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太田昌国のコラム : 我ら世に在るいま、襲い来る「クソのような」情報の洪水 | ||||||
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我ら世に在るいま、襲い来る「クソのような」情報の洪水移民・難民問題をテーマにしているライターの望月雄大氏が、朝日新聞デジタル版Re : Ron 2025年4月9日に寄せた「米大学で相次ぐ留学生たちの拘束 情報「洪水」戦略に溺れないために」という文章で紹介しているスティーブン・バノン(第一期トランプ政権の首席戦略官)の言葉を知って、そう思った。引用する。*写真=トランプとスティーブン・バノン(報道より) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は、1990年前後からのこの30年有余の間に、現在の日本の言論状況は「クソでいっぱいになっている」と何度か思った。バノンが上のように語った30年近く前のことである。そして、バノンはそれを画策した側の人間であり、私はそうなった言論・情報の状況を忌まわしいと思った側の人間だという違いは、当然にも、ある。だが、その力を認識しているという点では、対極的な立場ながら、重なり合う。私がそれを思ったひとつ目は、その当時の雑誌『諸君!』(文藝春秋)と『正論』(産経新聞社)に溢れかえる右翼論者による「クソのような」駄文を読んだ時だ。1990年前後といえば、ソ連圏社会主義体制の無惨な崩壊が相次いだ時期だ。第二次世界大戦後の最大矛盾であった米ソ対立構造が消えた。すると、それに覆い隠されてきたさまざまな矛盾が噴き出てきた。最も深刻な問題は、あの戦争の被害国、とりわけ民衆から見れば、戦争の後始末が終わっていないことだった。東アジアで見れば、加害国・日本は新憲法9条の下で軍事費を極小に抑え、戦後の「平和と民主主義」を謳歌しつつ、奇跡の戦後復興と高度経済成長の道を早くから歩んでいた。他方、同じ時期のアジアの被害国の多くは、貧困・内戦・独裁・戦争・海外派兵……などの渦中に置かれていた。1990年頃までの戦後45年とは、加害国と被害国の間に、これほどまでに際立った差異をもたらしていた歳月だったのだ。「慰安婦」、徴用工、強制連行、虐殺などの植民地支配と侵略戦争に由来する未決の諸課題が、この時期になって、多くは国家によってではなく被害を受けた個人ないしは集団が日本国を訴える裁判として提起されたのは、それゆえだった。 日本の右翼雑誌は、これにいきり立った。「悪魔の」ソ連社会主義が消えたと思ったら、左翼は今度は植民地支配と戦争を持ち出してきて、延命を図っている――日本の左翼と、「いつまでも反日的な姿勢を改めない」アジアの人びとに対する、歴史性・論理性・倫理性を欠いた罵詈雑言が「洪水のように」右翼雑誌に溢れた。彼らからすれば、バノンが言うように、こうして大量の情報を垂れ流すことに大きな意味を見出していたのだろう。 当時わたしは市民運動の機関紙誌に常設コラム欄をいくつか持っていた。上の言論状況を座視すべきではないと考えた私は、一時期、これらの「クソのような」極右言論に対する批判・反論を試みた。虚しさに、心底、疲れた。 2つ目は、この「洪水」が政治面に現われた時だ。小泉純一郎が首相になった2000年代初頭と、小泉に後継指名された安倍晋三が首相の時代である(第一次は2006年から一年間、第二次以降は2012年からおよそ8年間)。ふたりは饒舌だった。国会で支離滅裂な意味不明の答弁を繰り返しても、何も恥じるところがなかった。むしろ得意そうに振る舞った。安倍の場合はとりわけ、森友・加計・重大案件の閣議決定乱発・お気に入りの高検検事長の定年延長画策・桜を見る会――枚挙に暇がないほどに次々と「クソのような不祥事」が明るみに出た。この立て続けの横暴な振る舞いと言動も、また、私たちを疲れさせた。他方で、安倍が本質的に内包していた「極右性」「排外主義」に期待を寄せるいわゆる岩盤支持層は、統一教会の信者も含めてヨリ強固に安倍自民党を支えた。 第二次トランプ政権は、バノンの指針を日々実践している。相互関税に関しても、4月5日にすべての国・地域に対して10%の一律関税を発動し、同9日未明には米国の貿易赤字が大きい約60カ国・地域を対象に最大50%の相互関税を発動したかと思えば、半日後には、報復関税を発動せずに米国との交渉を求める相手国には相互関税を90日間停止した。政権内でトランプ以外の誰と誰とがどこまで知っていたのかを疑わせるに十分なほどに、事態は瞬時に刻々と変化してゆく。トランプが「90日間停止」を発表する4時間前、すなわち9日のニューヨークの株式市場が開いて7分後に、トランプ自らが「絶好の買い時だ!!!」とSNSに投稿していたという。4時間後の相互関税停止決定で、当然にも、ニューヨーク株式市場は急騰した。きのうの断言も、今日か明日には180度変わる。大国ゆえの影響力で、それができることの力を誇示して、トランプはご満悦のようだ。かくして、世界は米国が仕掛けた相互関税をめぐる情報洪水に翻弄されるばかりだ。 トランプの意を受けての歴史の改竄も、日々行なわれている。日本軍との激戦に勝利した米軍兵士たち6人が硫黄島の摺鉢山に星条旗を立てた、あの有名な写真が米国防総省のサイトから一時削除されたという。6人の兵士の一番後ろにいたのがアイラ・ヘイズという名の先住民(ピマ民族)兵士で、写真には「米先住民が果たしてきた貢献と犠牲を振り返るとき」というキャプションが付されていた。トランプは、歴史的に抑圧されてきた先住民や黒人の権利回復に向けたいっさいの動きや言動を嫌う。「多様性・平等・包括性」を重視して人種差別の歴史に向き合うことが社会の分断を深める、と信じているからだ。 Created by staff01. Last modified on 2025-04-11 10:33:52 Copyright: Default |