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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(2/17) : 「Society5.0」社会の到来で誰もが幸せになれるのか?
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●根津公子の都教委傍聴記(2022年2月17日)

「Society5.0」社会の到来で誰もが幸せになれるのか?

 傍聴者にはZOOM配信をしないで教育委員がZOOM出席とはまずいと気づいたのか、今日の定例会には1人がZOOM参加でほかの教育委員は会場に来ていた。
 議題は、公開議案が 屐Society5.0を支える工業高校の実現に向けた戦略プロジェクト Next Kogyo START Project』の策定について」、公開報告が◆崔羈惺傘儻譽好圈璽ングテスト(ESAT−J)の取組状況について」、「今年度学校における働き方改革について」。非公開議案で懲戒処分案件が7件、報告でも懲戒処分案件が議題にあがっていた。

 屐Society5.0を支える工業高校の実現に向けた戦略プロジェクト Next Kogyo START Project』の策定について」

 「Society 5.0」ということばが3年ほど前から、都教委に登場するようになった。私は理解できていないが、読者の中にも理解できない方がいらっしゃるのではないか。内閣府の説明によると、「Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」で「狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画(2016年〜)において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された」という。
 さて、議案の「策定」について。「高度IT社会の工業高校に関する有識者会議を2020年12月に設置し、21年4月に「提言」を公表、そして2021年11月に発表した「(策定の)中間まとめ」に対して寄せられた都民や中高生の意見を反映させて今回、標記の「策定」に至ったとのこと。
 その中身は——「工業高校の将来像は、Society5.0時代に、創造的な活動により、新しい価値の創出や都市課題の解決に貢献できる技術人材を輩出」することにある。そのために工業高校では、「企業等との連携により新しい知識や技術をキャッチアップする」「課題解決型学習の推進により創造的な活動の楽しさを実感する」「IT等の学習の充実により今後の創造的活動を支える力を育成する」と。

 プロジェクトの各施策では次を挙げる。
1)「DX(注)人材育成等に向けた先進的な工業高校の実現」では、「新しい学科等の設置など、工業系学科等のアップデート」「企業等との連携推進や交流機会の創出」。
2)「未来を切り拓く教育内容・指導法の展開」では、「生徒自らが問題点や課題を発見し、解決方法を模索するなどにより、ものづくりのプロセスを学ぶプロジェクト・ベース土・ラーニングを全校で推進」「工業IT科目の導入」等。
3)「生徒が躍動する研究機会の創出」では、「企業や大学の施設等の活用により、生徒にデジタル技術などの先端的学習を実施」「海外の先端技術などを広く見聞するため、生徒を海外に派遣」。
4)「魅力の向上・発信」では、「将来像に相応しい学校名称を検討」「教員の先端技術学習の研究活動を支援」「DX実習設備の導入、時代に相応しいスマートな実習機材の導入や老朽化した実習機材等の更新を推進」等。
 (注)デジタルトランスフォーメーション:進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念。インターネットバンキングはその一例。

 この施策に対して教育委員からは、「『生徒を海外に派遣』と書くと、何年かやらなければならなくなる。お金の問題もあるから、『海外との交流機会を拡大する』(=オンラインとか)と修正案を提案する」「工業高校に対する保護者や社会のイメージを変えないと。工業高校から大学院まで進学できるなどのPRが必要」などの意見は出されたものの、「Society5.0を支える工業高校の実現に向けた戦略プロジェクト」自体には全員が賛成。
 これを実行したら中途退学する生徒が激減するだろうか。「人間中心の社会」Society5.0になったら、解雇や非正規低賃金労働が激減し、路頭に迷う人がいなくなるだろうか。そうは思えない。高校も含め、学校教育に今必要なことは、学校でも社会でも軽んじられている、命及び人権の尊重・生存権の保証、自己主張する権利や労働する権利についての学びだ。その方がずっと、「人間中心の社会」になる。その時間をつくらないで、機器に振り回されるかもしれないカリキュラムの導入には、私は反対だ。

◆崔羈惺傘儻譽好圈璽ングテスト(ESAT−J)の取組状況について」

 文科省が小学生にまで外国語活動を必修とした中、都教委は「小・中・高校で一貫した英語教育の推進」を謳い、その一つが「話すこと」の能力を測る「中学校英語スピーキングテスト(ESAT−J)」。民間教育産業が都教委の監修の下で問題を作成し、テスト実施、個人結果帳票や学校・自治体へのデータ提供等までのすべてを扱う。来年度は、いよいよこれが、都立高校入学者選抜に使われる(20点満点で加点だったか)。
 今日は、都内全公立中学校で今年度実施したテストの出題形式と評価の観点、観点別による評価の結果が報告された。「来年から入試に使われることで、経済力のある家庭では塾通いも起きるだろう。経済的に苦しい家庭の生徒への目配りをよろしく」とか、「発達障害によって、テスト問題に書かれている絵が読み取れない生徒もいると思う」など、教育委員から発言があった。以前には、「緘黙の生徒への対応はどうするのか」という発言もあった。こうしたデメリットや心配がある中、テストを実施する意味はあるのか。教育委員は、この点について論議し意見すべきだ。私にはテストに意味があるとは思えない。教育産業に投じる費用も少なくはないのだし、やめてもらいたい。

「今年度学校における働き方改革について」

 過労死に至る時間外労働を教員たちのかなりが行なってきた中、夏休み中に休暇をとって時間外労働の調整をさせるなどの方便で2年前から始まった「働き方改革」。その今年度の結果が報告された。月に80時間を超える時間外労働をする教員が中学校教諭で10、2%(2019年は21、4%、20年は21、7%)、小学校副校長で16、5%(2019年は30、9%、20年は24、5%)。いったんタイムカードを入れて退勤したことにして時間外労働をするよう管理職からそれとなく言われたという話も聞くので、この数値を鵜呑みにすることもできない。
 今年度の主な取組として都教委は、「夏季休業期間等における学校閉庁日の設定(原則5日以上 都立学校で)」、印刷など、教員の授業準備をする「スクール・サポート・スタッフの配置(小・中)」、「部活動指導員の配置(中・高)」を行なったとのこと。来年度は、小学校体育の指導に外部人材の配置、学年主任や特色ある教育活動等を担う教員の授業時数を軽減する取り組み、副校長を直接補佐する会計年度任用職員の配置を行うという。働き方改革の一環として、都立学校では統合型校務支援システムの稼働・順次拡充を行なう(=現状、紙ベースで管理している生徒の出席・成績等の情報や教員の休暇申請等をシステム上で一元管理する)ともいう。一元管理された生徒の個人情報は卒業後、破棄されるだろうか。一抹の不安が残る。


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