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【解説】昨年末にこれまでで最大のアマゾン労働者のストライキが行われた。4つの州の10施設の数千人の労働者たちが12月19日から24日までのストを敢行した。その中心は運転手たちで、アマゾン社には直接雇用されておらず、下請け業者に雇用されている。アマゾン社が雇用責任を認め、チームスターズ労組への加入を承認することがストライキの中心的な要求であった。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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アマゾンで最大のストライキ

2024年12月19日
ナターシャ・エレナ・ウルマン    

*ニューヨーク州クイーンズのDBK4配送ステーションでストライキを支持して配送を止めて逮捕された運転手

 サンフランシスコ、シカゴ、アトランタ、南カリフォルニア、ニューヨークの都市圏にある7つの施設で、アマゾンの倉庫労働者と配送ドライバーがストライキに突入した。スタテン島のJFK8倉庫の組合員もストライキを承認しており、間もなく追随する可能性がある。

 これら5カ所の配送ステーションと2カ所の倉庫の労働者は、すでに過半数の支持を示し、組合承認を要求している。チームスターズ労組はアマゾンに最後通牒を突きつけた。12月15日までに組合を承認し、交渉に応じなければストライキに直面するというものだ。しかし、アマゾンは動かない。

 「アマゾンは賃上げやより安全な労働条件について我々と交渉する雇用主としての責任を回避している」と、イリノイ州スコーキーのDIL7配送ステーションの配送ドライバーのライリー・ホルツワースは言う。

 ニューヨーク州クイーンズのDBK4配送ステーションでは、警官が群がり、ストライキを支持して運転を止めたアマゾンのドライバーを逮捕した。JFK8倉庫でのストライキの可能性を見越して、警察は事前に施設のそばで警備していた。それにもかかわらず、6時間もの間、ピケット参加者は施設からの交通の流れを小刻みに遅らせ、2分に1台のトラックしか通さなかった。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、チームスターズ労組はアマゾンの組織化を最優先課題としており、同組合はこのプロジェクトに800万ドル、さらに3億ドルのストライキ資金を拠出している。

寝ることしか考えられない

 ストライキのタイミングは戦略的だ。「ピークシーズン」と呼ばれるホリデーシーズン前後は荷物の量が急増するため、アマゾンが混乱に対処するのは容易なことではない。2023年のホリデーシーズンには、その年の全世界のオンライン注文の29%を占めた。

 需要の急増に対応するため、多くの労働者は育児やその他の義務を無視して強制的な時間外労働を強いられている。

 JFK8倉庫で5年間働いている梱包担当、ケン・コーツは言った。
「休日には家族と時間を過ごすことを考え、家族とのつながりを考える。そしてピーク時には、寝ることしか考えられなくなる」。

 需要増に対応するため、同社は全国で25万人の季節労働者を雇用している。季節労働者も同じストレスに直面し、組合の組織化を支持することが多いが、季節労働者の雇用はストライキの力を弱める可能性もある。

ピークシーズン、負傷シーズン

 季節雇用者に対するつけ刃の研修は、すべての人の安全性を低下させる結果を生んでいる。

 「この1カ月だけでも、仕事のやり方を知らない新規雇用者が6人はいた」とコーツは言う。「その新規雇用者のせいではなく、研修担当が十分な時間を与えなかったせいだ。」例えば、リビン業務(ベルトコンベアから指定された棚に商品を移動させ、梱包担当者が梱包して出荷する業務)を任された新規雇用は、意図せず商品を棚の向こう側に押しやりすぎてしまい、反対側から落下して梱包担当者にぶつかることがあるとコーツ氏は言う。

 アマゾンのピークシーズンは、労働者の負傷のピークを意味する。連邦上院の厚生・教育・労働・年金委員会が7月に発表した中間報告によると、プライムデーとホリデーシーズンには負傷率が急上昇する。

 報告書によると、2019年のプライムデーの週、アマゾンの記録可能な負傷率は、労働者100人当たり年間10人以上に相当し、これは産業平均の2倍以上である。同期間中、アマゾンの総災害発生率(労働安全衛生局(OSHA)に報告する必要のないものも含む)は、フルタイム労働者100人当たりほぼ45件に相当する。つまり、プライムデーのペースを維持すれば、1年間で半数近くの労働者が負傷することになる。

 「私がアマゾンで働いてきた中で、荷物の取り扱い数が記録を更新しなかった年はない」とコーツは言う。

合法な仕事とは思えない

 繁忙期以外でも、仕事は過酷だ。アマゾンの容赦ない生産性ノルマを安全に達成することはほぼ不可能であり、労働者は時給18ドルと背中や膝を引き換えにすることを余儀なくされている。

