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〔週刊 本の発見〕『だめ連の 資本主義より たのしく生きる』 | ||||||
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楽しく社会に抵抗していく『だめ連の 資本主義より たのしく生きる』(著者 神長恒一・ペペ長谷川、現代書館、2024年)評者:根岸恵子
抵抗の仕方はいろいろあるけど、中国で流行る「何もしない」ことや欧州の若者のように「破壊する」ことも魅力的な活動だが、遊んで楽しく資本主義にNO! を叫ぶのもひとつの有効な抵抗運動だ。 著者神長恒一さんとペペ長谷川さんはともに早稲田大学の学生だったが、神長さんは卒業後百貨店に就職するも10か月で労働に疑問を持ち退職、ペペさんは留年を繰り返していた。就職して結婚して家庭を持つのが常識とされ、そうでない者を「ダメ」と決めつける社会で、その圧力に抗し自由に生きていこうと1992年に「だめ連」が結成された。 経済中心で労働と消費を強制されるような資本主義的な生き方ではなく、社会変革を目指し、オルタナティブで楽しく自主的に生きようというのが彼らのモットー。路上でのイベントやトークショー、デモ活動を通し、彼らの考え方を広げている。 ペペさんは昨年鬼籍に入った。生前は「ロバートDEピーコ」のボーカルをやったり、「なんとかバー」や「あかね」で店を開いたりしていた。 私が最後に会ったのは祭りの最中で、「俺トイレに行ってくる」と言って、そのまま帰ってこなかった。それが最後。葬儀は谷保の「かけこみ亭」で友人葬によって送られた(写真下)。650人が駆け付け、小さい場所で、静かな弔いだったが、壮大な葬式だった。「好きなことを精いっぱいやって、人生を楽しんだよね」と声をかけたが、天国に届いただろうか。 彼の生きざまは、そのままこの本の中にある。幸せな人生とは何かを自ら体現した記録だと私は思う。この本の原稿を書き上げて、彼は天に昇っていったのだから。 資本主義は虚構だと二人は言う。金は絶対的なものではなく、それは紙くずにもなり、人を惑わせる手段にもなる。教育が調教の手段で、大量生産された物言わぬ労働者は、やがて人間性を喪失させられていく。恐ろしいではないか。だったらダメと言われながら、楽しく社会に抵抗していく方が絶対的にダメではない。というのが、私がこの本から得た感想だ。 神長さんが今やっている食べるものを自分で育てること、余分なものはいらない、働かないという反資本主義的な生き方は、中国の若者の虚無主義や欧州のアクティビストのガチな闘いより、より平和的で有効的な抵抗運動かもしれない。それを貫くのは、権力が押し付けている常識に惑わされる大衆のなかにあってより過酷かもしれない。しかし、今その常識を破る者たちが増えているのも事実だ。 私たちは窮地に立たされ、死にゆく地球と共に環境を破壊し続ける資本主義に追従していくのか、すべて圧迫するものから自由になって生きるのか。その自由な生き方を試行錯誤しながら生きてきた二人の軌跡と思想が、この本には詰まっている。私たちの生き方に「だめ連」の生き方を反映することができれば、ペペちゃんも若く逝去された残念に報いることができるかもしれない。 人には自分の生き方を考え決める自由がある。資本主義の社会を変だと思うなら、生き方を考えてみてはどうだろうか。そういうことを自由に話し合える社会をつくることは難しいことだろうか。ともに歌って、踊って笑い合う。金ではない価値観を持つ時が来ている。食べるために必要なものは何だろう。金だろうか。でもそのために無理することもなく、自由に食うものをつくれる社会があればいい。人は自由に生きていい。 *編集部注 レイバーネットTV199号(2024.4.24)では、「だめ連の資本主義よりたのしく生きる」を取り上げた。アーカイブはこちら Created by staff01. Last modified on 2024-05-09 16:25:02 Copyright: Default | ||||||