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ドキュメンタリー映画『百姓の百の声』

資本主義の真逆を生きる人たち

笠原眞弓

 「百姓」という言葉に反応する私。30年近く前に「百姓くらい素晴らしい職業はない」 という言葉と共に、肩書に「百姓」とだけある中山間地酪農のベテラン農家から名刺をい ただき、感動したことがある。前後して多くのお百姓さんと知り合いになったが、彼らの 口から繰り出される言葉は、魔法のように心地よかった。だから、この映画のタイトルを 見た時、すぐにいい映画に違いないと確信を持ったし、期待を裏切らなかった。

 次から次に紹介される方すべてが、魅力的なのだ。何しろ観察と工夫、そして発見。農 業は毎年同じことを繰り返しているようでいて、その年の太陽の当たり方、風の吹き方で 大地は気ままに様子を変える。油断もスキもないのだ。

 徹底した観察と記録、実験をする人は、まるで科学者だ。切って放置しても茶色くなら ない(酸化しない)りんごの作り方やコメの肥料との関係を調べ、新しい技術に挑戦する のは、夢のかたまりのよう。

 なんと、子どもに農作業中にこんな虫を見たとか、楽しい話だけをしていたら、息子が 農業を嬉々として継いでいたというのも素敵だ。

 600種のコメの種を持つ人はコメ文化を支えて来た赤米・黒米が大事にされないのは、 減反政策で自由にコメがつくれない自分と重なったからと収集の動機を語る。

今農家の間で問題視されている種苗法にも話は及ぶ。企業は新品種を開発すると独り占め してお金儲けをするが、農家は自作の新品種でも惜しげもなく人に分けて結果的に種を守 っている。さらに、苦労して開発した技術も発表し、広めることを優先する。

 会社組織で広い田んぼを耕作する人は、コンバインを1台しか持たず、過酷労働になら ないように管理する知恵を語る。

 最後に登場した、福島から甲府に避難した農家は、たった1株持ってきたタラの木の変 わった特徴に気づき、それを増やしてさらにほしい人に無償で分けるため畑で重機を操作 して汗を流す。

 それが、日本のお百姓さんなのだと、つくづく思ったのだった。(消費者レポートより 加筆訂正版)

監督:柴田昌平 130分

11月5日よりポレポレ東中野で上映。全国順次上映


Created by staff01. Last modified on 2022-11-06 10:43:55 Copyright: Default

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