本文の先頭へ
LNJ Logo フランスの大統領選(2)悪夢の選択とフランスの新たな政治地図
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0421pari
Status: published
View



 第81回・2022年4月21日掲載

フランスの大統領選(2)悪夢の選択とフランスの新たな政治地図

 4月10日のフランス・大統領選の第一次投票が行われた。首位は現大統領エマニュエル・マクロン(有効票の27,85%、約978万票)、2位が極右「国民連合」候補のマリーヌ・ルペン(23,15%、8,133,828票)。政策綱領「共同の未来」を通して、抜本的な社会・環境政策と民主主義の活性化を主張した「屈しないフランス・民衆連合」のジャン=リュック・メランションは、21,95%(7,712,520票)を得票し、421,308票の僅差で決勝戦に残れなかった。4位は極右のゼムールで7,07%(249万票弱)、5位が保守「共和党」の候補ペクレス4,84%(168万票弱)、6位に緑の党ジャド4,63%(163万票弱)と続く。*写真=「6月12日・19日 もっとうまくやるよ! 民衆連合と共にコーアビタシオンを押しつけよう」(4月16日パリの反極右デモで。筆者撮影)

新たな政治地図:3つの政治勢力(陣営)

 前回2017年の第一次投票ではマクロン、ルペン、フィヨン(保守)、メランションの順で、4つの勢力が接戦で24,01%〜19,58%(4,43%以内の差)を得票した。今回は3つの勢力が他を大きく離して現れた。マクロンは前回、「右でも左でもない」「同時に右と左」の中道として、既存の中道保守の政党だけでなく社会党とその支持層の右派を吸収した上に、大統領に就任すると保守の政治家も首相と大臣の複数ポストに抜擢した。そして直ちに、富裕層のみに有利な保守のネオリベラル政策をとったため、総選挙で社会党ほどは弱体化しなかった保守「共和党」は、野党の第1党だったがマクロンの政策に対抗しなかった(国会で対抗し続けたのは、少数左派野党の「屈しないフランス」と共産党。社会党はこの双方を合わせた議員数がいたが、生ぬるかった)。

 その結果、今回、さえない候補者を見限った保守支持者からマクロンにかなりの票が流れて、5%以下という前代未聞の信じがたいスコアになった(世論調査を4%以上も下回った)。つまり、マクロンへの投票の増加は、保守支持者によるところが大きい。65歳以上の40%がマクロン支持で(高齢層は従来、棄権が少なく保守支持が多い)、またウクライナ戦争の勃発という状況下で、「現状維持」を望む保守層がマクロンに多数投票したと見られている。マクロンへの投票率が高い場所は大・中都市と豊かな郊外であり、中産階級以上の(ネオ)リベラル政策支持層、とりわけ年金生活者層(43%がマクロン支持)による。マクロン支持層はブルジョワジー勢力と呼べるだろう。後述するが、2017年の大統領選の際すでに社会党・緑の党の統一候補よりマクロンを選んだ左派ブルジョワジーは、マクロン陣営に居を定めたのだ。

 ルペンの得票は、2017年第一次投票768万票弱より45,5万票(1,9%)増えた。同じく極右のゼムールを合わせると30,22%(1000万票以上)、極右に近いもう一人の候補が得た2,06%を合わせると、実に32%以上も極右は得票したことになる。この3人の合計(1134万票強)は、前回の決選投票でのルペンの得票1064万票弱を上回る。極右の言説は、ジャン=マリ・ルペン(マリーヌの父)の時代から「移民排斥・治安」をテーマにフランス社会に浸透し、2002年の大統領戦ではルペン父が社会党候補を僅差で超え、決選投票に残った。その時の得票数は第一次 480万票(棄権率今回より高かった)、第二次553万票だから、20年間に極右票は2倍近く増えたことになる(2007年の大統領選では、サルコジが極右支持層の票を食ったため383万票に減り、以後娘マリーヌによる党の再建が始まる)。

