| 〔週刊 本の発見〕『あなたはどこで死にたいですか?−認知症でも自分らしく生きられる社会へ』 | |
| [MenuOn] Home | ニュース | イベント | ビデオ | キャンペーン | 韓国 | コラム | About | Help [login ] | |
|
このままでは「介護難民」になる『あなたはどこで死にたいですか?−認知症でも自分らしく生きられる社会へ』(小島美里 岩波書店 2022年 2100円)評者:佐々木有美
著者の小島美里さん(写真下)は、私の住む埼玉県新座市議を経て、約30年間、地元で介護事業にかかわってきた。2003年に介護グループホーム「暮らしネット・えん」を設立。自宅が近いせいもあり、朝、自転車で出勤する小島さんの姿を見かけることもある。本書のカバーのことばは印象的だ。「85歳を過ぎると4割、90歳を過ぎると6割の人が認知症になると言われます。超高齢化社会を生きる私たちは、認知症になることを前提に、どこでなら安心して最後を迎えられるかを見極めなくてはなりません」。本書で小島さんは、現行の介護保険の矛盾を数々上げているが、その中の柱の一つが、この認知症の問題である。
介護ヘルパーの不足も大きな問題だ。2020年の求人倍率は約15倍。人が集まらないのは、ひとえに低賃金が理由だ。ヘルパーの月収は全産業の平均より59000円も低い。岸田内閣になって一律9000円の賃上げがあったが、それも一時しのぎにすぎない。さらに、連続する介護報酬の引き下げとコロナ禍が重なり、2020年介護事業所の倒産件数は過去最高にのぼった。知らないのは怖いことだ。介護をめぐる現状は驚くほどひどいことになっていた。このままでは、私たちは介護難民になるしかない。しかし、保険金を払ってきた私たちは、認知症になってもお金がなくても、まっとうな人間らしい介護サービスを受ける権利がある。43兆円の軍事費に比べれば何とささやかな望みだろう。 小島さんは、本書の最後を「政治をあきらめない」という言葉で結んでいる。私たちの老後を、介護を、まっとうなものとするのは、私たち自身であることに改めて気づかされた。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人、志水博子、志真秀弘、菊池恵介、佐々木有美、根岸恵子、黒鉄好、加藤直樹、わたなべ・みおき、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2023-03-23 09:33:33 Copyright: Default | |