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賛同募集中!声明「戦争と植民地支配で傷つけられた人間の尊厳の回復を求めて」
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情報提供 : 矢野秀喜

今年は、戦後(敗戦)80年、日韓条約60年の節目の年です。日韓は60年前に国交を正常化しましたが、いまだに過去の植民地支配時代の問題−強制連行・強制労働、「慰安婦」等−については、解決しないまま問題を引きずっています。被害者は人権侵害を受けながら、その回復がなされないままにいます。このような状況は克服されねばなりません。

ということで、強制動員問題解決と過去清算のための共同行動は、弁護士、研究者、小説家など23名の方がたに連名で、声明「戦争と植民地支配で傷つけられた人間の尊厳の回復を求めて〜 戦後80年・日韓基本条約締結から60年を迎えて〜」を出していただきました。

今後は、この声明への賛同人を募り、広げていくことによって、強制動員問題の解決、被害者の人権、尊厳の回復が必要であるとの世論を形成していきたいと考えています。

声明への賛同フォーム
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声明 戦争と植民地支配で傷つけられた人間の尊厳の回復を求めて ~ 戦後 80 年・日韓基本条約締結から 60 年を迎えて~

アジア・太平洋戦争が終わり今年で80年を迎えます。

日本は柳条湖事件(1931 年)以降、中国侵略からアジア・太平洋地域へと戦争を拡大し、その結果、 中国で 1000 万人以上、インドネシア、ベトナム、インド、フィリピン、朝鮮等アジア・太平洋諸国では 併せて約 900 万人以上といわれるほど多くの人々を犠牲にしました。他方、大規模空襲、沖縄戦、広島・ 長崎の原爆投下を受け、国内外で日本人も 310 万人(軍人・軍属 230 万人、民間人 80 万人)が亡くなり ました。「 帝国国防方針」で「 国家戦略」を「 満州、大韓帝国に扶植した利権と東南アジア・中国に拡張 しつつある民力の発展の擁護・拡張」と定め、日清・日露戦争からアジア・太平洋戦争へと戦争を重ねて きたことが、このような惨禍を招きました。このことは、「 日本を守る」と言いつつ軍備を増強し軍需産 業を進展させることが、悲惨な結果を生むことを私たちに示しているのではないでしょうか。

今年は日韓基本条約締結(1965年)から60年を迎えます。

日本は、1910 年韓国併合条約により朝鮮を植民地とし、日本の統治下に置きました。そこでは、行政・ 立法などを分離せず、朝鮮総督府が軍隊や警察を使って統治するという専制政治を行いました。その下で、 土地や米などの生産物を奪い、朝鮮人が自決権に基づき独立を求めることを抑圧し、日本への同化を強制 しつつ、参政権をはじめとする政治的な権利を十分に与えないなどあらゆる分野で朝鮮人を差別しまし た。戦時中には、「総力戦」遂行のため、「帝国臣民」として戦争に動員しました。日本の朝鮮に対する植民地支配は、朝鮮の人々の尊厳を傷つけたのです。

植民地支配を受けた朝鮮の人々の尊厳が傷つけられたことは、重大な人権侵害です。本来、日本は終戦後に朝鮮の人々の尊厳を回復すべきでした。ところが、1965 年の日韓基本条約は、韓国併合条約がもはや無効である」と確認したにとどまりました。日本は植民地支配の不法を認めず、反省、謝罪も表明し ませんでした。また、同条約では、韓国政府を朝鮮半島の「唯一の合法政府」と規定し南北分断に加担することになりました。その後も、朝鮮の人々の尊厳の回復や差別意識の払拭が十分にされずにその影響が今日にまで及び、新たな差別が生じています。また、日本はいまだに朝鮮民主主義人民共和国とは国交を結んでいません。これらの事実は、日本が朝鮮植民地支配の過去に向き合わず、それを克服しきれてい ないことを示しているのではないでしょうか。

戦争及び植民地支配で生じた人権問題の象徴のひとつが朝鮮人の強制連行・強制労働です。

日本の植民地支配の下、朝鮮の人々は、甘言で釣られたり騙されたりして、自分の意に反して日本企業 へ連行され(強制連行)、厳しい監視の下、長時間働かされ(強制労働)、命を失う者もいました。朝鮮の 人々は、奴隷のように扱われ、生命、自由及び幸福追求や、民族としての権利が侵され、人間の尊厳が奪 われるという重大な人権侵害を受けました。それに対して日本企業は人権を回復すべき責任を負います。