 ルペンは前回2017年大統領選の際も大・中都市から離れた「都市周辺périurbain」と農村部で最も得票し、低所得層(庶民層)の支持者が多い。政策内容を見ると決して富の分割を促すものではないのだが、ルペンが庶民の味方であるかのようなイメージ作り、差別的言説にもかかわらず「マイルド」な女性党首のイメージを拡散するのに、メディアは大いに加担した。また、マクロンは2019年の秋、「超保守」の週刊誌へのインタビューで極右の語彙を用いて左派の市民にショックを与えたが、2020年の秋からは極右が掲げる「治安・移民」テーマを前面に押し出した。2017年のマクロン対ルペンのシナリオを再現して勝とうという戦略であり、メディアはこの「マクロン対ルペン」のお膳立てに加担した。コロナ危機が続き、貧富の差の拡大や自由の制限など重大な社会問題が起きていたのに、それらをテーマに取り上げるのではなく、治安やイスラム教徒敵視の極右のテーマを増幅させたのだ。何より、ルペンより過激な差別発言をするゼムールを頻出させて差別的言説をはびこらせ、二人の極右候補の対比を騒ぎ立てた結果、ルペンの「国民連合」が極右だという認識が薄くなった(前回のコラム参照)。

第3の勢力(1)社会民主主義政党の衰退

 ジャン=リュック・メランションは2008年に社会党を抜けて「左の党」を作り、2012年 に共産党と「左翼戦線」を組んで大統領選に初出馬した。2005年のEU憲法条約の国民投票の際、ネオリベラル・市場競争の論理が明記された内容にメランションは反対を唱えた。保守と社会党双方の内部で意見が分かれた国民投票の結果は、55%がノーだった。賛成派(左右とも多数派)とメディアは反対者を国粋極右だと決めつけ(国粋主義による反対はもちろんあったが)、EUのネオリベラル政策に反対する左派の批判を封じこんだ(ブレグジット議論の際と似ている)。サルコジ大統領の任期中、EU憲法条約はリスボン条約として国会で批准されたが、国民投票の結果を踏みにじるこの行為は、保守・左翼両方の政治と民主主義機構に対する不信と幻滅を引き起こした。民意の無視は、政治的に重要なトラウマとなった。

 メランションは、ネオリベラル政策を進める社会民主主義(既成左翼政党)と袂を分かち、民衆の要望に根ざした新たな左派勢力の構築をめざした。2012年の第一次投票で11,1%の得票(398万票強)。2017年の大統領選第一次投票では19,58%(706万票)を獲得し、国会で17人の議員からなる「屈しないフランス」会派を形成した。今回は、さらに65万票以上増やして21,95%を得票し、第3の政治勢力となった。

 ちなみに、2012年と2017年の大統領選で共闘したのに、今回は独立候補を立てた共産党の得票80万票(2,28%)が加わっていれば、41万票差だったルペンを凌いで決選投票に残れたのである。キャンペーン中に社会党、共産党、緑の党は、マクロンや保守、極右の政策を批判するより、メランション叩きに力を注いだ。第一次投票の結果が出た後、これら3党の候補が得票できなかったのは、左派有権者がメランションに「有効投票」を投じた(死票にならないように、支持しないがマシな候補に入れる)からだとコメントされたが、それは事実に反する。ある出口調査では、メランション投票者の8割が「政策・政治方針に賛成」と答えている。また、世論調査(メランションの得票率を5%も低く見積もっていた)と最終結果を見ると、メランションは2月末から11〜12ポイントも上昇したが、社会党(1,75%という史上最悪の得票率)、共産党(2,28%)、緑の党(4,63%)の合計は、2月末の合計に比べて2,8ポイント減にしかならない。

 ちなみに今回、社会党と緑の党の得票率の合計6,38%(224万票)は、2017年の社会党・緑の党統一候補アモンの値6,36%にほぼ合致する(票数では少し減少)。つまり、社会民主主義路線(ネオリベラル政策受容)の政党支持層は6%強にすぎないのだ。2012年にサルコジを凌いで大統領に当選したオランドは、第一次投票の際に28,63%、1027万票を得票した。期待と公約に反したネオリベラル政策、緊急事態宣言やデモの過剰弾圧を行ったオランド政権5年間の後、左派の有権者の多くはすでに市場論理を優先する社会党を見限ったのだ。そして、社会党支持層の右派(ブルジョワジー)はマクロンに投票した。

