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【解説】今年のメーデーは全米1000の都市で集会、デモ、ストライキなど反トランプ、反マスクの行動が取り組まれた。いうまでもなくメーデーはアメリカ発祥の労働者の日であるが、アメリカでは9月のレイバーデーが労働者の日として祝われてきており、5月1日には大きな行事は取り組まれてこなかった。しかし、近年ではメーデーを復活しようという動きが広まっている。2006年には資格外移民労働者のゼネラル・ストライキや支援活動が全国で取り組まれ、それ以降一部の労働組合でもメーデー復活の動きが続いていた。 今年のメーデーはトランプ二期政権による移民労働者、連邦公務員労働者への攻撃に抗議する全国統一行動として呼び掛けられていた。その中でロッキード・マーティン社やカリフォルニア大学などで6万人の労働者がストライキを敢行したことが注目される。全米自動車労組UAWのショーン・フェイン会長は3年後のメーデーにゼネラル・ストライキを打つことを全労組に呼びかけ、そのために労働協約の期限を2028年4月30日に統一することを呼び掛けている。今年のメーデー・ストライキはこの壮大な取り組みの前哨戦と位置づけられる。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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全米1000の都市でメーデー行動

 2025年5月2日 ルイス・フェリス・レオン(レイバーノーツ・スタッフ・オルグ)


*全米塗装工連合組合IUPAT組合員など6000人が5月1日にニューヨーク市のメーデー集会に結集した

 アメリカ全国各地で数十万人が5月1日の国際労働者デーに集会を開き、市民的不服従行動に参加し、ストライキも実施して、全世界の労働者と連帯した。May Day Strong連合(注1)の呼びかけに応えて、5月3日までに50州の1,000を超える市や町で1,300件を越える行動が取り組まれた。共通のスローガンは「労働者こそが億万長者よりも優先されるべき」であった。

 フィラデルフィア市では、5,000 人が市庁舎でバーニー・サンダース上院議員とともに集会を行い、その後、主要高速道路の入口を封鎖する市民的不服従行動に参加した。その結果、UNITE HERE労組ローカル 274 のホテル労働者、チームスターズ労組ローカル 623などの組合員や地域の支援者たちが逮捕された。

 ジョージア州アトランタ市では数百人が集会に参加し、その一人、ワッフルハウスの従業員のケイティ・ギードは「特に南部では、今こそ労働組合を結成すべき時だと実感しました」と語った。集会参加者たちはリバティ広場からデモ行進を開始し、労働安瀬゛ン衛生局OSHA 事務所、関税・移民執行局ICE 事務所を経て、市庁舎まで歩いた。「状況はどんどん悪化しているからです。弱者は最下層に取り残され、億万長者は兆万長者になって行っています。もう、そんな状況にはうんざりです」と彼女は話す。

危機に瀕する医療

 カリフォルニア州では、カリフォルニア大学全体で 6 万人近くの労働者がストライキを行った。UCサンフランシスコ校の神経変性疾患研究所で、パーキンソン病とアルツハイマー病の新薬の開発に携わる研究員であるチェイ・ディーンはこう説明する。「私は実はベテランと見なされています。離職率が高いため、私の研究室や大学のほとんどの研究室では7年間も勤務すれば非常に長いと見なされています。研究チーム全体が入れ替わってしまうと、新薬開発プロセスに時間がかかることを意味します。研究室の人員を確保できないため、アルツハイマー病とパーキンソン病の明日の治療法の開発が停滞しています。」

 カリフォルニア大学デービス校医療センターの臨床ソーシャルワーカー、ソーニャ・モギルナーは、カリフォルニア州は「不測の事態に備えて 280 億ドルの予備費を用意しています」と述べる。「今が非常事態ではないとしたら、何が非常事態なのか分かりません」。

 ルイジアナ州ニューオーリンズ市では、何百人もの看護師たちが新しい労働協約を求めてストライキを行った。看護師たちは組合を結成して以来、ますます強固な団結を築き上げているが、ニューオーリンズの大学医療センターは組合を潰し、その決意を破壊しようとしていると看護師のヘイリー・デュプレは述べている。職場での暴力、特に看護師への攻撃やトイレに放置された銃器の問題は、大きな課題となっている。職場の暴力に対処するためには、病院が看護師の採用と定着を強化する必要があると、語る。

ロッキード・マーティンでのストライキ

 フロリダ州とコロラド州にある米国最大の防衛関連企業、ロッキード・マーティン社では全米自動車労組(UAW)の 1,000 人の組合員がストライキを行った。

 UAWのショーン・フェイン会長は、雑誌『The Nation』で「メーデーは単なるお祭り、集会、デモ行進ではなかった」と述べている。「メーデーはストライキの日でもあった。職場やそれ以外での経済的な行動によって、アメリカの企業を監視し、労働者のストライキ力を維持するための日だった」と。テネシー州では、最初の労働協約を求めて闘争を続けるフォルクスワーゲン労働者を支援する集会に、数百人が参加した。

