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密告を住民に強いる土地規制法案 沖縄スパイ戦の悲劇に学ぶ

海渡雄一
1944年に「陸軍中野学校」出身者42人が沖縄に渡って、少年を中心としたゲリラ部隊「護 郷隊」を組織します。住民を西表島に移住させて多くの人を戦争マラリアに感染させます。 「捕まったらスパイになる怖れがある」と日本軍が住民を虐殺するという悲劇が起きま す。 沖縄戦では、このように、軍や民間人を追い込んでいくシステムができてしまっていたの です。 その中で、住民自らが、疑わしい人を密告し、加害者にもならざるを得なかった、それが 沖縄戦の現場で起きていたことなのです。 重要土地規制法案8条は「重要施設」周辺や国境離島の土地・建物の所有者や利用者の利 用状況を調査するために、「利用者その他の関係者」に情報提供を義務付けています。「 関係者」は従わなければ処罰されますので、自らに関する情報を無理やり提供させられる だけでなく基地や原発の監視活動や抗議活動をする隣人・知人や活動協力者の個人情報を 提供せざるを得なくなります。これは地域や市民活動を分断するものであり、市民活動の 著しい萎縮に繋がります。そして、最後は、住民同士が密告し合い、多くの犠牲者を産み 出す危険性があります。 このような法案は、憲法19条と自由権規約18条が絶対的なものとして保障している思想・ 良心の自由を侵害するものです。また、市民の団結を阻害するという意味において、集会 結社の自由(憲法21条、自由権規約21条・22条)に対する侵害のおそれもあります。 15年戦争に敗北し、ポツダム宣言を受け容れた日本は、1945年10月4日、特高警察を解体 し、治安維持法だけでなく軍機保護法、国防保安法、要塞地帯法を廃止しました。そして 私たちは、日本国憲法によって、軍隊を持たないことを宣言し戦争を放棄しました。 安倍政権は2013年に国家安全保障会議設置法と特定秘密保護法を制定し、軍機保護法、国 防保安法と同様の法体制を復活しました。そして、いま菅政権は、重要土地規制法案を制 定し、要塞地帯法を復活させようとしています。復活した大本営=国家安全保障会議を取 り仕切っているのは、公安警察出身の北村滋氏です。 そして、今回は、基地だけでなく、原発や他の生活インフラ施設の周辺も対象にでき、日 本中を監視できるシステムを作る稀代の悪法を作ろうとしています。 われわれは、日本国憲法を制定し、沖縄スパイ戦のような状況や構造を二度と作らないよ うにすることを誓ったはずでした。他方で、戦後、日本は、長く沖縄を米軍の統治下にお くことを容認し、本土復帰後も基地の多くを沖縄に押し付けて犠牲にしてきました。安倍 ・菅政権は、辺野古基地建設に反対するオール沖縄の声を圧殺し続け、76年前のスパイ 戦と同じ道を歩もうとしているのではないでしょうか。 政府は、重要土地規制法案について、14日参考人、15日には内閣委員会での採決を狙って います。 この暴走を止められるかどうかは、市民の世論がどこまで盛り上がるかにかかっています。 まだ、チャンスはあります。沖縄戦の死者の魂を現代によみがえらせ、このような沖縄 戦の悲劇を未来に繰り返してはならないという声を、日本中に押しひろげ、重要土地規制 法案を廃案に追い込みましょう。

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