たち教員は入学式・卒業式の前に生徒に対して事前に「国旗国歌に対してはいろいろな 考えがありますから、生徒のみなさんは自分の考えに従って行動してください」 と説明することができました。 多様な意見が尊重されるのだよと生徒に伝えることができたのです。 しかし、10．23通達の発出後この説明は禁止され、加えて都教委は 「起立しない生徒がいる場合は起立を促す」と指示しました。 今や生徒に起立しない自由はありません。 立ちたくない、歌いたくない生徒たちはどんな思いで立っているのでしょう。 どうして彼らの人権を踏みにじって許されるのでしょう。 起立斉唱できないもう一つの理由は、都立高校に自由闊達な議論の場を 取り戻したいからです。 私は去年の3月末で都立高校の非常勤を辞め学校を離れましたが、 去年まで毎年2月3月は、卒業式・入学式の職務命令がいつ出されるだろう、 職員会議で何と発言しようと、いつもドキドキしていました。 「職務命令」は日頃の教育活動では耳にしない言葉であり、 教師集団の意思決定にそぐわないものなのに、 誰も命令発出者の校長に質問すらしないのです。 私が、生徒には起立斉唱を強制しないでほしい、と言わなければ、 問題に気づいてももらえないのです。 10.23通達以降の職員会議はただの伝達会となり、議論の場ではなくなりました。 最後に勤務したＤ高校では、大切な教育課程の編成についてすら教員全員で 議論することは一度もありませんでした。 生徒の進級・卒業の規定に関しても議論も採択もなく、校長の判断で決まりました。 出席不足の未履修や成績不良による単位不認定を覆す判断も、校長の一存で、 何の追加の指導もなく卒業を認めてしまいます。 私はそれでは生徒のためにならない、指導を尽してから卒業させるべきだと発言しました が、 校長からは何の答えもなく、授業担当者からも他の誰からも声は上がらず、 管理職の命令にただ唯々諾々と従うだけでした。 都教委は私たちへの処分を見せしめにしてとうとう教員の口封じの目的を 完遂したのだな、と私は理解しました。10.23通達以前の成績会議では、 教員が何時間も議論して、何が本当に生徒のためかと自由闊達に 意見を闘わせてきたことを思うと、この現実はとても受け入れられませんでした。 私は、ただ君が代を起立斉唱できなかったというだけでいろいろと 理不尽な目にあってきました。 Ｓ高校では校長に、卒業式で起立斉唱できない教員は担任を外すと言われ、 1年2年と担任してきた学年の最後の3年で、クラスの生徒たちと引き離されました。 様々な困難を抱えた生徒がいるクラスだったので、事情をよく知る私が担任として 卒業までサポートしたかったのにそれができず、生徒に本当に申し訳なかったです。 2010年度の主任教諭選考の合格は、その年度末に合格取り消しになりました。 3月の卒業式での処分以外に理由は考えられません。 主任になれなかったので、私の給与はその後頭打ちで上がらず、 私が生徒部主任になることを含め既に決まっていた新年度の人事はやり直しになり、 私は仕事上いろいろと不利な状況に置かれました。 また再処分では、8年も前の、既に処分が取り消された件について2度目の処分を受け、 いったい何を根拠にこんないじめを受けなければならないのかとやりきれない思いです。 しかし、世界情勢が緊迫し軍備増強が恐ろしい勢いで進む中、 日本が平和国家であり続け、戦後100年を無事迎えるために、 今こそ、私たちは生徒たちの人権を侵害するな、自由な議論を奪うなと、 声を挙げなければならないと思うのです。 私たちは疑問があるときに声を挙げられる若者を育てなければなりません。 裁判所におかれては、今度こそ生徒への人権侵害を食い止め、 都立学校に自由な議論の場を取り戻すために、 10.23通達は違法であると判断してください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー これらの原告の陳述を聞いていて次のように思った。 「新しい戦前」と言われるこの時代、 子どもたちの人権と未来のために、 トップダウンの危険な国家主義教育に身を挺して闘っている教師たちがここにいる、 私たちは彼らと連帯して、ともに闘っていかなければならない、と。 そもそも「主権在民」の憲法を持つ国で、 天皇主権の歌「君が代」を強制し、従わなければ処分する などというのは「戦前回帰」以外の何物でもない。 そうして再び、「日の丸・君が代」をシンボルにして 戦争をやるつもりなのだろう。 しかし、私たちはそれには引き続き反対して行く。 「君が代」強制・処分を行った者たちこそ、 いずれ、主権をもつ人民たちによって、 法に基づいて罰せられければならないだろう。 その証拠は裁判闘争の中で消し難く存在しているのである。 ********************************************************* 都教委包囲首都圏ネットワーク」のブログのアドレス http://houinet.blogspot.jp/ 千葉高教組『日の丸・君が代』対策委員会」のホームページ http://hinokimitcb.web.fc2.com/ 「ひのきみ全国ネット」のウェブサイト http://hinokimi.web.fc2.com/
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