本文の先頭へ
LNJ Logo 米国労働運動 : アマゾンで最初の労働組合が組織化される!
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0401us
Status: published
View


【解説】昨年4月5月7月とアマゾン社での組織化の動きを伝えてきたがそのいずれも成功していなかった。しかし、ついにアメリカ第二の巨大企業アマゾン社で初めての労働組合が誕生した。しかも組織化に成功したのは産別組合にもナショナルセンターにも属さない独立労組のアマゾン労働組合ALUである。勝利が決まったのが3月31日、その翌日4月1日のレイバーノーツの記事を翻訳した。(レイバーネット国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アマゾンで最初の労働組合が組織化される!

  2022年4月1日
ルイス・フェリス・レオン(レイバーノーツ・スタッフ)
*2,653票対2,131票で組合組織化を勝ち取ったアマゾン労働組合ALU

 ディズニー映画に出てくる魔法のような話だ。昨日、ありえないような事が現実になった。ニューヨーク州スタテン島のアマゾン社の配送センターで行われた組合認証選挙で、独立の労働組合、アマゾン労働組合ALUが、この巨大企業に対して歴史的勝利を収めることになったのだ。

 開票前、ほとんどの報道はこの独立組合の組織化の可能性を否定し、この組織化を珍しい話として扱っていた。3月31日の夜、ALU財政部長のマデリン・ウェスリーは、「私たちは無視されてきたと思います」と語った。「明日勝利すれば、それが間違いだったと分かると思います。」

 本日4月1日ALUは決定的な勝利を収め、全米に広がるアマゾンの施設で初めての労働組合を大差で勝ち取った。同社の施設はニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどの大都市圏に集中しており、さらなる組織化の道が開かれることになった。

 スタテン島の配送センターでの投票結果は、組合結成への賛成2,654票に対し、反対2,131票だった。疑問票は67票、無効票は17票で、8,325人の労働者が投票権を持っていた。

「ジェフ・ベソス社長が宇宙に行っている間に、私たちは組合を組織できたので、ベソスに感謝したい」と、ALU委員長クリス・スモールズは正式な選挙結果が発表された後で述べた。スタテン島にある別のアマゾン倉庫、LDJ5では、4月25日にALUによる組合結成の投票が始まる。

●リーダーをマッピングする

3月31日の夜、ブルックリンでは、投票箱10箱のうち最初の6箱の開票が終わった後、労働者たちは信じられないと興奮して、ヒップホップに合わせて踊り、笑っていた。

ブッシュウィックにあるビルの外で、ALUデリック・パーマー副委員長は、「とても勝目がないように思えました」と、一言一言に重みを持たせて強調した。「しかし、全米で2番目に雇用人数の大きい会社での組織化に挑戦して、成功したのです」。

パーマーさんはアマゾンの広大な倉庫群で3年間、梱包作業員として働いている。彼の部署にいる100人のうち、70パーセントは賛成票を投じたと推測している。

「自分の部署ほとんど全部をひっくり返したようなものです」とパーマーさんは言う。「私がやったことは職場仲間のグループを観察して、その中のリーダーを見つけることです。そのグループの皆はそのリーダーが言うことを聞くからです。」

独立組合のALUは、さまざまな労働組合や地域団体からボランティアの支援を得て、職場の労働者への電話掛け作戦を行い、組合への支持率を調査した。

「私たちのデータでは、支持率は約65%でしたが、回答してくれる人たちは支持者である可能性が高いので、当然ながら多少の誤差はあります」とリーダーの一人であるマデイー・ウェスリーは言う。

記者が話を聞いたほとんどの労働者は、組織化に関する専門用語を使わなかったが、職場のマッピングはちゃんと作成していた。「オーガナイザーがいて組合支持が強いのはどの部署で、どのシフトか分かっていました」とウェスリーさんは語る。

ALUの組合員であるジャスティン・メディナによると、ALUの組織化の能力とボトムアップの組織化手法は戦前の共産主義者でオルガナイザーだったウィリアム・Z・フォスターの著書『製鉄産業における組織化手法』の賜物である。彼女は組織委員会のメンバーと一緒にこの本を読んで議論し、仲間にも渡して読んでもらった。

●職場内の活動

 組織化活動は労働者自身が中心だったので、その信頼性を高めることになった。アマゾン社は組合潰しのコンサルタントを雇って、労働組合を外部の「第三者」として描こうとしたが、失敗した。なぜなら、労働者たちはその疑問をALUの仲間にぶつけて話し合ったからである。

 休憩室での会話が決定的だった、とパーマーさんは言う。「私は休みの日に一日10時間くらい休憩室で、食べ物を配ったり、労働者と話したり、情報を提供したりして、組織化活動をしていました」。

 スモールズさんは、仲間に「私と会話しよう」と呼びかけたという。「会社から聞いた話や噂を鵜呑みにしないでください」。しかし、団体行動も重要だった。「行動することで、恐れないことを示したのです」とスモールズさんは言う。「会社の前で集会を開いて、言葉より行動の方が物を言うことを示したのです」。

 スモールズさんは2020年3月、会社がCovid感染から労働者の安全を守れなかったことに抗議して職場放棄を組織した。アマゾンはその後、Covidの規定に違反したことを理由にして彼を解雇したが、この事件はマスコミでも報道された。

 この報道により、スモールズさんは組合組織化の代表的なリーダーとして評価されるようになった。しかし、マスコミの注目について聞かれると、これは集団的な闘いであり、ALUは民主主義の原則に基づき、すべての決定は投票で行われることを強調した。「私は暫定委員長に過ぎない。委員長なのは一時的で、労働組合は私の物ではなく、みんなの組合なのです」と語る。

●配送センターはまだたくさんある

 3月31日の夜、小雨の降る中、スモールズ委員長は組合の本部を置いているブルックリンのアパートを指差した。「活動を担っているのは20人の中心的な組織化委員と、100人以上の労働者による組織化委員会です。最初は4人だったんですよ」

 ALUが産別組合に加盟することを検討するかどうか尋ねられた彼は、「最初から一緒にやってきた人たちと一緒でないと。独立労組でいたいし、その方が良いのです。独立労組だからここまでやってこれたのです。」と答えた。

 しかし、「誰かアマゾンと闘おうと言うのなら、大歓迎です。アマゾンの施設はいくらでもある。よりどりみどりだ!」。とつけ加えた

 スモールズさんはヒップホップのホープから労働組合のリーダーになった。「人生はクレイジーだ」と言う。「それしか言いようがない。こんなことになるなんて誰が想像できるか?」


Created by staff01. Last modified on 2022-04-02 19:07:05 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について