 では、メランションのキャンペーン最終段階の追い上げは何によるかというと、棄権が多いとされる二つのカテゴリー、若者と都市郊外の「恵まれない地区」(移民系・低所得者層が多い)が多数投票したためだと分析されている。2017年の大統領選第一次の際すでに、18-24歳の若者層でメランションは得票率が最も高かった。今回も18-24歳(34%)と25-34歳(31%)の若者層でトップとなり、前回よりさらに多く得票した。35-49, 50-64歳ではルペンの得票率が最も高く(29%)、65歳以上はマクロンが圧倒的に高い(41%)。気候危機や社会危機を懸念して(彼らが最も被害を受けるのだ)抜本的な政策変革を求める若者たちは、メディアが流布しなくてもネットで政策綱領「共同の未来」の存在を知り、各地で多数行われたメランションと民衆連合の集会に足を運び、メランションに票を投じた。それに対して、第二次大戦後の経済成長と福祉の充実を最も享受している65歳以上の高齢層(の裕福な人たち)は、年金受給の権利を現在の62歳から65歳に引き上げようとするマクロンを支持し、マクロン対ルペンという悪夢の選択を若者たちに強いたのだ。

第3の勢力(2)政策綱領と民衆連合による再建

 メランション支持の若者層の多くは都市部に住む高学歴の中産階級だが、ネオリベラル政策が増大させた不安定雇用や家賃高騰の現実に直面している。片や、メランションの得票率がとても高かった「恵まれない」都市郊外と海外県・海外領土では、失業・低所得や不安定雇用による生活難に加え、レイシズムと反移民・反イスラム差別を受けやすい人が多い。メランションのキャンペーン・チームは、棄権率の高い郊外や都市辺境部の社会住宅団地(HLM,HBM)で頻繁に戸別訪問を行って住民と話し、選挙人リストへの登録を促し、政策綱領「共同の未来」の内容を伝えた。その結果、例えばパリの北郊外セーヌ・サン=ドニ県(平均所得が全国で最も低い)ではメランション49,09%、マクロン20,27%、ルペン11,88%の得票率だった。60%を超えた市もある。パリでも北東部(18区、19区、20区)はじめの庶民地区でメランションはトップになり、全体でマクロン党に次ぐ成績だった。モンペリエ、マルセイユ、リール、ナント、ストラスブールなど社会党と緑の党が市町村選挙で勝った大都市でも、また保守が市長のトゥールーズ、ル・アーヴルなどでも、メランションはマクロンを凌ぐ得票率を得た。それらは何週間、何ヶ月間もボランティアたちが行ってきた戸別訪問や、「選挙人登録と市民の権利」キャンペーンの成果といえる。

 レユニオン島、アンティル諸島、仏領ギアナなど、全世界にまたがるフランスの海外・領土は生活水準が本土より低く、若者の失業率も高い。その上、住民は気候変動による害や殺虫剤使用が引き起こした環境汚染・健康被害などに苦しむが、本土の政治家とメディアから全く軽視・蔑視されている。メランションは海外県・領土を気候変動に対する闘いと、レイシズムに対抗するクレオリザシオン(異文化の混成から生まれる開けた社会)の先端と捉え、キャンペーンをレユニオン島から始め、「水」へのアクセスや海洋の保護を重要なテーマに掲げた。こうして第一次投票でグアドループ、マルティニーク、仏領ギアナで50%以上、全体でも首位(40%)を得票し(棄権率も多少改善)、前回首位だったルペンに大きく差をつけた。

 ルペンは農村部と「都市周辺périurbain」(2000〜10万人の市)で多く得票している。マクロンは10万人以上の大都市だけでなく、高齢者が多いためか農村部と小中規模の市でも得票率が高い。メランションはSNS網へのアクセスが低い層に入り込めていないが、ある研究者の分析によると、棄権が多い労働者、失業者、非正規・不安定雇用労働者、低所得者層において今回は得票率を増し、これらの層へのルペンのさらなる浸透と棄権の増加を防いだ。社会党・共産党が見捨てた庶民層(民衆)を、急進的な社会・環境政策によって再びつかんで政治の主役に据えるという目的に、少し近づいたと言えるだろう。また、干害など気候変動の被害がすでに顕著なフランス南東部の農村地帯でも、支持率が上がったという。

