パビリオン建設工事未払い問題：大阪府から要望書の回答がきた

かわすみかずみ

６月２３日に万博工事未払い問題被害者の会が大阪府に提出した要望書について、同月２７日に回答がきた。被害者の会は ①府による早急な立て替え払いを行うこと
②パビリオン建設工事において無許可で参加した業者の公表と行政処分 ③府から加害企業への支払いの催促
④府下で行われる工事における労働環境のクリーン化や下請業者が安全に働けるための管理を徹底すること
⑤府建築振興課の機能を実用化すること、の５項目を府に要望した。

府の回答は
①については府は当事者同士の解決を基本とし、「建設工事紛争審査会」を案内することや、政府系金融機関による融資制度を紹介すると回答。万博パビリオン建設工事の未払いについて府による立て替えは難しいとする。
②については、これまで通りに建設業法違反の業者については処分を行なったあとに公表するとのこと。
③については、①と同様に「当事者同士による解決」を繰り返した。長時間労働や未払いなどは府の労働センターや労働基準監督署に相談するよう促している。
④については、入札時に建設業登録があるかどうか確認していることや、施工体制台帳を受注者が発注者に提出することを義務付けていることを強調し、府として適正に行なっていると答えた。
⑤については、府建築振興課と大阪弁護士会や建築の専門家、金融機関が連携して相談に当たっていることを強調する。経営安定サポート資金や府の制度融資、「チャレンジ応援資金」を創設したことなどが書かれている。但書きには「府制度融資を受けるには金融機関、大阪信用保証協会の審査が必要です」と書かれていた。府外の業者には、日本政策金融公庫や所在する自治体の制度融資窓口を案内するという。

緊急性が理解されず

　早急な立て替えが必要なのは、中小の建設業者は大手と違い、資本金が小さくそもそもの企業の体力が小さいからだ。万博工事の未払いによる被害企業はすべて中小の業者で、ひとり親方や従業員への支払いが滞っている。被害者の会の代表は、「５００人以上の職人や作業者が生活苦におちいっています。家族や関係者を含めれば１０００人以上になります」という。万博倒産、万博自殺が起これば、建設業界全体に影響が及ぶ。中国パビリオンの未払い被害者は、「ロンドンオリンピックでは、政府がお金の流れをすべて監視し、滞らないようにしていました。ドバイでは、政府が未払金をすべて立て替えたと聞いています。日本政府はなぜできないのでしょうか?」と語る。大阪・関西万博では、アンゴラ館の元請けであるNOEジャパン社が建設業登録のないまま元請けになっている。NOE（元請け）、吉拓（1次下請け）と一六八建設（4次下請け）の3社が建設業登録のないまま工事に参加していた。NOEジャパンは上海万博や世界規模の見本市などを手がけた企業だが、イベント会社で建設業者ではない。
府は今後、アンゴラ館の問題について、無許可でパビリオン建設工事に参加した企業の行政処分を行うと公表した。だが、パビリオン建設工事全体で、どこまで行政処分を徹底できるのかは、不透明だ。
府の建築振興課に、３月に相談した未払い被害者は、万博協会の窓口を紹介されたという。万博協会の相談窓口はメールのみでの受け付けだった。メールで問い合わせたところ、数週間後に「受け付けました」というメールがあり、それきりだったと証言する。金融機関や大阪弁護士会と連携していると府は言うが、今回の対応は違っている。未払い被害者らは、現在も金策に走り回りながら、行政への交渉や会見に参加している。しかし、金融機関はどこも、返済能力のない会社に資金提供はしない。
国、万博協会、大阪府市が未払い企業や建設国に働きかけなければ解決しない問題であることは明らかなのに、「民民の問題」と片付けるのはおかしいのではないか?
未払いによって契約が終了していないパビリオンを平然と開館させている万博協会のあり方にも、疑問がある。