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根津公子の都教委傍聴記(10/23)「エリート」には金をかけ「底辺」には金をかけない都教委
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●根津公子の都教委傍聴記(2025年10月23日)

「エリート」には金をかけ「底辺」には金をかけない都教委

 今日の公開議題は、議案が「来年度都立高校1年生生徒募集人員等について」、報告が「国際バカロレアコースの充実について」「都立高校の魅力向上等に係る懇談会の設置について」。非公開議題は「教職員の懲戒処分について」。

 普段の進行は議案をやり、その後報告に入るのですが、なぜか今日は報告から入りました。なぜ?今日の傍聴者は久しぶりに多くて、13人。夜間定時制高校の廃校に反対して行動している方々でした。議案を後にしたのは、この方々がいるから? この方々が傍聴していてもこれまでは、こんなことはなかったのに、と不思議に思いながら傍聴を始めました。

「国際バカロレアコースの充実について」

 「国際バカロレアコースを設けたのは、公立高校では東京のみ」と、都教委が自慢たっぷりにこれを国際高校に立ち上げたのが2015年。1学年定員25名で、これまでは1年次に高校学習指導要領の必修科目等を学び、2〜3年次にDP教育(ディプロマ・プログラム:国際的な教育プログラム)を2年間履修し、世界共通試験で24点以上(45点満点)の成績を取得すると国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が与えられる。その世界共通試験が11月実施なので、試験に不利にならないよう、1年次に学ぶ内容を12月までに完了し、1年次1月からDP教育を学ぶことにするとの報告でした。

「都立高校の魅力向上等に係る懇談会の設置について」

 不登校生徒や日本語指導が必要な生徒など、多様な背景を持つ生徒の増加に伴い教育ニーズも変化し、また、都立高校入学者選抜の応募倍率が低下傾向にある(中学生に都立高校の魅力が伝わらない)中、「より魅力ある学校づくりの検討に向け、有識者からなる懇談会を設置する」との報告でした。教授、教育長、中・高校長、会社社長など10人の委員を選出し、11月6日に第1回懇談会を開催。2か年にわたり行い、来年度に中間まとめ、再来年度に最終まとめを公表する予定とのことでした。

 教育委員からは、「スポーツを通した人づくりを」「生成AIに力を入れて」「外国の取組も紹介してほしい」などの要望が出されました。
 魅力向上? だったらまずは大幅な教員定数増でしょう。生徒の声に教員が耳を傾けることこそが大事のはず。その場を保障しない責任を都教委は感じるべきです。

「来年度都立高校1年生生徒募集人員等について」

 今年度の中学3年生が昨年より減ったために募集数・学級数をどの学校で減らすとか、どのチャレンジスクール及び昼夜間定時制高校の募集数を増やすとかの報告とともに、6校の夜間定時制高校で募集停止にするとの報告でした。都教委は倍率の低い夜間定時制高校を廃校にするが、その代替としてチャレンジスクール・昼夜間定時制高校を用意していると言います。この両校からあふれてしまうであろう生徒たちのことには沈黙したまま。

 夜間定時制高校の募集停止・廃校は都教委の方針であり、毎年、「廃校にしないで」との請願が提出されてきました。しかし、この請願に対し、都教委定例会で教育委員の誰一人発言したことはありませんでした。今回は請願が出されているとの報告もなく、議事は終了しました。

 傍聴者に退場指示が出された際に、傍聴者から「請願出しているのに、何の返答もない。どうなっているのか」と声が上がりました。退場させられてからも、傍聴の担当者に、「昨年までは定例会で『不採択』との報告があったが、今年は『不採択』とも言わない。請願を無視していいものか。私は請願を出した者だ。担当責任者を呼んでほしい」。担当責任の高等学校所管課の職員が来たけれど、「課長(と言ったと思う)は庁舎内にはいるが、いま席を外している」と。ここで私は帰ったので、これ以降はつかめていません。

 請願権は憲法16条で定められているのに、都教委はそれを保障しなかったということ。「廃校にしないで」と言う請願が出されている事実及び教育委員らが請願に対しどう対処したかも、傍聴した私たちに、定例会議事録にも隠したのですから。

 募集を停止する6校のうち、いくつかの学校のHPを閲覧したところ、桜町高校定時制のHPのトップに「‟静かにゆったりマイペース″『ホッと一息できる学校』」と、大山高校定時制のHPトップには「『入学してよかった』と実感できる学校」と書かれています。生徒たちを見ている教職員が、そう感じているということだと思います。現場の声を大事にするのが、都教委の仕事でしょうに。

 「エリート」生徒には金をふり注ぐが、「底辺」生徒には金をかけない都教委。この事実に対し、「人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもの」であるはずの教育委員たちは、どう思うのか。自己責任とでも?と思ってしまいます。


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