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米国労働運動 : チームスターズ労組が26年ぶりにストライキ決起か
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【解説】アメリカの物流大手UPSを組織するチームスターズ労組は、協約更改闘争に向けてストライキ権投票を6月に実施、97%の高率でストライキ権を確立した。UPS社にはチームスターズ組合員が35万人おり、その労働協約は民間部門の最大の労働協約である。昨年発足したチームスターズ労組の改革派の新執行部の指導力が問われている。日本でも2024年問題で問われているトラック運転者の厳しい労働条件に対して、チームスターズ労組が26年ぶりのストライキで立ち上がるか注目したい。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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UPSのチームスターズ組合員35万人が全国ストに向けスト権投票実施

2023年6月7日 UPS労働者ショーン・オア/エリオット・ルイス

*UPS全国協約の改定に向け、要求を掲げるニューヨーク市のチームスターズ労組ローカル804の組合員たち

 民間部門としては米国最大の労働協約が7月31日深夜に期限切れを迎える中、米国の労働運動の目はユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)とそこで働く約35万人のチームスターズ労組組合員に注がれている。チームスターズ労組は6月5日からUPSのストライキ権投票を実施し、結果は6月16日に発表すると発表した。同組合指導部は賛成票を強く求めている。「これが我々の勝ち方だ。」とチームスターズ労組ショーン・オブライアン会長は語る。

 UPSの労働協約更改闘争は労働者階級全体にとって重要だ。労働組合を組織することが、賃金や労働条件の改善、職場での労働者支配の強化につながり、より良い世界への扉を開くことになることを、あらゆる場所で、特にアマゾンとフェデックスの労働者に知ってもらいたい。今夏のUPSとウォール街に対するストライキの勝利ほど、労働組合の価値を示す絶好の機会はない。

二層賃金の運転手

 この闘いのルーツは数十年前にさかのぼる。UPSの仕事はかつて、組合に組織され雇用が保障された仕事の基準と考えられていた。今では労働者の60%がパートタイムで、多くの地域では最低賃金程度しか稼いでいない。多くの場所で運転手は週6日働き、残業を強制されて最大14時間労働を強いられている。管理職は自家用車で運転手を尾行し、労働者を脅して早く働かせようと執拗な嫌がらせをしている。

 2018年、チームスターズ労組のジェームズ・P・ホッファ前会長は、過半数の反対票があったにもかかわらず、組合員に労働協約の批准を強要した。この協約はパートタイムの賃金を低く抑え、協約22条4項により二層賃金を導入した。これまでより低い 第二層賃金で働く労働者は「22条4項」運転手と呼ばれている。今や新人運転手は、同じ仕事をする既存の運転手よりも賃金が低く、過重な時間外労働からの保護も弱い。

 改革派のコーカス「組合民主化を目指すチームスターズTeamsters for a Democratic Union」に結集する一般組合員は、この譲歩と全面的に闘った。TDUの活動家たちは、2013年と2018年にも譲歩的な労働協約に反対する「反対票を投じる」キャンペーンを組織した。そして2021年、TDUは、譲歩を撤回するために攻撃的な闘いを主張して、同組合最高指導部選挙を闘い、改革派からなる統一候補者の勝利を実現した。

 現在、UPSのチームスターズ労組が要求しているのは、パートタイマーの時給の25ドルへの大幅な引き上げ、22条4項の荷物運転手の2層賃金の撤廃、強制的な6日勤務の廃止、6万人の労働者の年金支給額の引上げによる年金の平準化、運転手監視カメラ拒否、休日の増加、下請けやギグ労働者の使用禁止である。

 一般組合員のストライキへの期待は大きい。もしこの協約で運転手の二層賃金が廃止されなければ、ストライキとなる。パートタイム労働者の賃金が大幅に引き上げられなけれ ば、ストライキだ。週5日制を超えるすべての労働日が完全に自主的なものでないなら、ストライキだ。

 これらの要求の中には、過去の組合執行部が失った労働条件を取り戻すためのものもある。しかし、多くの労働者、特に前回の協約以降に採用された労働者にとっては、今回の闘いはより良いものを求める闘いなのだ。UPS労働者がコロナのパンデミックの間、一銭の危険手当も支給されずに経済を維持し、強制残業をしている間に会社は記録的な利益を上げてきた。もちろん、今私たちは、その公正な分配を求めている。

この組合要求は広く支持されており、組合員はそのために闘う準備ができている。組合員は、中途半端な取引や妥協、UPSとの痛み分けを受け入れないだろう。

ウォール街の命令

 UPS株の72%はウォール街の企業によって所有されており、最大の株主はバンガード・キャピタルとブラックロックである。これらの企業はUPSだけでなく、フェデックスや鉄道会社などの主な民間物流会社の株主であり、経済の大きな部分を所有している。

 ウォール街はUPSの労働協約に何を求めているのだろうか?安定した巨額の利益だ。ウォール街は、UPSをコロナ・パンデミックの偉大な成功企業ととらえている。2012年から2019年まで、UPSの年間利益は71億ドルから82億ドルだった。他の企業が苦しんでいた2020年、UPSはそれでも87億ドル以上を稼いだ。そして2021年には131億ドル、2022年には139億ドルという史上最大の利益を計上した。

 UPSは2023年の協約更改において、従業員を週7日のうち好きな日に働かせる「柔軟性」や、労働者をいじめるための運転席カメラの設置、荷物の配達にギグワーカーを使い続けることなどを要求することで、利益をさらに増やそうとしている。

 ウォール街が物流業界全体の条件を決定するうえでの最大の障害は、チームスターズ労組のUPS協約である。競合他社を見れば、労働組合がなければ企業がどのような行動に出るか一目瞭然だ。アマゾンの運転手はほぼ最低賃金で、一週間非人道的な作業基準を満たさなければ次週からは労働時間を減らされる。フェデックスはすべての直接雇用を廃止し、100%下請けモデルに切り替えようとしている。

 8月に予定されている2週間ストライキが行われればUPSに約32億ドルの損害を与える可能性がある。しかし、より重要なことは、UPSのストライキは、コロナ禍以降の経済において、労働者階級の力を示す最大のデモンストレーションになるということだ。すべての労働者は、集団的に労働を停止することによって、より良い条件を勝ち取る力を持っていることを知ることができる。この結果こそ、ウォール街が最も恐れていることなのだ。

1年前に始まった協約更改闘争

 UPSの協約更改闘争はほぼ1年前に始まった。昨年8月、全国各地で協約更改闘争スタート集会を開いた。秋には協約更改に関するアンケートを実施し、大胆な要求が支持されていることを確認した。冬には、何千人もの組合員が出入り口や休憩室に立ち、協約更改団結誓約カードを配って、ストライキも辞さない主要な協約要求項目への支持を集めた。

 春には、全国各地で協約更改行動チームの訓練を実施し、職場のマッピングを行い、ピケ隊長を選出し、仲間を巻き込むための組織化計画を立案した。そして先月、TDUの一般組合員の活動家たちは、UPSがより高い年金制度を受け入れ、パートタイム賃金を時給25ドルに引き上げることを要求するため、数十のUPS社の車庫で請願活動を開始した。

私たちは大きな期待を抱いている。チームスター労組史上最高の協約を勝ち取りたいと考えており、そのためには8月1日にストライキを打つことも厭わない。

【ショーン・オアはUPSの荷物車運転手であり、シカゴのチームスターズ労組・ローカル705の職場委員である。エリオット・ルイスはUPSの荷物車運転手であり、ニューヨークのチームスターズ労組・ローカル804の代理職場委員である。】


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