「全身活動家」益永スミコの生き方に圧倒される

松原明（ビデオプレス）

　8月8日、ビデオプレス主催の『死んどるヒマはない－益永スミコ86歳』上映会が全水道会館で開催された。私は主催者で「戦争に向かう今の時代こそ、この映画を観てほしい」と企画したものの、無名の作品で集客が心配だった。でもフタをあけると、会場はほぼ満席の180人で埋まった。多くはシニアの女性たちだった。「戦争の道を止めよう！９条を守ろう！」と体を張って訴えてきた益永スミコさんは、大きな共感をもって受けとめられた。

　アフタートークには映画の企画者の佐々木有美さん（ビデオプレス）と、コメディアンの松元ヒロさん（写真上）が登壇した。ヒロさんは身ぶり手ぶりで引きつける。「きょうの映画の主人公は女性、会場も女性が多いですね。男は会社の縦社会に縛られているが、女性は横社会で人のつながりをつくっている。じつは私のライブを支えているのも女性なのです。そのおかげで食べていける。私は“ジョセイ金”と言っています！」と笑わせる。次々に面白いネタを披露した松元ヒロさん。「戦争を止めるために、一人ひとりがスミコさんのようにあきらめず頑張っていこう」と結んだ。

　司会の私は、「益永スミコが1000人いれば日本は変わる」と思わず発言したが、会場には第２第３の益永さんの姿をたくさん見ることができた。また、益永スミコさんの娘で映画にも出演している益永陽子さんが、駆けつけてくれた。首から「９条改憲反対！」のプラカードを提げている。スミコさんの思いはしっかりと陽子さんに受け継がれていた。

　アンケートは54通も寄せられた。「益永スミコという人間のスケールの大きさに驚きました。まっしぐら。素晴らしいドキュメンタリーから多くを学んだ」「感動しました。益永さんの“従わない”生き方、行動力と重さ。ずしんときます。憲法9条は社会の命ですね」「一人の確実な歩みが、世の中を少しずつ変えていく勇気をいただいた」「スミコさんの生き方には敬服します。とにかく自分の頭で考えて、生きて、たたかっていく、たたかい続けていくという姿勢に心から拍手をおくります」「圧倒された、の一言です」「ヒロさんの話はレアで初めて。すばらしい、おもしろい、広がる」等々、熱い言葉にあふれていた。（＊写真＝街頭で訴える益永スミコさん／映画から）

　持参したDVDとパンフレットは完売し、自主上映会の申し出も相次いだ。『死んどるヒマはない』は2010年制作の作品だが、まったく古くなかった。いや、いまもっとも必要とされているドキュメンタリーだろう。私は益永スミコを知ってもらうために、この作品をもっと広げていこうと思った。

→DVD『死んどるヒマはない－益永スミコ86歳』の申込みはこちら。上映会の相談も受けつけています。https://videopress.jimdo.com/dvd

●FBに寄せられた声　東海林智（毎日新聞記者）

伝説のドキュメンタリー映画を見た

　ドキュメンタリー映画「死んどるヒマはない～益永スミコ86歳～」の上映会を見に行った。
　一人でも街頭に立ち、反戦を訴え続けた益永スミコさん。東アジア反日武装戦線のメンバーで三菱重工ビル爆破事件に関与した益永利明死刑囚（旧姓片岡さん）の養父母になった経緯も丁寧に描かれていた。反戦のみならず、人権問題にも声を上げ続けた益永さんのありようがひしひしと伝わってきた。病院での労働組合結成を機に、学び直し、戦争を見つめ直し、社会のありように、平和を求めて声を上げ続けた彼女の生き様に感服した。「金銭感覚が全くなくて、あちこちにカンパして、年末に米も買えない状況だった」と娘さんが苦笑いしていた場面も素晴らしい。その娘さんも今、母と同じように声を上げ、１人街宣をしているという（写真右）。

　ゲストでトークを披露した松元ヒロさんは「僕は憲法をテーマにしたコントで、日本のあちこちでお呼びがかかり『憲法を食い物にしている』（笑）なんて、言われるんですけど、『戦争を食い物のしている奴らよりずっとましでしょ』」と述べ、益永さんへの敬意を語り、今後も憲法を〝ネタ〟にしていくことを誓った。〝テレビで会えない芸人〟のヒロさん、圧力に従わない芸人の面目躍如だ。

　戦争を食い物にする首相・岸田が「自衛隊を明記する」と軽口で憲法改正を言う今、〝従わない者〟たちが、声を上げなければならない。元軍国少女だった益永さんは映画でこう言っていた「（私はもう戦前のように）従わないの。従わないためには勉強しなきゃならないの」。学び、そして、声を上げる時だ。１人でも・・。

●メールで寄せられた声

お蔵入りはもったいない、各地で上映を！

　こんなすばらしい映画が、長くお蔵入りしていたとは、もったいないことです。これからいろんな所で上映会ができるといいですね。益永スミコさんは、まさに「全身運動家」です。ここまでできる人は、二人といないように思います。街頭でお話する声は、地鳴りのように、通りすがりの人の心に響くものではないでしょうか。声を荒げ糾弾する調子ではなく、静かな語りで、でも説得力がある。いつも笑顔を絶やさない表情も魅力的でした。こんな人に光を当てて、世に送り届けてくれたビデオプレスさんのお仕事に、心から敬意を表します。（N）