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社会運動の中でいま必要なのは「言葉の力」

<新しい戦前にさせない!反戦川柳人・鶴彬と現在〜佐高信さんを囲んで> レイバーネットTV185号(5/31)報告
佐高さんの著書『反戦川柳人 鶴彬の獄死(集英社新書)』が刊行された。鶴彬と、その周りの文化人たちが、あの日中戦 争時代をどう生き、どう発信していたのかを様々な人とのやり取りや論評を通して浮き上 がらせるものだった。 つい最近の句会では「鶴彬おれの出番がまた来たか」(一志)という句を目にして、背筋 が寒くなった。リアリティーあり過ぎである。 ただし、あまり視聴率は伸びないと思っていたのに、リアル視聴が200を超え、1日後には 500、3日後には1200を超えたことに、世界が戦争へ向かう危機を、憂いをもって考えさせ られた。(報告:笠原眞弓) ・アーカイブアドレス:https://www.youtube.com/live/QfFAxZCW04I?feature=share  ・今回の企画担当=レイバーネット川柳班 乱鬼龍 ・司会 :川柳班 乱鬼龍・白眞弓 ・出席者:佐高信(著者・共同テーブル代表)/川柳班から発言:笑い茸・八金・かぼす ・為子 ◆執筆のきっかけは? 高校の教師をしていた20代の頃、鶴彬の作品に出合ったので50年以上、一叩人編の鶴彬全 集や澤地久枝さんの加筆版にも触れて、鶴彬を広める努力をしてきた。 高浜虚子のことを書くつもりだったが、書き始めたころ『女帝小池百合子』を描いた石井 妙子さんに、鶴彬について問われ、急遽書くことにしたと。出版直後の「大波小波(東京 新聞)」の評は、前川喜平さんに「自分で書いたのでは」と言われたくらい納得いくもの だったとか。 幸いにして初版後すぐに再販がかかるという状態で、鶴彬の訴求力、インパクトが想像す る以上に大きいと思ったという。 ◆鶴彬は言葉のスナイパー  ・屍のゐないニュース映画で勇ましい 鶴彬 今まさに、ウクライナのニュースでも屍が映らない。実感のないところで戦争が語られて いる状態だと指摘。鶴彬は父親と同い歳で、ここに起きていることは自分にとって、遠い 過去のことではないと。 佐高さんは、例え少数派でもスナイパーのように、言葉の力でひっくり返していくことの 大切さを力説する。鶴彬が29歳で殺されたのは、権力側が彼を恐れた。運動する側は「言 葉」という文化にあまり関心がないが、例えば渡辺白泉の「戦争が廊下の奥に立ってゐた 」の俳句のように、社会運動も文化つまり「言葉」の力で鋭くひっくり返していくことが 大切だと力説した。 ◆川柳班の課題 反戦句の中から佐高さん選 ・ゼレンスキー武器下さいと広島詣で  (八金) ・ゼレンスキーつかい軍拡コマーシャル (笑い茸) 笑い茸さんは、戦争は殺し合いだが、今のこの戦争が軍拡をする(武器の売り上げを伸ば す)ことに利用されているかを表したかったという。 佐高さんは、今回の広島サミットが成功だったという世間の風潮の中で、核禁止条約に参 加もしていない日本が、核を認めるようなものにしてしまったと鋭く突く。 続けて佐高さんがいい句だと紹介したのは、以下の2句。 ・戦争が選挙するたび近くなり  (乱鬼龍) ・広島に核のボタンを置いて行け  (一志) 乱鬼龍――自分の句は、選挙のたびに参政党や維新がどんどん伸びて、右傾化していく中 で我々の575も権力を打つスナイパーになっているか?もっと磨く努力をしなければなら ないということを表現。  ◆本を読みこむ ・白眞弓――最後の4ページ「おわりに」に、全てが凝縮していると思う。鶴彬が、川柳 とは何かと、15分の演説をしてプロレタリアリアリズムの日本における典型は川柳である と述べる場面がある。佐高さんはその中の「川柳屋のくせに反戦なんて叫ぶのか」と蔑ま れていることを取り上げている。 ・佐高さんは、言う。