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【解説】一昨年11月のカリフォルニア大学での教育研究労働者の歴史的なストライキの勝利を受けて、全国での大学での院生労働者の組織化の波が広がっている。大学院生として学びながら、大学当局から研究補助、教育補助として雇用されている労働者たちが全米自動車労組UAWなどに加入している。レイバーノーツ誌ではAFL-CIOに加盟していない独立労組である全米電気工労組(UE)による新しい組織化手法を紹介している。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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万単位の画期的な組織化を勝ちとった院生労働者たち

バレンティナ・ルケタ(全米電気工労組(UE)大学担当全国調整員)
*マサチューセッツ工科大学(MIT)での画期的な組織化を勝ちとった院生労働者たち

 米国の労働運動にとって、ここ数十年で最大の組織化の波である。大学院生労働者が大量に組合に加入し、90%以上の支持を得て、次々と組合結成に勝利している。しかも、当該の労働者たちは組織化キャンペーンの運転席に座っており、組合スタッフの助けはほとんどない。

 今日の組合組織化のほとんどは、スタッフを多用するアプローチに頼っているので、その規模を拡大するのは難しい。しかし、院生労働者による組織化の急増は、労働組合運動の衰退を逆転させるのに役立つ労働者主導モデルの見通しを提供している。

 全米電気工労組(UE)だけでも、この1年半で3万人近い院生労働者を組織した。マサチューセッツ工科大学(MIT)やミネソタ大学を含む8つの主要大学で組合認証選挙に勝利した。他の大学の労働者も、ホテルレストラン労組UNITE HEREや全米自動車労組UAWその他の組合による組合結成に賛成票を投じた。

 一部のキャンパスでは、院生労働者が1日で1,000人の同僚を組合に加入させ、数週間で組合支持票が過半数に達した。

 このような大規模な組織化活動は、主に組合専従スタッフに頼っていたら不可能だっただろう。組合スタッフがすべての労働者と話をしなければならないなら、さらにスタッフが組織化活動のためにすべての労働者を訓練し、まとめなければならないなら、これほど速く動くことはできない。

 その代わりにUEは、院生労働者たちの職場や同僚に関する知識を活用して、組織化研修をしている。そして、その研修を受けた院生労働者が回りの仲間を訓練し、組織化が雪だるま式に進み、組織化活動が独自の生命を持つようになるのだ。

 これはUEや他の組合が通常行う組織化方法ではない。しかし、組織化を求める院生労働者の急増は新しいやり方を要求した。院生労働者の活動のスピードに追いつくためには、UEは院生労働者に主導権を渡さなければならなかった。

 組合のスタッフと一般組合員の関係は変わった。スタッフは教育者やファシリテーターとなり、新たな組織化の課題に一般組合員と取り組んだ。今では一般組合員は、他の大学での組織委員会を訓練することによって指導力を伸ばし、全国的な運動を発展させている。

 この戦略のルーツはUEの過去の歴史に深く関わっており、過去の指導者たちは外部の組合スタッフの助けを借りずに電機・機械工場で自ら組合を設立した。言い換えれば、この能力は院生労働者特有のものではない。UEは、この労働者主導モデルは他の職場でも試すことができると信じている。

職場のリーダーに手綱を渡す

 院生労働者たちは各キャンパスで数百人からなる大規模な組織委員会を立ち上げ、そこで労働者同士が組織化のスキルを教え合い、リーダーへの成長を助け合った。UEの目標は、すべての支持者をリーダーに、すべてのリーダーをトレーナーにする、である。従来は組合のスタッフに任されていた組織化作業は、労働者リーダーに移された。例えば、労働者は組織化データベースを構築・管理し、そこに各部門の労働者オーガナイザーがメモや評価を登録した。

 データを組合スタッフが囲い込むのではなく、何百人もの労働者オーガナイザーがこのデータベースを利用して組織化のための一対一の会話を追跡し、各部門の戦略を練ることができる。

 キャンパスの中を二人一組で回り、事務室や研究室にいる仲間に話しかける活動を強化して行った。新しい部署に働きかけ、オルグとしての自信をつけ、オルグのための会話手引きを微調整するチャンスである。

 よくある質問に対して組合が用意した回答を配るのではなく、労働者同士で最適な回答をブレインストーミングした。その結果、それぞれの部署で反組合的な質問が出てきたときに、よりよい準備対応ができた。その回答集をオンラインで共有化し、利用することで、労働者たちは自分たちを訓練し、強制参加の当局の反組合集会を弱体化させ、当局への反撃の場に変えていった。

キャンパス間のネットワーク

 うまくいった戦略や資料はキャンパスからキャンパスへと受け継がれた。

 科学・技術・工学・数学部門(STEM)では、多くの院生労働者の組織化運動が失敗していた。そこで、全米最大級のSTEM大学であるマサチューセッツ工科大学(MIT)で画期的な勝利を収めた後、他キャンパスのオーガイザーたちは、研究補助員に組合が必要な理由についての論点をMITから借用した。

 ノースウェスタン大書き、シカゴ大学、ジョンズ・ホプキンズ大学の大学院生労働者が同時に組織化したため、合同研修を実施し、資料を交換した。

 スタンフォード、ダートマス、コーネルの大学院生は、これらすべての先行キャンペー ンから学んだ教訓の恩恵を受けていた。スタンフォードでは、1日で2,000枚以上の組合支持カードに署名した。

 各キャンパスで、労働者たちは自分たちの職場を誰よりもよく知っていることを信じながら、うまく行かない点を検討して、組織化方法を適応・拡大して行った。


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