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10年たったら加害責任は消えるのか〜井戸川裁判を傍聴して

堀切さとみ

 5月31日。福島被ばく訴訟(井戸川裁判)が東京地裁103号法廷で行われた。原発が立地する自治体の首長が原告となり、国と東京電力の責任を追及するこの裁判は、2015年の初公判から25回目となった。

 午前9時半、地裁前で井戸川克隆さんがマイクを握る。「この裁判は、嘘とのたたかいだ」。東電は双葉町を含む周辺自治体と安全確保協定を結んでいたにもかかわらず、事故の通報連絡もなかった。住民を安全に避難させる責務をまっとうできなかった無念さと憤りを、井戸川さんはずっと持ち続けている。

 広い103号法廷の右側には、国の職員と東電関係者。皆、若い。3・11当初のことを知らない人もいるのではないだろうか。
 原発事故によってもたらされた被害は甚大だ。避難の困難さ、人生を破壊されたこと、財産を失ったこと。それらを訴えた井戸川さんに対して、東電側は準備書面でことごとく反論してきた。
 たとえば「双葉町は集団避難したのだから、地域から切り離された避難生活というのは当てはまらない」「(双葉町の避難所となった)旧騎西高校は交通の便もよく、行動や移動の自由が制限されたとはいえない」。挙句の果てには「原告は校長室という個室で生活し、プライバシーは確保されていた」と主張したという。


*報告集会 

 参議院議員会館で行われた報告集会には、60名あまりが参加した。共同代表の木村結さんは「東電側が井戸川さんの生活にまで踏み込んで、こと細かに反論するのを聞いて、この会社は10年たって反省するのを辞めたんだなと思った」と怒りをぶつけた。
 「帰れるようになったではないか」と東電側は言うが、避難解除の基準は20ミリ㏜/年。古川元晴弁護士は「放射能の影響がどれくらいあるのか、現地をみてもらう必要がある」と述べた。

 報告集会の合間に、2012年に旧騎西高校で筆者が井戸川さんにインタビューした動画が流れた。双葉町にとって命綱だった「安全確保協定」が断ち切られる中で、町民を被ばくさせまいと、やれることの最大限の責任を果たしたのだ。そんな井戸川さんに東電側は「町長としての職務に伴う負担として受忍すべき」と言い放ったという。井戸川さんは「消防署に放火した犯人が、消防署の職員に対し『消火は消防署職員の法律上の職務だから受忍せよ』というのに等しい」と憤る。

 インタビュー動画の中で井戸川さんは「この国を滅ぼしたくないだけだ」と語っている。奇しくもこの日、原発60年超運転が参院本会議で可決された。この国はどうなっていくのだろう。

 長い裁判を支え続けた人たちの中には、避難生活を続ける双葉町民の姿もあり「やっぱり井戸川さんに、町長であり続けて欲しかった」という声もあった。
 2013年に町長辞任に追い込まれた井戸川さんは、この裁判を通じて、原発政策は嘘に貫かれていることを訴えている。次回の公判は9月27日。原告の主張をすべて出し切る予定だ。


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