 シカゴでは、25,000 人が集まり、社会福祉や連邦プログラムへの攻撃、移民やパレスチナ活動家の違法な拘留、連邦職員の解雇など、トランプ政権による攻撃を非難した。イスラエルの虐殺への資金援助の停止、公立学校への資金援助の増額、環境正義の実現を求めた。「全国の教員は、生徒の学習環境と労働条件、そして全員の利益となる学校施設の改善を求める労働協約を要求しています」と、アメリカ教員連盟AFTの気候と環境正義委員会委員長でシカゴ教員組合の気候正義委員会メンバーであるアイシャ・カズィ=ラムパートは訴えた。山火事、ハリケーン、熱波がますます頻発化することを考えるとこの点は特に重要である。

立ち上がる移民

 ミズーリ州セントルイス市では、新たな反トランプ組織「50501」がゲートウェイ・アーチ国立公園でメーデー集会を開催し、トランプ政権に抗議した。UAWローカル2250の組合員であるシャナ・ショーは、憲法上の適正手続きの権利を守るために同僚と共に集会に参加した。「アメリカ人が立ち上がり、目覚めるほど、米国はより良くなるでしょう」と彼女は語る。「憲法は守られなくなりました。議会が無力に立ち尽くしている内に、移民が強制送還され消えていっています。人々がただ消えてしまったのです。今声を上げなければ、声を上げる人は誰もいなくなるでしょう」

 アイオワシティでは、建設作業員の作業服を着た600人の移民労働者とカトリックの司祭、地域支援者、市議たちが「私たちはここにいる: 移民の尊厳と正義のための行進」の旗印の下、市内の街並みをデモ行進して、公開集会に向かった。

 ヤディラ・カスティージョは集まった参加者に、暴力から逃れてホンジュラスから来たと語った。「私は3人の子供と夫婦の生活のすべてをバックパック一つに詰め込んで祖国を離れてきました」とカスティージョはスペイン語で述べた。「私たちが望むのは、安全なコミュニティで働き、子供を育てることだけです」

 コロンビア出身の移民で、宗教団体「私の声を聴け」の活動家であるアレハンドラ・エスコバルは、トランプ政権の移民攻撃について語った。「移民はMAGA政治を進めるためのスケープゴートにされています。しかし、多くの人は移民のため、あるいは自分たちのためにも立場を表明することを恐れています」とスペイン語で述べた。「私はこの国で過去15年間暮らしてきました。つまり、過去15年間、あなたたちと共にこの国を築いてきたのです。」

マスクとトランプを阻止するための団結

 ボルティモア教員組合、ボルティモア全米黒人地位向上協会NAACP、およびアメリカ州・郡・自治体従業員組合連合AFSCMEは、ボルティモア市中心部のマクケルディン広場で集会を開催した。ボルティモア市があるメリーランド州には16万人の連邦政府職員がおり、州全体の雇用全体の6%を占めている。

 ニューヨーク市ではユニオン・スクエアとフォリー・スクエアで2つの集会が開催され、合計6,000人が集まった。最大の参加団体には、移民権利団体であるワーカーズ・ジャスティス・プロジェクト、メイク・ザ・ロード・NY、デシス・ライジング・アップ・アンド・ムービングなどであり、労働組合員の教師、舞台スタッフ、建設労働者、塗装工、看護師、配達員、小売業従事者、通信産業労働者、ホテル従業員、連邦政府職員なども参加していた。

 全米エンジニア連盟IFPTE(注2)ローカル98の支部長であるクリス・ドルスは一期目のトランプ政権の時に連邦政府で働いていて、2017年の反トランプ抵抗運動が衰えていくのを見た当時のことを数千人の集会参加者に語った。「ドナルド・トランプに抵抗して人種差別、外国人嫌悪、トランスジェンダー嫌悪と闘う人たちの運動に労働組合や連邦公務員が加わればいいのに、と当時考えたことを思い出します。そうすればトランプやマスクを阻止することが出来、二度と復活できなくなるだろうと思ったのです。今トランプとマスクは復活したので、私たちにもやり直しするチャンスはあります。」

注1)メーデーでの共同行動のために200を超える労働組合、市民団体、人権団体などが集まった実行委員会
注2)IFPTE労組は技術専門職の労働組合だが、国防省など一部の連邦政府公務員も組織している。


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