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雇い止め「会計年度任用職員」が立ち上がる!〜働く権利を剥奪する「制度」は違憲

動画(12分)

 3月17日午後1時、東京地裁前に「東ゼン労組(全国一般東京ゼネラルユニオン)」の人たちが集まっていた。裁判の提訴のためだった。手にした横断幕には「会計年度任用職員に団結権を!」と書かれていた。

 東京都立高校で「外国語指導助手(ALT)」として働いてきたダガディさんとドーランさん(写真上)が、今年度3月末での雇い止め通知を受けている。二人とも「東ゼン労組」の組合員で、本来であれば都教委に対して団体交渉ができるはずである。しかし、そこに大きな壁が立ちはだかっていた。それが2020年4月から施行された「会計年度任用職員制度」だった。2020年以前の二人は、団交権を有する「特別職非常勤職員」の身分だったが、それを一方的に「会計年度任用職員」に切り換えられてしまった。


 「会計年度任用職員」の特徴は契約期間が1年であることに加え、雇用でなく任用という名目で、憲法が定める「労働基本権」が剥奪されていることだ。不安定な雇用の上に声も上げられない制度で、東ゼン労組委員長の奥貫妃文さんは「組合として手と足がもがれている状態」と憤りをかくさない。東ゼン労組ALT支部は、東京都労働委員会に「団結権」の救済を求めたが、労働委員会は法律をたてに申し立てを「却下」してしまった。

 こうした状況のなか、当該のダガディさんとドーランさんと東ゼン労組は、東京地裁提訴に踏み切った。内容は「東京都労働委員会命令に対する取消請求訴訟」だが、実質的には「会計年度任用職員制度」の違憲を争うものになっている。



*厚労省で会見する原告団「東ゼン労組」と弁護団

 労働分野の非正規化で労働条件の劣化が進んでいるが、「会計年度任用職員制度」のまやかしは目に余るものがある。この制度で働いている職員の総数は62.2万人で、そのうち、フルタイムで任用されている職員は7.0万人で全体の11.2%、パートタイムで任用されている職員は55.3万人で全体の88.8%を占めている。女性が圧倒的に多い。職種では、約3割が「一般事務職員」であり、次いで「技能労務職員」「保育所保育士」が多い。今回の「外国語指導助手(ALT)」は約2万人である。

 「国家公務員・地方公務員」は、高校生がなりたい職業の第一位である。しかし現実はバラ色どころか、無権利の「非正規公務員」が増え続け職場の「劣化」は止まらない。「いつ切られるかわからない不安でいつもビクビクしている。上司からのパワハラが蔓延している。ストレスでメンタルがやられている」など、公務職場からは悲鳴の声が上がっている。

 こうしたなかで、今回の「東ゼン労組」の提訴は「会計年度任用職員制度」を問う画期的な裁判といえるだろう。指宿昭一弁護士、山本志都弁護士をはじめ、弁護団も強力な布陣が敷かれている。(M)

*レイバーネットTV(3/22放送)では、「いつもビクビク!三年で全員雇い止め〜会計年度任用職員制度の闇」と題してこの問題を特集します。ぜひご覧ください。→レイバーネットTV専用サイト

<事案の概要・・以下、原告団のプレスリリースより>

 本件は、都立高校で長年にわたってALT(Assistant Language Teacher 外国語指導助手)として働いてきた労働者2名の雇用継続や労働条件等に関し、当該労働者の所属する全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン労組) 及び同ALT支部が東京都教育委員会に団体交渉を求めたところ拒否され たことについて、東京都労働委員会が救済の審理対象にあたらないとして申立てを却下した事案である。原告らは、東京都労働委員会の却下決定の 取消しを求めている。

 当該組合員は、特別職非常勤職員(地方公務員法3条3項3号)として稼働してきたところ、特別職非常勤職員は地方公務員法の適用が除外され、労働基本権を有する労働者として団結権と団交権・争議権を行使することができた。しかし、2020年4月1日から施行された地公法と地方自治法の改定により、「会計年度任用職員制度」が発足し、当該組合員らについても、2020年4月以降、本人たちに説明の機会もないまま、一般職 の会計年度任用職員に切り替えられた。

 地公法改定前の2019年3月、原告らは、組合員に関する雇止め問題 について東京都教育委員会と団体交渉を行っており、団体交渉の実績があった。しかし、2020年7月の団体交渉申入れに対して、東京都は「会計年度任用職員については労働組合法の適用がない」としこれを拒否した。同年11月、原告組合がこの団体交渉拒否は不当労働行為にあたるとして 救済申立てをしたところ、東京都労働委員会もこれを追認したのである。

 会計年度任用職員は1年限りの任用ということが強調された上、再度任 用の可否判断の人事評価制度や毎年度1ヶ月の「条件付き採用期間」が設定されるなど、雇用の安定性はむしろ特別職非常勤職員とされていた時期よりも後退している。このような法制度の改悪に加え、さらに東京都労働委員会労働委員会までもが、無権利状態におかれた非正規公務員の労働基 本権剥奪を追認するという事態に至っている。

 本件却下決定は、日本全国の非正規公務員の労働基本権が今後侵害されることを許してしまうだけでなく、日本の英語義務教育をも危うくする。そこで原告らは、このような状況から非正規公務員を本件訴訟を提起した。


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