29歳の凝縮された生涯の中で論戦をしていくが、花鳥風月に閉じこ もる俳句と違って社会性を持たなければならない。川柳は和歌や俳句より下に見られてい るが、逆にそれは勲章だと激しく言う。それは今も続き、非政治性が一番政治的と言える かもしれないと。 ・一志—―歌は軍人の号令より強いとか、真に批判するには芸術的でなければならないと あるが、それが我々には弱い。古式川柳でもスローガン的なものでも、相手に響かない。 鶴彬の句が今に残っているのは、芸術性の高さにある。また天皇批判がバシッとあるのも 胆だ。この本にはそういうことが書いてあって、読み終えて思わず「good job」と佐高さんに伝えてしまったと言う。
・八金――この本の特徴は、川柳と俳句の違いを明確にしていること。それは初心者にと ってもインパクトが強いと思った。思わず笑ったのは、「質問があります事件」。続けて 「殴らない同盟」を作ったそのおかしみ、軽妙なタッチなどに新たな視点が生まれたとい う。 ・かぼす――タイムリーの本だと思う。出版と同時に増刷が決まったというのもうなずけ る。満州事変の時に召集されて軍隊内で.反戦活動をして拘束され、日中戦争の時に獄中 で殺された。 かぼすさんの句の紹介があった。   ・花畑有事になれば芋畑  (かぼす)
5月11日の朝日新聞に、有事になれば花畑を食料生産の畑や田んぼに転換するという法律 の作成に入ったとあった。以前に川柳班で行ったフィールドワークで館山へ行ったとき、 戦中に畑にも畔にも花を植えると懲役3年の法律を作った。その監視に翼賛少年団が当た ったと聞いたことを思い出しての句。大本営などのあった千葉と長野で厳しかった。小説 や映画になっている。
佐高さんはその話を受けて、この句は具体的に分かる。それは大事なこと。ある集会で「 自民党に天罰を!公明党に仏罰を!」という幟旗があって、私は続けて「そして維新に神 罰を!」(笑)とした。鶴彬は具体的で、観念ではないと続ける。 1958年にあって勝利した警察官職務執行法裁判で募集したスローガンが「デートも出来な い警職法」というもので、非常に具体的に目に見える。こういうのが運動に力を与えてい くという。 大学の先生などで、「天皇に期待する」とか「天皇にバシッと言ってもらう」ということ を言う人もいる。ナニ言ってんの!であると!! ・為子—―ジャンルを超えて琴線に刺さって来る。肉体で向かってくる。すごいなぁと思 った。今出会ってよかった。川柳もスナイパーみたいな人がいても、もっと緩い人がいて もいいし、国を変えていくにはいろんな形で発信していかなければならないと思った。 ・笑い茸――古関裕而の露営の歌「勝ってくるぞと勇ましく…」が流行っているころ、川 柳人が弾圧され、鶴は殺された。それとびっくりしたのは、井上信子が鶴彬の死を確認し ての帰りに、日常生活に戻ること。ビールを飲んで松茸のフライを食べて、映画を観てい る。それを読んで、今と同じだなァと。また今NHKが古関裕而の朝ドラを放映していて、 そこにこの本をぶつけてきた。うれしいと思った。(ここで佐高さんは古関裕而の作品、 姿勢など話題にする) ◆鶴彬の川柳を中国語に訳す ・奥徒(本人は欠席)—―中国語をたしなむ奥徒さんは、鶴彬が日中戦争時に発表した反 戦句がもとで死んでいったので、その中の2句と見返しを中国語に訳した。中国での川柳 の普及度は不明だが、同じ漢詩から変化していった川柳も理解してもらえるのではないか という。この本の中国語訳をしてもらえないかということだった。 2句を上げる 万岁上战场 高高得举起双手 扔下大陆里 万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た 打掉下手脚 就像成为圆木头 遣送回国了 手と足をもいだ丸太にしてかへし 佐高さんは、加藤陽子さんとの対談『戦争と日本人』という本の中で加藤さんが鶴彬の川 柳を話題にしていて、それが中国語に訳されているという。