〔週刊 本の発見〕『食べものから学ぶ世界史 人も自然の壊さない経済とは?』 | |||||||
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毎木曜掲載・第358回(2024/8/22) いつかきっと世界のシステムを変えることができる岩波ジュニア新書『食べものから学ぶ世界史 人も自然の壊さない経済とは?』平賀緑 著、902円)評者:志水博子ことの発端は、某LINEグループで「資本主義は今後どうなるのかね〜 まぁ、私は生きていないだろうけれど(笑)」とつぶやいたことだった。それに対して私よりずっと若い30代後半のSはこう返して来た。「私見ですけど、資本主義は潰れないと思いますよ、人工的につくったものではないので」と。 「でも、長い人類の歴史を見た時、永遠に続く経済システムってないような。まぁ、資本主義が倒れる前に、地球そのものが潰れるかもしれないけれどね。」と私。「そりゃ古代レベルまで後退して市場(物と金のやり取り)がなくなれば資本主義は消滅するでしょうが、ある程度の規模の人間集団と富が存在すれば自動的に創起してくる類の存在が資本主義と思いますけどね」と彼。そこにもう1人が参戦、「Sさんの仰るとおり、資本主義は今後もなくなることなくずっと続くと思うので、それを楽しむしかなさそうですね。」と。 そうなのだろうか。資本主義は不滅という彼らに違和感を感じながら、資本主義の行方を巡ってのたわいもない会話はそこで終わった。 それからひと月ほど経った頃、「食べものから世界を考える〜植民地・戦争〜」と題した学習会で、案内役が参考資料として用いた書籍の中にあったのが、平賀緑著の2冊の岩波ジュニア新書だった。 2021年12月発刊の『食べものから学ぶ世界史 人も自然も壊さない経済とは?』と、2024年1月発刊の『食べものから学ぶ現代社会 私たちを動かす資本主義のカラクリ』。これこれこれ、私が求めていた本は!そんな気分だった。今さらマルクスは読めないが、これなら読めそうだ。発刊順に、まず本書から読むことにした。 そもそも資本主義って何だ? 生まれた時からどっぷりそれに浸かっているからか、それとも、にもかかわらずか、日々の暮らしの中で資本主義など意識したことがない。著者は、資本主義がどのように成立して、どのようなロジックで私たちの生活に影響を与え続けているのか、それを理解する必要があると説く。そして、誰にとっても欠かせない食べものから資本主義システムを明らかにしていく。なぜ、主食が芋ではなく米や小麦粉などの穀類になったのか。砂糖が世界で広まった背景に何があったのか。身近なところでいえば、かつての小学校の給食は、なぜパンと脱脂粉乳であったのか、等々。実は、それらにはすべて政治が絡んでくるのだが。 歴史の中で考えれば、資本主義システムと植民地は密接な関係がある。宗主国は植民地の資源や人間を奪い取るばかりではない。産業発展のための原料を大量に供給する役目を担わせられ、その上、宗主国で生産した工業製品を販売する市場と化せられる。植民地は宗主国の経済成長を支える原料を生産する農業に作り変えられていく。資本主義が植民地主義を必然的に招いたといってもよいかもしれない。そしてそれは、今も残る。 世界には120億人を養うにのに充分な食料があるというのに、現在78億人の世界人口のうち7〜8億人は飢餓状況にあり、約20億人が食料不安に面している。満足な食事ができない飢餓地域を示すハンガーマップを見ると、そのほとんどがかつて植民地とされた地域だったことがわかるという。 飢餓の問題ともかかわってくるが、資本主義は戦争ともおおいに親和性がある。戦争とは最大級の破壊行為であるが、同時に国が戦争を遂行するために膨大な需要を創り出す行為でもあることを忘れてはならないという。すなわち戦争特需である。第一次世界大戦後、米国ばかりではなく日本も、この戦争特需で一気に経済成長する。そしてその後には大恐慌がやってくる。実は、その前に米国では農地や米国では農地や農産物のバブルと崩壊があったことをいう。 大恐慌からの回復は教科書通りのニューディール政策ばかりではない。第二次世界大戦が始まり、再び戦争遂行するために、軍事費を拡大し、大量の物資と労働力が求められ、その戦争特需によって、ようやく米国は恐慌から立ち直ることができたとも言われていると、著者は触れている。 歴史を見れば、資本主義が、戦争、植民地、そして飢餓を必然的に喚び起こしたとも言えるのではないだろうか。 現在はどうだろうか。これだけ気候変動による地球危機が叫ばれているにもかかわらず、あいも変わらず政治家はまるで強迫観念のごとく「経済成長」を言い続けている。本書によれば、資本主義とは、そもそもお金で計れる部分だけでその効率性や成長のみを目指す仕組みであるからして、気候危機も格差の問題も資本主義のシステムとしてはその目的通り真っ当に機能している結果だという。 では、なぜ軌道修正しないのか。拡大と成長を続ける経済システムは、欲望が欲望を生む欲望の資本主義であると。資本とは、金儲けの運動であり、金儲けを延々と続けるのが資本主義。つまり、地球が壊れそうになっても、「やめえられない、止まらない」システムなのだ。 それに抗するには、世界の経済と政治と歴史がかかわっている私たちのご飯から、人も自然も壊さない世界を考えてみてはと、著者は最後に語りかける。資本主義経済は自然の法則でもなければ、不変のシステムでもないのだからと。 こうなったら、ぜひ、某LINEグループのSやHらと本書の読書会をしたい。そして資本主義とは何たるかを語り合いたいものだ。 Created by staff01. Last modified on 2024-08-22 11:46:19 Copyright: Default |