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●梨の木ピースアカデミー第6期 福島から見たポストコロナ時代

小出裕章×高橋哲哉対談企画 「ウクライナ危機から捉え直す福島原発と植民地」開催報告


 梨の木ピースアカデミーが「ウクライナ危機から捉え直す福島原発と植民地」と題して、小出裕章さんと高橋哲哉さんの対談企画を行った。5月20日、東京・水道橋の韓国YMCAで開催された。それぞれ専門分野も活動領域も違うお2人を結ぶ接点は、原発問題の本質を差別と植民地主義と捉えている点だ。高橋さんは、従来沖縄の基地問題について使用していた「犠牲のシステム」を原発問題にも応用し、説明した。犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの犠牲なしには生み出されないし、維持されないのであり、4つの分野で犠牲のシステムが見られると指摘した。

 第1に、事故の被害そのものであり、福島第一原発周辺数十キロは激しく放射能で汚染され、故郷を喪失した人もいた一方、大量の電力を消費してきた大都市は、相対的に汚染は少なくて済んだ。第2に、被ばく労働であり、電力会社の正社員よりも下請け労働者がより多くの被ばくを受ける現実がある。第3に、ウラン鉱山鉱山での採掘作業に関わる犠牲だ。ウランが採掘できる地域は、オーストラリアや米国など先住民が住む土地が多く、先住民は土地から追い出されたり、採掘に従事させられている。第4に、核のゴミ問題であり、原発により生産される電気を多く消費してきたのは古い世代だが、若者世代、将来世代には核のゴミだけが残され、その管理や処分を押し付けられる結果になる。

 一方、小出さんは、事故から11年が経過したものの、いまだにきちんと事故の責任を東京電力も政府も取っていないと指摘した。そして原発推進派が事故から学んだ最大の教訓は、どんな被害を生もうと、誰も処罰されないし、責任を取らなくてよいということであり、さらには福島イノベーションコーストを例に出し、「復興」と称して大儲けをしようとしている現実を厳しく批判した。2人の対談では、戦前から犠牲のシステムがあり、戦後も沖縄や原発立地域で特に色濃く継続している事実を確認し合った。このような問題意識は、2人の間で、あるいはこのイベント会場では広く共有できるが、一歩外に出たとたん、まるでそのような現実がないかのように動いている社会も存在する。どうすればそういう社会を変えられるのか、今後の課題として残った。

 ウクライナ危機から明らかになった戦争と原発の問題に関しては、外務省が1984年に国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を極秘に研究していた事実を、高橋さんが指摘した。その報告書では、最悪の場合、最大1万8千人が急性死亡すると試算している。一方、小出さんは、そのような結果はありうるものであり、シミュレーションの仮定を変えれば、よりひどい被害も日本で起こりうると指摘した。本イベントには現地に約30人が参加、オンラインに約70人が参加し、盛況の中、終了した。

☆こちらの企画は現在、梨の木ピースアカデミー公式ホームページより、録画アーカイブの販売を受け付けています!
録画アーカイブのお申し込みはこちら↓
https://ticket.tsuku2.jp/events-detail/02105102102439

(梨の木ピースアカデミー:コース5コーディネーター高野聡/日比野千佳)


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