「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件」国家賠償請求訴訟 第8回法廷報告 小野政美（「エルクラノの会」；「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合・東 海」） 法廷でウィシュマさんが亡くなる直前映像２回目上映 ７月１２日午後、名古屋地裁（佐野信裁判長）で、名古屋出入国在留管理局で２０２１年 ３月６日、名古屋入管収容中に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・ サンダマリさん（３３）の遺族が、ウィシュマさんが死亡したのは名古屋入管が必要な医 療を提供しなかったのが原因だとして、国に対し約1億5600 万円の損害賠償を求めている「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件」国家賠償請求裁判で 、証拠として提出された収容中のウィシュマさんの亡くなるまでの映像の一部（一部５時 間分）が６月２１日に続き法廷で上映された。 国側が証拠として提出した収容中のウィシュマさんの様子を写した監視カメラ映像２６０ 時間のうち５時間分が、６月２１日に初めて法廷のモニターを使って上映されたが、７月 １２日の法廷では、映像の残りの部分で、亡くなる２日前から直前までの映像が上映され た。死亡当日の一部映像は、前回と同じように、１時間５２分４７秒の映像の内、２７分 ２３秒は傍聴者向けのモニターには映し出されなかった。 ５時間の映像には、ウィシュマさんが呼びかけに応じなくなった後、職員らが脈や呼吸を 確認する様子が写っていたが、７月１２日の法廷では、この場面は法廷の傍聴席向けモニ ターには映し出されず、裁判官、遺族、代理人らのみが見ただけだった。記者会見で、ウ ィシュマさんの妹のポールニマさんは、「亡くなった場面を傍聴人に見てもらうことがで きなかった」と悔しそうに話した。 上映された映像には裁判の争点の１つとなっている、救急搬送のタイミングに関連する部 分も記録されていた。亡くなる２日前の３月４日、ウィシュマさんは外部病院の精神科を 受診し、抗精神病薬などを処方されていた。翌日３月５日、亡くなる前日の３月５日の午 前８時前の映像には「おはよう」「寝れた？」などと話しかける職員に対し、ウィシュマ さんは「あー」などとうめき声をあげていた。 亡くなった３月６日の午前８時すぎには「血圧測るね」などと話しかける職員に応答する 様子がないウィシュマさんが写っていた。名古屋入管は、このとき血圧や脈拍は測定して いない。６時間後の午後２時１５分ごろ職員が救急搬送を要請し、午後３時２５分ごろ死 亡が確認された。 ◆監視カメラ（映像提供：弁護団）の一部映像は以下の通り。 （看守）「サンダマリさん、バイタル測るね」 （職員）「メンタルの先生にちゃんとお話しなね。ちゃんと言ってきな、困っていること を。いい?わかった?」 （ウィシュマさん）「わかった。ありがとうございます」 ◆監視カメラの映像 （ウィシュマさん）「あー」 （看守）「おはよう」 翌日、３月６日、ウィシュマさんはベッドから起き上がることができない。 ◆監視カメラの映像 （看守）「サンダマリさん、バイタル測るね」 「サンダマリ、おはよう」 ウィシュマさんは職員の問いかけに反応を示さない。 ウィシュマさんはその後、搬送先の病院で死亡が確認された。 遺族側はウィシュマさんが衰弱し収容に適さない状態にあったことは明らかであり、薬の 影響だと考えたとしても摂食ができない、反応がない、血圧測定ができないなどの異常症 状を呈するウィシュマさんに対し、看守勤務者は『人として』当然の措置をとるべきであ った状態で収容を継続したことは違法だと主張している。 ７月１２日の裁判後の記者会見で、ウィシュマさんの妹のポールニマさんは「録画を見て 、姉ウィシュマがひどい扱いを受けていたことがわかったと思う。公平な判断をしていた だけたら」と話し、妹のワヨミさん（３０）は、「どれほど姉が理不尽な扱いをされたか 分かってもらえたと思う。（証拠提出されていない）残りの映像も速やかに上映してほし い」と訴えた。 しかし、被告・国は、医療従事者でない看守勤務者がウィシュマ氏の意識がはっきりしな い状態を確認した上で、薬の影響であると認識したとしてもやむを得ないなどと主張し、 入管職員の医療上の対応に違法性は認められないと遺族側の請求の棄却を求めている。 なお、６月１４日付で名古屋地裁に提出された被告・国の「証拠説明書（８）」は、６月 ２１日と７月１２日に名古屋地裁法廷でモニター上映された映像について、「原告らは、 乙第３６号証の映像に基づいて、看護師及び看守担当者らの対応について非難するが、同 ビデオ映像によると、看護師及び看守担当者らは、収容施設内における医療に関する制約 に加え、限られた人員や勤務体制の制約がある中、可能な限りウィシュマさん氏の要望に 応じて、誠実に対応していたのであって、名古屋入管職員が職務上の注意義務を尽くすこ となく、漫然と対応したものでないことは明らかである。したがって、原告らの主張には 理由がない。」としている。 