 今回の民衆連合の得票22%に、旧左派勢力(緑の党、共産党、社会党)と極左候補者の得票を合計すると左派は32%弱、1100万人の陣営となる。極右陣営は32,3%、マクロンと保守を合わせたネオリベラル・ブルジョワ陣営が32,6%である。従来の左右二陣営に代わって、3つのほぼ同量の支持層を持つ陣営ができたといえる。それに加えて、前回より多い棄権した人々(26,3%)がいる。政治に幻滅して棄権する人々や、選挙人登録をしていない人々に働きかけ、民衆連合を中心に左派の新しい政治勢力を固めていけるかどうかが今後の課題である。

悪夢の選択を超えて

 マクロンの目論見通り、2002年、2017年に続いて保守対極右の大統領選決戦投票が4月24日に行われる。「極右を防ぐための共和国の防波堤」が再び呼びかけられているが、20年前、5年前とは異なる点も多い。まず、警官組合(マクロン政権下に極右性が顕著になった)は、呼びかけない。今でさえ警察による暴力はまともに罰せられないが、ルペンは治安部隊の行為すべてに対して無罪推定を約束している。経営者団体も呼びかけない。

 メランションは「極右に一票も入れるな」と第一次投票後のスピーチで述べ、キャンペーン・サイトへの登録者(支持者)30万人強に対して意見聴取を行った(白紙・無効投票、マクロン、棄権の3選択肢)。5年前も同じ言葉と原則(投票者の票は自分のものではないから、各自が責任を持って判断する)だったが、「共和国の防波堤」としてマクロンへの投票を呼びかけた人々と主要メディアは当時、そのことでメランションを叩いた。今回も同様に、マクロンへの投票を明示せよという声がある。前回の決選投票の際にルペンは大差で敗れた(66,1%-33,9%)。ルペンに流れた票は、保守フィヨンから(20%)の方が、メランション(7%) よりずっと多かったのだが、メランション支持者は常に疑われ、叩かれる。世論調査でカトリック教徒の40%が極右(ルペン、ゼムール、デュポンテニヤン)に投票したという結果が報道されても問題にされないが、イララム教徒の7割がメランションに投票したことは「コミュニティ主義」と批判されるのと同じく、メディアの言説にはバイアスがかかっているようだ。

 5年前のマクロンは政治家としての経験が皆無で、中道を自称してレイシズムを告発したため、左派でマクロンに投票した人は多かった(2002年シラク当選の時より少なかったが)。しかし、5年の任期の間、マクロンは庶民に対して侮蔑に満ちた数々の言葉を発し、富裕層優先のネオリベラル政策で低所得層を痛めつけた。治安部隊による過度の暴力的弾圧によって痛めつけられた人も多い(数々の重傷者、死者さえ出し、大勢が不当に有罪になった)。マクロンは警察による暴力を増大させただけでなく、市民の自由を束縛・制限する法と措置を次々にとって、ファシストが当選したら法治国家をすぐに崩せるお膳立てをした。さらに反イスラムの極右の言説まで取り入れたのだ。この5年間、マクロンの政策と措置に抗議し、市民と共に唯一闘ってきた政治勢力は「屈しないフランス」だけだ。何もしなかったどころかメランションを批判・中傷し続けた人々は、第一次投票後に初めて「共和国の防波堤」を言い出したのである。ルペンの「脱悪魔化」を率先して進めてきたメディアも、急に「極右」という語彙を使い出し、「国民連合」がロシアから融資を受けたことやルペンの収賄疑惑を報道する。

 何より悔しいのは、第一次投票が終わってようやくメディアも政策綱領に興味を持ったようだが、マクロンのもルペンのもお粗末な内容のため、重要なテーマ(マクロエコノミー、貧富の差の拡大、エコロジー、公共サービス、住居難問題、民主主義の再生、男女平等とマイノリティの権利促進など)が吟味されずに、薄っぺらな言葉の応対に終わることだ。ルペンは「購買力」の擁護を強調して庶民の味方のふりを続けるが、経済政策の内容はネオリベラルであり、彼女の措置は豊かな層にしか利さない。福祉から外国人を排除する差別措置など、政策の要はレイシズムだ。一方マクロンは、「共同の未来」の語彙を借りた「エコロジー転換計画」やら「市民と共に統治」など、内容は曖昧模糊(ゼロ)なキャッチフレーズを連発するが、ネオリベラル思考を変える兆しはなく、騙されたい人しか騙されないだろう。双方とも原子力推進だが、EPR建設予算をどこから出すのかさえ不明のいい加減さだ。この事態を避けるために、各候補の政策綱領を公平に比較する努力を第一次投票前にメディアがしなかった(マクロンが拒否したので、恒例の「候補者間テレビ討論」さえ今回催されなかった)のは、本当にひどい。

