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〔週刊 本の発見〕『楠勝平コレクション 山岸凉子と読む』 | |
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「市井の、庶民の」生きる姿を静かに描く『楠勝平コレクション 山岸凉子と読む』(楠勝平 著、ちくま文庫、900円)評者:大西赤人
大西の子供時代においても、世間一般にはテレビ、漫画が槍玉に上げられていたものだが、我が家においては、少なくとも漫画に関しては一切文句を言われることはなかった。なぜなら、1960年代から70年代の当時、父親自身も大の漫画好きで、手塚治虫、水木しげる、石(ノ)森章太郎、永島慎二らのコミックスを繁々と買い込んできたからである(漫画本の在庫が豊富な行きつけの古本屋で珍しく普通の本を買ったら、店主から真顔で�爐�客さんは漫画以外の本も読むんですね!�瓩噺世錣譴燭箸いο辰鯔�更でもない様子で繰り返していたものだ)。そんな中で父親も筆者も最も愛読していた漫画家は、白土三平だった。『忍者旋風』『忍者武芸帳(影丸伝)』『サスケ』『ワタリ』、そして『カムイ伝』『カムイ外伝』。とりわけ『カムイ伝』に描かれていた歴史観は、大西のそれに未だに色濃く影響を残していると自覚する。 『カムイ伝』が連載されていた雑誌『月刊漫画ガロ』(青林堂)は時おり買ったことがある程度だったと思うけれども、同誌に作品を発表していた楠勝平については、読んでいたかもしれないものの記憶がない。楠は、白土三平のアシスタントを務めていたとのことで、白土とともに『ガロ』を創刊した編集者の長井勝一は、「白土三平さんのただひとりの弟子なんだけど若くして亡くなったからね…まさしく夭逝の天才だよ」と同誌の中で語っていたそうだ。1944年生まれの楠は、中学時代に患った心臓弁膜症が後に悪化し、1974年、30歳の若さで早逝したのである。 本書には、山岸凉子の選んだ12本の――1966年から1973年にかけて楠が発表した――短編作品が収められている。やはり『カムイ伝』が目当てで『ガロ』を読んでいたという山岸は、解説の中で「声高でなく『誰が読んでも楽しめる』楠作品は目立ちにくく、さらっと読み流してしまいがち」と記し、毎回楽しみに読んではいたものの、「楠さんの本当のよさに気づくのはもう少しあとになってのことでしたが……」と述べている。短編という条件も含めて、強烈なインパクトはないかもしれないが、使い古された言葉を選べば�犹坩罎劉甅狃醋韻劉畧犬�る姿を過剰な説明を排して静かに描いた作品は、流して読めば淡々と終ってしまうが、頻繁に切り替わる場面場面を噛み締めながらページをめくると、非常に深い描写の積み重ねと感じられる。 特にそこには、自らの限られた未来を悟っているかのような死への想いが窺われる。本書中で唯一の現代モノである『大部屋』は、楠の実体験が投影されていると思しき入院病棟の情景がリアルに描かれて印象的だ。そして、より末期に描かれた『ゴセの流れ』や『彩雪に舞う…』では、死はむしろ恐怖の対象から親近の相手へと昇華しているように見える。ネットにおける本書への感想の中で、「マイナー・ポエット」という言葉を眼にした。「マイナー・ポエット」とは、元々は�狎ご崚�知名度こそ乏しいけれども、その存在を無視しがたい作り手�瓩魄嫐�するのであろうが、ニュアンスとしては、もう少し矮小な評価を感じさせてしまう。たしかに楠勝平が白土や手塚を上回る漫画家と見做されることはないかもしれないが、こうしてその作品に遅れ馳せにも触れ得たことは、筆者にとって確実な喜びである。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・志水博子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・根岸恵子、黒鉄好、加藤直樹、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2021-10-08 09:28:13 Copyright: Default | |