ウィシュマさん遺族の二人の妹さんと弁護士、不起訴となった入管職員１３人を業務上 過失致死罪で起訴すべきと名古屋入管局長らの起訴を求める意見書を名古屋地検に提出 ７月１２日午前、この問題をめぐって、午後の民事裁判の行われる前に、 ウィシュマさん遺族の二人の妹さんと弁護士は名古屋地方検察庁を訪れ、「死亡した日の 午前は呼びかけに反応しないなど、一般人の感覚からしても救急車の出動を要請すべき状 況であり、どんなに遅くともこの時点での過失行為につき業務上過失致死罪が成立する」 殺人などの容疑で告訴・告発され、不起訴となった入管職員１３人について「少なくとも 業務上過失致死罪で起訴すべきだ」などとして名古屋入管局長らの起訴を求める意見書を 提出 した。ウィシュマさんの妹のワヨミさんは「二度とこういうことが起きないように、公平 な捜査をして起訴してほしいとお願いしました」と話した。 ２０２１年３月６日、名古屋入管収容中に亡くなったウィシュマさん殺人の疑いで告訴さ れるなどした当時の名古屋入管局長らは不起訴となったが、名古屋検察審査会は２０２２ 年１２月、殺人罪などについては成立しないとした一方で、業務上過失致死罪について再 検討するべきで「不起訴は不当だ」と議決した。これを受けて名古屋地検が再捜査を行い 、改めて起訴するかどうか判断する見通しである。 ◆難民申請中の強制送還停止を原則2回に制限する「改悪入管難民法」が成立 入管施設の長期収容解消を目的に難民申請中の強制送還停止を原則２回に制限する「改正 入管難民法」が成立した。現行法では申請中は送還を何度でも停止できたが、今回の改悪 法は、本国で迫害を受ける可能性がある人を帰せば命を危険にさらすことになる人道に反 する改悪である。日本で働く外国人労働者の数は、２０２２年１０月末現在で１８２万人 を超えた。難民申請は急増し、２０１７年に過去最多の約２万件に上り、２０１８年に就 労許可を厳格化し送還停止の制限に舵を切った。難民申請者には、既に３回以上、難民申 請をおこなっている人も多い。日本の難民認定率は２０２１年では０．７％（７４人）、 イギリス６３．４％（１万３７０３人）、カナダ６２．１５％（３万３８０１人）、ドイ ツ２５．９％（３万８９１８人）、イタリア１５．６％（６８４５人）と他のＧ７の国と 比較しても異常に低いことがわかる。２００５年から２０２１年に２回目以降の難民申請 が認められた人はわずか４７人で、「改悪入管法」によって命の危険が待っている国に強 制送還させられることになる可能性がある。 日本の入管難民行政には、入国させたくない外国人排除を狙う出入国管理と難民認定を入 管庁が一手に所管している問題がある。難民不認定処分の取り消しを求めた訴訟で裁判所 が入管の判断を覆した訴訟判決は５０件以上に上る。裁判などの手続きなしでの長期収容 は「恣意的拘禁」として拷問禁止条約に抵触し許されない人権軽視である。今回改正で政 府は長期収容を防ぐため、支援者ら監理人の下で社会生活を認める「監理措置」を設けた と主張するが、収容か監理措置かの選択が入管の判断に委ねられる上に監理人が支援の立 場と相いれない当事者を監視する役割を強いられることになる。国連の特別報告者は国際 人権基準を下回るとし徹底的見直しを求めている。国際基準と照らし、難民認定を審査す る第三者機関設置や、収容に裁判所判断を必要とすることなどを導入すべきであり、「改 悪入管法」の撤回が必要である。 ◆署名運動への協力のお願い �‘�本に生まれ育った未成年の仮放免者とその家族に在留特別許可を！ ２０２３年６月９日に国会に入管法改悪法案が強行採決され、可決されました。この法案 の中身は、難民申請中でも無理やり送還できるようにすること、送還を拒否する外国人（ 「送還忌避者」）に罰則を設けることなど、入管の権限を強化して、送還を促進するとい うものです。 入管の言う「送還忌避者」は、現在、全国に約４０００人います。この４０００人のなか には、未成年とその家族も含まれています。入管は、この「帰るに帰れない」人たちを無 理やりに強制送還しようとしているのです。 在留資格が認められないなかで今、彼らは先行きが見えず極めて苦しい状態にあります。 日本社会として、今すぐに救済しなければならない人たちであり、また法案や制度を変え なくても入管の裁量で今すぐにでも在留を認めれば救える人たちです。日本社会に住む一 員として目を向け、子どもとその家族と一緒に声をあげてください！ □署名サイトへは画像をクリック！ 日本に生まれ育った未成年の仮放免者とその家族に在留特別許可を！ 開始日 2023年5月4日 �▲Ε�シュマさん死亡事件の起訴を求める署名 ウィシュマさん死亡事件について、名古屋地検に起訴処分を求める署名活動を行っていま す。 署名へのご協力、拡散をお願いします！ ＊署名サイトへは画像をクリック！ #JusticeForWishma ウィシュマさん死亡事件について、名古屋地検に起訴処分を求めます 開始日 2023年1月30日 名古屋地方検察庁に提出。署名は継続中です。 ��「名古屋入管ウィシュマさん死亡事件国家賠償請求訴訟」についての資料やカンパな どの支援については、以下をご覧ください。妹さんたちの滞在費や裁判費用等のためにご 協力をお願いします。 https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000094 �あ�NHK土曜ドラマ【やさしい猫】全5回は、残りは、７月１５日（土）、7月22日（土） 夜10時です。 お元気で。再見。
Created by staff01. Last modified on 2023-07-13 11:35:28 Copyright: Default