(『战争与日本人』 2017/9/30中国語版[日]加藤阳子 佐高信(著)) ◆鶴彬の天性のユーモアと優しさ  ・暴風と海との恋を見ましたか  ・蟻食いを噛み殺したまま死んだ蟻 蟻が蟻食いをかみ殺すことはないのに、それがあるように書いている。 乱鬼龍も「暴風と海との恋を見ましたか」は、すごい句、名句だと絶賛する。 白眞弓も鶴彬の初期の作品の「優しさ」に感動したといい、 ・皴に宿る淋しい影よ母よにみる句が、女工哀史のような句につながっていくと思うと。 佐高さんは、落書きを集めた本があるが、下品とか下賤と言われるものの中からエネルギ ーが出て来ることもあると。便所の中の落書きで、学問の難しいものが並んでいる中に「 今は黙ってクソをしろ」というのがあったり(笑)。ロマンティストと言えば、革命が一 番ロマンチックともいえるのでは。佐高さんは最近、柳広司(小説『アンブレイカブル』 著者)さんと対談をしていて、国家に殺された人を小説化している。例えば、大逆事件の 『太平洋食堂』とか。鶴彬にも触れている。(柳さんとの対談のURL https://shinsho-p lus.shueisha.co.jp/interview/sataka_yanagi/22832 ) 城山三郎さんと話をしていて、彼は17歳で海軍に志願しているが、それは志願ではなかっ た。国家や社会がカッコつきで強制したのだという。その時に古関裕而の話が出て、体を 震わせておこった。古関裕而は間違っての招集ということで、1か月で除隊になっている。 ◆「今・ここ・私」を書くのが川柳(ギャラリーから)

鶴彬を取り上げてくださってありがとうございましたと話しはじめたのは高鶴礼子さん( 川柳人・鶴彬研究者)。 ・高鶴礼子――川柳は「今・ここ・私」を書くこと。私の今は何か、私のここ、現在地は どこなのか。私はそれに対してどう思うか。鶴彬は、それを実践した。彼の持っていた詩 人としての感性をもとに、彼の生きた今、彼のいたここ、彼の中の私を書いた。机の上で こしらえた事ではない。鶴の目が見て、頭で感じ、心で受け止めたものを「言葉」にした 。それによって殺された。この本は、平坦に彼の人生を書くのではなく、様々な角度から あぶりだしている。そこが素敵だなと思う。今この時期に鶴彬を書いてくださったこと、 とてもうれしい。鶴彬の全句集をガリ版で出版した一叩人、それを印刷して出版したたい まつ社の大野晋は喜んでいるだろうと言う。 ◆「新しい戦前にさせない!」のタイトルその他について 今日のTVのタイトル「新しい戦前にさせない!」は、佐高さんしている活動の「共同テー ブル」と同じタイトルだが、それについての思いは?という質問に対して、佐高さんは答 える。 憲法番外地になっている状況で、改憲ではなくて「壊憲」になっている。改憲を言う人は 、統一教会に汚染されていると思っていい。今後は、憲法を軸にした闘いになるだろう。 革新的なことを言う人の中にも、憲法を改めた方がいいと言う人がいる。それはだめです よ。城山さんが、「戦争はすべてのものを失わせる。戦争で得たものは憲法だけだ」と言 い切っていた。 中村哲か岸田晋三(岸田首相は安倍晋三との合成)だと言い切る。 軍拡の岸田を選ぶか、砂漠の緑化か。軍では命はまもれないということだ。 その後も軍法会議での鶴の受け答え、天皇制と剣花坊のことなど、様々な話が続く充実し た時間だった。 また、「共同テーブル(代表:佐高信)」で川柳を募集しないかと提案があった。 ◆ジョニーHの5ミニッツコーナー 替え歌は、東雲節に乗せて「鶴彬川柳節」 次回レイバーネットTVは6月14日の予定。テーマは未定。告知にご注意を 今後の佐高信さんの講演会2つ ◎7月16日(日)13時30分〜4時30分   「鶴彬心の軌跡」映画上映と佐高信氏記念公演 文京シビックセンター4Fホール ◎9月3日(日)佐高信氏講演 かほく市(詳細未定)

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