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小中学生にも観て欲しい〜慰安婦になった少女の友情を描いた『雪道』

堀切さとみ

 8月10日、レイバーシネクラブは韓国映画『雪道』を観て、討論会を開きました。

 猛暑の中を大塚駅から歩いて10分。「シネマハウス大塚」には若い男性客も含め、沢山のお客さんがいました。劇場の外で、観たばかりの映画について知らない人どおしが話をする光景もみられました。大塚駅前のカフェで討論会には8名が参加しました。

『雪道』は従軍慰安婦にさせられた、チョンブンとヨンエという二人の少女が主人公。皇民化教育を受け、日本軍のために協力させられた暮らし、日本語を流ちょうに話すことが強制される中で、朝鮮国内に根づいた女性の劣悪な境遇も描かれています。日本軍慰安婦として少女がどのように連行されていったのか。貧しいチョンブンと、豊かな家庭に育ち教育を受けることもできたヨンエという対照的な二人が、満州での過酷な体験の中でお互いを支えながら生き抜く姿が、深く心に刻まれました。

 この映画のもう一つの見所は、戦中のことを軸にしながら、現在の韓国社会でもがく若い世代にも光を当てていることです。老女になったチョンブンが、同じ半地下アパートの隣りに住む貧しい女子高生と交流し、慰安婦だった体験を語って聞かせるのです。そこにチョンブンが生き延びたすべての意味が凝縮されているようにみえました。  韓国では世代間や男女の意識の格差が著しいといいますが、それは日本でもまったく同じだと思います。伝えなければならない、しかし伝えることの難しさ。

 以下、討論会で出た感想を紹介します。

「決してどギツイ描写はないのだが、慰安婦がどんな状況に置かれていたのか、過不足なく伝わった。日本人と朝鮮人の慰安婦の待遇の違いなどもよくわかった」

「数百人いた朝鮮人慰安婦のうち、今も生存しているのは11名だという。わずかに生き残っているハルモニの証言を受け止めなければいけないと思った」

「数年前に初めてこの映画を観たときと、印象が随分ちがった。日本を敵(かたき)とする映画ではない。史実として、女性の生きにくさを描いた映画だと思った」

「日本政府への怒りをもっと掻き立てて欲しかった。慰安婦の人達はなぜ50年も言えなかったのか」

 ・・・あれだけの民主化闘争を担った韓国でも、女性の置かれた状況は変わっていないようです。フェミニズムへの反発、物言う女性は嫌われる。その理由の一つが兵役の義務なのではという意見もありました。また、ユニクロは男女の衣服の仕立ての強度を変えているという話にもおよびました。

 慰安婦だったことを明かせば、故郷でも迫害されることは当事者にはわかっていました。「満州では看護師、あるいは工員として働いていたんだと言おうね」と、二人の少女が語り合う場面が出てきます。何の落ち度もない100%の被害者が、その事実を隠さなければ生きていけない。それをいいことに「慰安婦なんてなかった」ことにされてしまうのです。日本では、歴史教科書から慰安婦の記述を削除しました。ほんの数行でいいから遺すべきだという運動もありましたが、これによって、教科書に載っていないことを教える教師は問題教師扱いされるようになります。たとえどんなに小さな声でも、そこから事実を受け止める力を育てていかなければいけないと思います。

『雪道』は、小中学生が観るにも素晴らしい映画だと私は思いました。『はだしのゲン』のように。子どもには残酷すぎるといって閲覧禁止にした自治体もありましたが、残酷な歴史を繰り返さないためにも、この映画が広がっていくことを応援したいです。まだの方、期間中、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。

 シネマハウス大塚で8月6日〜8月19日、8月27日、28日 1日3回上映。

 詳細案内→http://www.labornetjp.org/EventItem/1655800514027matuzawa


Created by staff01. Last modified on 2022-08-11 18:45:35 Copyright: Default

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