また、強制連行・強制労働は、戦争による軍需産業での人手不足を補うために日本政府が立てた労務動 員計画及び国家総動員法・国民徴用令などに拠り行われたのですから、当然日本政府に責任があります。 人権を尊重し擁護すべき責任を負う日本政府は、自ら人権を回復するとともに、日本企業に対して、人権回復を働きかけるべきです。

日本政府や日本企業は人権回復のため何をすべきでしょうか。

日本政府及び日本企業が責任を果たすためには、被害者の要求に誠実に向き合うことが大切です。

被害者らは、人権侵害の事実と責任を認め、謝罪し、謝罪の証として賠償し、再発防止のため必要な措 置を求めています。それを実現するために、日韓両国の裁判所に対し、日本企業を被告として、不法行為に基づく損害賠償の訴えを提訴した被害者もいました。裁判は今も続き、たたかいは親から子へと引き 継がれています。

この訴えに対し、韓国の裁判所は、強制連行・強制労働の事実を認めて違法と判断し、日本企業に対し て賠償金の支払いを命じました。ところが、日本企業は賠償金の支払いを拒否しています。このような対 応は、法の支配の理念や、企業は人権尊重を確保すべきであるという国連の「 ビジネスと人権の指導原則」 に反しているのではないでしょうか。

他方、日本の裁判所は、日韓請求権協定により、「裁判上訴求する権能」(裁判所に訴えを求める権能) を失うと判断し、被害者の請求を棄却しました。しかしここで注目すべきは、日本の裁判所も、日本企業 の人権侵害行為といえる事実と責任の発生を認めたことです。人権尊重を確保すべき責任を負う日本企業 は、日韓両国の裁判所がともに認めた人権侵害行為の事実と責任を自ら認めて、自発的にその責任を果たすことが求められています。

この点、中国人の強制連行・強制労働事件について、日本の最高裁判所は、裁判上請求できないが請求 権は消滅していないとし、自主的に企業が問題を解決するよう附言しました。日本企業はこれを受けて、 被害者との和解に基づき加害事実を認め、謝罪し、謝罪の証として償い金を支払い、記憶継承に必要な措 置を行い、侵害された被害者の人権回復を図りました。これは一つの解決方法として参考になるのではないでしょうか。

なお、韓国国内では、強制連行・強制労働の被害者らに対して財団から金員が支払われていますが、それが支払いを拒絶している日本企業の賠償金支払債務への充当といえるのか疑問です。

平和を守り人権が尊重される社会を築くために今何が求められているのでしょうか

今日、朝鮮人の強制連行・強制労働(徴用工)問題は、日韓の国家間の問題とされています。しかし、この問題の本質は、一人ひとりの人間(個人)の尊厳を回復するという人権問題であり、戦争準備・遂行 の過程で生じた平和に関わる問題でもあります。この平和と人権に関わる強制連行・強制労働問題に対して、80 年以上の長きにわたり、日本政府や日本企業が、被害者に対して人権侵害の事実と責任を認めて おらず、謝罪や賠償をしていないことは極めて深刻です。

「台湾有事」「北朝鮮脅威」などが煽られて軍備が増強され、今も朝鮮人などへの差別的言動、ヘイト スピーチがあとを絶ちません。ふたたび過ちを繰り返さないためにも、先の戦争及び植民地支配下での 人権侵害、とりわけ強制連行・強制労働問題に誠実に向き合い、傷つけられた人間の尊厳などの回復を通して国境を越えて市民間の信頼関係を構築することが求められているのではないでしょうか。

私たちは、平和が守られ、人間の尊厳や人権が尊重される社会を築くために、戦後 80 年以上もの長きにわたり問われ続けている朝鮮人の強制連行・強制労働問題の解決をめざします。

2025年3月13日

〈声明呼びかけ人〉

青波 杏(小説家)、足立 修一(弁護士)、阿部 浩己(明治学院大学教授)、殷 勇基(弁護士)、 鵜飼哲(一橋大学名誉教授)、内田雅敏(弁護士)、太田修(同志社大学教授)、大森典子(弁護士)、岡 真理(京都大学名誉教授)、勝村 誠(ウトロ平和祈念館館長)、加藤 直樹(ノンフィクショ ン作家)、川上詩朗(弁護士)、在間秀和(弁護士)、申惠丰(青学学院大学教授)、高橋哲哉(東京大学誉教教授)、高村 薫(小説家)、張 界満(弁護士)、崔 善愛(ピアニスト・『週刊金曜日』編集委員)、外村 大(東京大学教授)、中沢 けい(小説家・法政大学教授)、中村 一成(ジャーナリスト)、 平岡 敬(元広島市長)、吉澤 文寿(新潟国際情報大学教授)


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