 マクロンとルペンの「テレビ討論」が行われる前夜の4月19日、民間テレビ局のインタビューでメランションは国民に向けて、自分を首相に選出してほしいと述べた。民衆連合をさらに発展させて国会で過半数を取れれば、与党として「共同の未来」の政策綱領を施行できるという論理である。第五共和政の憲法で国政を決定し司るのは「政府」であり、首相は政府の長として国会に対して責任を持って政治にあたる。つまり、国会で過半数の議員を選出できれば、その与党の政策を行う首相と閣僚を選ぶことになる。メランションは6月の総選挙でなるべく多くの「民衆連合」の議員を選出するために、政策綱領に賛同するすべての政党や団体、個人との共闘を呼びかけたわけである。

 第五共和政は大統領に権力が集中しやすいが、7年任期の時には途中の総選挙で大統領とは別の党が与党となって政府を作る「コーアビタシオン」(ミッテラン左翼政権下で2度、シラク、バラデュール保守政府。シラク保守政権下のジョスパン左翼連合政府)があった。それで、国会議員の任期5年に合わせる憲法改正が行われたのだが、それによって大統領が首相の権限を専有して全て一人で決める傾向が強まり(サルコジ)、マクロンに至っては与党に属さない保守の政治家を首相や大臣に抜擢して、立法も自分の取り巻きに用意させた。メランションはもともと第五共和政に反対で、より民主的な第六共和政をめざす。しかし、この共和国の窮地を脱し、国会に本来の権力を取り戻させようという、独創的な戦略を考えついた。大統領選以外に関心を抱かなくなった市民に対して立法と国政の本来の意味をアピールし、とりわけ僅差で敗れて失望・落胆している若者や低所得層の人々に新たな希望を与える、闘いの続行を呼びかけたわけだ。

 民衆連合は緑の党、共産党、反資本主義新党に書簡を送り、政策綱領への賛同を元に、6月の総選挙で過半数を狙う共闘を呼びかけた。これまでの恨みや裏切りを克服し、1100万、1200万、1300万人の政治勢力を形成できれば、社会・環境・民主主義の急進的な変革を行えるという趣旨である(しかし、政策綱領の内容に対して差異が大きすぎたら、またそれぞれの党・組織の利を優先したら、それはできない)。

 4月20日のマクロン・ルペン討論は案の定、人々に希望を抱かせ未来の社会ビジョンを描けるような要素は一つもない、凡庸でひどい内容だった。民衆の生活難を解消する賃上げや価格凍結、富の分配、気候変動に対する抜本的なエコロジー転換計画の内容など、肝心なことは何も議論されなかった。ルペンでなくメランションが討論相手だったら、どれほど市民の意識が高まったことだろうか。  「もう一つの世界」の可能性を大統領選第一次投票と悪夢の選択で終わらせずに、三つ目の闘い(6月12日、19日の総選挙)に向けて新たな挑戦が始まった。差別主義・国粋主義に民衆が取り込まれるのを食い止め、人間社会と環境の破壊を進めるネオリベラル政策に終止符を打つ、急進的な社会変革の政策綱領がここにある。それに基づいたヒューマニズムを語る勢力がフランスで育ち、広がった。「生命がいちばん強い、闘いがいちばん強い」とメランションは語る。この新しい政治勢力の存在は、おそらく世界各地の人々に希望を与えているだろう。

★フランスの大統領選(1)「もう一つの世界は可能だ」
http://www.labornetjp.org/news/2022/0407pari

 2022年4月21日 飛幡祐規


Created by staff01. Last modified on 2022-04-21 10:56:06 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について