 同上院委員会からの新たな報告書によると、アマゾンの負傷率は、「倉庫産業全体の平均労災発生率に大きな影響を与え、増加し続けている 」という。

 アマゾンは商品を輸送し、身体を壊す企業である。そして、このレベルの搾取があらゆる場面で奨励されているので、当然の結果と言える。労災発生報告は簡単に回避できる。同社は現場の医療施設を使って、労働者が仕事中に負った負傷の本当の数を隠したり、不適切な技術を使った労働者に責任を転嫁したりしているようだ。

 「仕事中に何度怪我をしたことか。職場のトイレには鏡があって、『あなたの安全に最も責任を負っているのはあなたです 』と書いてある。それを見るたびに腹が立つ。それは会社が責任を転嫁しているだけだ」。

 報告された事例に対するOSHAの罰則は、重大な違反1件につき約16,000ドルが上限だと報告書は指摘する。1分間に7万ドルの利益を上げている企業にとって、それはビジネスを行うためのコストでしかない。

「合法な仕事とは思えない」とホルツワースは言う。「私はこの倉庫業界でいろいろな仕事をしてきたが、アマゾンが一番やりたい放題だと感じる」。

グローバルな戦い

 サプライチェーンの要衝で組織化された労働者たちは、シカゴ地域の配送ステーション労働者の賃上げや、サンバーナーディーノとクイーンズで停職中の航空ハブ労働者の復職を勝ち取るなど、アマゾンからいくつかの譲歩を引き出すことに成功した。

 しかし、アマゾンはその脆弱性を軽減するために多大な投資を行ってきた。倉庫ネットワークの拡大により、同社は自社のネットワーク内で注文を迂回させることができるようになり、ストライキや混乱が発生した場合に特定の場所への依存を減らすことができる。天秤を傾けるのに十分なパワーを構築するには、グローバル・サプライチェーン全体を組織化する必要がある。

 アマゾンは世界中で組織化に激しく反対しており、組合認証選挙を遅らせたり、従業員を反組合集会に強制的に参加させたり、組合選挙の前に大量採用を行って票を薄めるなど、反組合的な戦術に傾いている。

 2022年から2023年にかけて、アマゾンは「組合回避」コンサルタントに1,700万ドル以上を費やした。また、他の企業が管理職を教育するためにこうした詐欺師を招き入れることで満足しているのに対し、アマゾンは時には中間管理職の替わりに、コンサルタントをマネージャーとして直接雇用している。

説明責任を果たせ

 配送ドライバーの場合、アマゾンが責任を回避できるように、ドライバーは配送サービス・パートナー(DSP)と呼ばれる請負業社で働いている。

 昨年、カリフォルニア州にあるバトルテスト・ストラテジーズというDSPでドライバーが組合を結成した際、アマゾンは契約を打ち切り、84人のドライバーを事実上解雇した。同社はアマゾンとしか契約しておらず、契約打ち切りの後は営業を停止している。

 今年、アマゾンはイリノイ州のDSP、フォー・スター・エクスプレス・デリバリーでドライバーが組織化された際にも、同じ行為を行った。

 アマゾンは、ドライバーはDSPに雇用されているため、労働者と交渉する義務はないと主張している。しかしドライバーたちは、アマゾンは共同使用者の法的基準を満たしていると主張し、嘘を暴いている。 「私たちはアマゾンのブランドのバンを運転し、アマゾンの制服を着ている」と、南カリフォルニアにあるアマゾンのDAX5施設の配送ドライバー、ルビー・ウィギンズは言った。「説明責任を果たせ」。

UPSの労働条件をここで実現できる 安全性は、中心的な関心事であり、組織化の中心課題である。配達用のバンはぎゅうぎゅう詰めで、座席の後ろや隙間に荷物を詰め込まざるを得ないドライバーもいる。同じDSPで働くルビーの夫、アンドリュー・ウィギンズは言う。「多くのドライバーはダッシュボードの上に荷物を置く。とても危険ですが、みんな仕方なくやっている」。 ルビーとアンドリューは、UPSの配達ドライバーと定期的に、強力な組合協約の利点について話している。「UPSの話を聞くと、驚くばかりだ。整備士が常駐し、現場で車両を見ることができる。アマゾンではそんなことはできない。UPSはアマゾンよりも収益性が低いのに、ドライバーのためにそのようなことができるのを見ると、アマゾンに 『同じように扱ってくれ』と言いたくなる」。

 「アマゾンでは、仕事をこなすためには、正確なステップの完全なシステムを頭の中で考えなければならない」とホルツワースは言う。「荷物をこのように整理し、止まったらすぐにブレーキをかけ、キーを抜き、シートベルトを外す。もしアマゾンがこのようなビジネスモデルをとることができるのなら、他の企業の将来の労働条件はどうなるのだろう?」ルビー・ウィギンズは言った。「私たちには姪や甥、私には弟がいる。数年後、彼らの労働力はどうなっているのだろう?なぜUPSで働かないの、と良く聞かれる。私たちはすでにドライバーなのだ。UPSの労働条件をここで実現できる。ここで労働条件を改善し始めることができる」。


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