日本マスコミ文化情報労組会議の声明 : 独裁性帯びたデジタル法案に抗議し撤回を求める | |
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独裁性帯びたデジタル法案に抗議し撤回を求める
政府は、流通するデータの多様化・大容量化が進展し、データの活用が不可欠であるなどとして、デジタル 改革関連6法案を今年2月に閣議決定し、国会に提出しました。 9月に予定しているデジタル庁設置のための 関連6法案が上程され、うち5法案が30時間にも満たない拙速審議で、28項目の付帯決議がついて、4月 6日衆議院本会議にて可決されました。 6法案の内容は極めて広範です。特に「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」 では、個人情報関係3法(個人情報保護法、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、独立行政法人 等の保有する個人情報の保護に関する法律)を1本の法律に統合し、地方公共団体の個人情報保護制度につい ても全国的な共通ルールを設定して所管が分かれていたものを個人情報保護委員会に一元化していく流れです。 この法律は昨年10月から政府のデータ戦略タスクフォースやワーキンググループで法案化作業が進められ 、 12月に法案の第一次取りまとめが行われました。かなりのスピード審議で行われた挙句、公開された議事録 は、簡略な議事概要のみ 。半年後の今も議事録が公開されず、市民の「知る権利」に十分に応え 、説明責任を 果たしているとは言えません 。5法案は約60本の法律を束ねていますが、広く意見を募るパブリックコメン ト(意見公募)も実施せず、閣議決定されました。従来の重要法案に比べて民主的な手続きが不足しているの は明白です。 行政機関による公文書の改竄、隠蔽、廃棄の問題があとを絶たず、情報公開制度の不備が相次いて発覚する など、行政の透明化が徹底されていない日本において、行政機関の情報コントロール力が一方的に高まること は危険です。 個人情報が政府に一元化して集中するのであれば、権力による恣意的な利用、暴走を許さない仕組みを保障 しなければなりません。同法案はそれらの監視制度が不十分で、透明性を高め、厳格な運用を担保する制度整 備がなされていません 。 情報システムが巨大化し、作業の業務委託が重なれば、漏洩の危険性も増します。しかし、権力濫用や漏洩を 食い止める有効な制度や機関が見当たらないことも危惧します。 また、同法案の構造自体が「保護」より「利用」を優先する成り立ちのため、自己情報コントロール権、プ ライバシーの保護が蔑ろにされ、匿名(仮名)化による個人情報保護の適用外扱いや本人同意なしの第三者提 供、目的外使用が容易になる可能性があります。本人同意原則の明確化、本人情報追跡の徹底が必須です。 2013年に「特定秘密保護法」が制定された際、衆参両院に設けられた「情報監視審査会」などを活用す るなどして、個人情報の不正利用監視を徹底し、権力濫用へのブレーキシステムの構築が必要です。 また、取材活動に関わる情報については、政府による収集・管理の適用外とすることが必要です。表現や報 道の自由、取材源の秘匿の観点から、権力側の不適切な収集・管理は許されません。金融機関の口座、住所、 勤務先、学歴などの個人情報をマイナンバーで一元管理することで、特定のキーワードによるリストアップが可 能になります。権力にとって不都合な取材活動の監視に繋がる懸念があります。スーパーシティなど、個人情報 の扱いが規制緩和された特区においては、本人同意なく取材情報を吸い上げられる可能性もあります。自己情 報コントロール(本人情報開示)が不徹底のままでは、取材源の秘匿が確保できなくなる恐れがあります。 デジタル庁の長は特命担当大臣ではなく、内閣総理大臣です。国務大臣の任命権を持ち、各省庁や行政組織 の指揮監督、指導・助言を行う内閣総理大臣自らが、一元化した国全体の情報を掌握するデジタル庁について 、 客観的な指揮監督を行えるのでしょうか。内閣総理大臣が他の行政機関に対する勧告の尊重義務も規定されて おり、独裁化しやすい傾向があることを憂慮します。 衆院通過で、28項目も付帯決議が付けられたのは、審議が不十分だったことの表れです。さらに、法案自 体が、独裁化を招きやすい組織構造、チェック監視機能の不備を抱えています。インターネットの普及、監視 カメラや G P S 装置などから得られる個人情報が大量に集積され、すでに「超監視社会」となっています。同 法案とは別に公権力が私的情報を収集、検索、分析、利用するための法的権限と行使方法等を定めた法制度が 構築されるべきです。 さらに社会の下地として、情報公開制度の運用に問題があり、市民の知る権利に応え、行政がアカウンタビ リティー(説明責任)を果たしていない中、デジタル情報を取り扱うメディアの労働組合として、この法案の成 立を看過することはできません。法案設立までの審議内容を明らかにせず、国会での議論も不十分なままで、 不備を抱えた法案を成立させると、国民の社会生活を危うくさせます。また、手続きや内容について独裁性を 帯びた法案の参議院通過を見過ごすわけにはいかず、同法案について抗議し、撤回することを強く求めます。 2021年4月20日 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC) <新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、 広告労 協、音楽ユニオン、電算労> Created by staff01. Last modified on 2021-04-22 13:27:57 Copyright: Default |