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「攻められたらどうする?」は誘導尋問だ!/ジャーナリスト伊藤千尋さんの答え
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「攻められたらどうする?」は誘導尋問だ!〜ジャーナリスト伊藤千尋さんの答え

 5月はあちこちで平和と憲法9条の講演をしてきました。気になったのは、講演会の主催者自身が心に抱いている不安です。ロシアのウクライナ侵攻以来、「日本が攻められたらどうする?」と言われて反論できないでいる・・・という方が、護憲を主張する中にもかなりいらっしゃいます。立ち止まって冷静に考えましょう。この問いは誘導尋問ですよ。(*写真=伊藤千尋さん)

 いいですか?「攻められたら」と言われると、人間はとっさに今、具体的に攻められている状況を想定します。「逃げる」「非暴力での抵抗」という選択もありますが、すぐに思い浮かぶのは「戦う」姿です。すると「戦うには武器が必要だ」となり、「そのためには今から戦の準備をしなければならない」と思ってしまう。思考回路が一直線に軍拡に走ってしまう仕掛けです。

 でも、現実には、今はまだ日本はどこからも攻められていないのですよ。ならば「攻められないような平和な状況を今のうちに創り出す」という穏やかな選択肢がまず考えられるべきです。

 ロシアがウクライナを攻めた背景には、何年にもわたる具体的な両国の敵対関係がありました。ウクライナの領土内でウクライナ政府とロシア系住民との内戦状態があり、2014年にはクリミア半島をロシアが力ずくで奪うなど、すでに戦闘状態があったのです。その延長でロシアは全面侵攻したのです。何もないところから突然、戦争が始まったのではありません。

 戦争は勝った方にも負けた方にも甚大な被害をもたらします。ただ単に国の仲が悪いというくらいでは、戦争にまでは発展しません。「嫌中」や「嫌韓」の感情が日本の中にあるからといって、直ちに中国や韓国との戦争には結びつくものではないのです。職場や学校のクラスで嫌いな人がいるからといっても、口喧嘩はしてもいきなり殺し合いまではしないでしょう。身近にひきつければわかることです。国家関係という抽象的な問題だから、ついつい単純な判断を下しがちになるのです。

 「攻められたらどうする?」と質問されたら、「今は攻められていないのだよ」という前提をまず相手に認識させましょう。そのうえで「あなたはそんなに戦争をしたいのか?日本の若者を死に追いやりたいのか?」「その前にやれることがあるだろう。どうしてそこを考えずに殺し合いに走るのか。頭を冷やせ!」と一喝してやりましょう。

 「中国の習近平やミサイルを飛ばす北朝鮮を見ると、あいつら何をするかわからない」・・・という人もいます。しかし、同じように中国や北朝鮮から見たら「岸田政権は九州の南に広がる南西諸島をここ数年ですべてミサイル基地に変えてしまった。日本は戦争を仕掛けようとしている」と見られますよ。

 こんなお互いが抱く疑心暗鬼が高じて戦争を呼び込んだのが、かつての歴史でした。火に油を注げば大火事になります。火は消すものです。いや、火が出そうな段階で察知して火元を止めるものです。歴史はテストのために学ぶものではありません。現実の政治に活かすために学ぶものです。(伊藤千尋さんのFBより)


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