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「格差の広がりが維新躍進の秘密」を読んで〜大阪市民からの便り

井上健(大阪市淀川区在住)

 貴ウェブサイトにアップされました衆議院選における日本維新の躍進ぶりについて、志真秀弘氏による〔政治時評〕「格差の広がりが維新躍進の秘密」〜2021衆議院選を読ませて頂きました。氏の解釈や考え方は鋭く的を突いていると思うと同時に、私にも少々述べさせてください。

 「否決されはしたものの2015年と2020年の二度にわたる「大阪都構想」が維新の足腰を鍛えた」・・・という分析は的確に的を突いていると思います。確かに二度とも僅差で否決されたものの、いずれも1万ないし2万票弱の差だったことは依然として維新が大阪人の心を的確に抱き込み、誘導洗脳する術と自信に満ちている証拠と考えられるからです。もちろん可決されれば大阪都構想を急ぎ成功させ、これを足掛かりに全国各地にも同様の構想を拡げたかった維新のことですから、一回目か遅くとも二回目で可決されることを最大の目標かつ党の名誉と威信(維新?)を賭けた史上命令として全党員と支持者にハッパをかけていたのは間違いなかったでしょう。

 同様のことをかつて新聞報道で橋下が述べていましたが、私が思うに本当の所は大阪都構想という大風呂敷を前面に掲げ、二重行政の解消や行政のスリム化・合理化、ひいては公務員減らし、労働組合切り崩し及び弱体化、民営化や民間委託による市の事業切り離し等で大阪を大改革(実際は大改悪と破壊!)と並行し、ゆくゆくは中央に攻め上り自公を倒し維新単独政権による国政掌握を狙うのが本音かつ最終目的でではないかと。

 この調子で“順調に”勝ち進んでゆけば、あと15〜20年後に維新政権が誕生する可能性があります。そうなれば橋下が総理大臣となり、吉村と松井で副総理及び官房長官の地位を分け合い、閣僚には維新議員のうち政令市の市長経験者を優先的に入閣させるかもしれません。

 話を戻しますと成否云々はともかく二度に亘って打ち揚げた大阪都構想は、この先幾度も通らなくてはならない中央政権掌握への関門である国政選挙に向け、大阪を中心とする関西の有権者に対するアピールと美辞麗句等を駆使した洗脳による維新への従順なる羊(イエスパーソン)を急ぎ増殖すべく起爆剤でもあったと思うのです。

 加えて2025大阪万博、及びこれに続くカジノとIR(総合リゾート)という僅か数ヶ月のパーティーに続く箱モノ、及びそれらが生み出すイメージやフィーリングを見せ付けることで、さらに有権者の心を強力に掴み、洗脳せんと目論んでいるのでしょう。これまた中央政権掌握への出世階段を確実にするための布石と考えられ、いずれも大阪府市民を自分たちの利権と思惑に巻き込むためにブチ揚げたアドバールンに過ぎないのではないでしょうか。

 なお維新がカジノやIRに先駆けて万博にこだわっているのは、いきなりカジノやIRを持ってくると経費が膨大になり過ぎて府市民はもとより全国から批難が殺到し反発を受け、後の選挙による党勢拡大に不利と読んでいるからだと思います(まさに連中のいう「大阪の成長を止めるな!」というのはこういうことかも)。

 よって余り経費のかからない万博(といっても約3800億円)で先ず庶民や観光客を喜ばせ安堵させ、その間にどさくさに紛れ人心を懐柔し、抵抗や反発を弱めようとの巧妙な作戦を企図しているのでしょう。いわば本望・主目的はカジノとIRであり、しょせん万博はそれらの布石なり起爆剤、あるいは口実であり、直接できるならやってもやらなくても知ったことでなく痛くも痒くもないのかもしれません。

 次に維新の支持者についてですが、世間でいう富裕層の勝ち組(高学歴、ホワイトカラー、40〜50代の中堅サラリーマン)が多くを占めると私もかねてから思っていました。また彼ら富裕層の勝ち組は、企業内外での過酷な競争を必死の想いで這い上がり家族を養い税金を納め、さらに市内中心部のタワマンに君臨しながらもローンに追われ続けています。

 その手前平地に住む比較的低収入の“貧乏人”に、自分たちが必死で働いて稼いだ収入を税金という形で取られ、まわり回って社会保障として配分される(というか持ってゆかれる)のが悔しく憎いと感じるゆえ、必然的に差別感情なり意識が芽生えてしまうのも無理はありません。

 ここでも氏が指摘されているとおり、富裕層の勝ち組が潜在的に持つ貧乏人への差別感情なり意識を巧みに操作し票に結びつけている手法には嫌悪や恐怖を通り越し、もはや薄ら気味の悪ささえ感じます。氏はこれをトランプ前米大統領による黒人やヒスパニックに対する差別的政策と同質と指摘されています。

 何はともあれ大阪では維新や維新教信者の大人(ネトウヨも含む)たちがこんな有様ゆえ、他党を支持する親の子供がいじめやシカトなど、理不尽で哀しい想いをさせられていないか心配です。大人でさえ維新に付くか否かで思想信条に偏差値を付けられ、差別と分断と対立に苦しめられています。それゆえ他党を支持する者は、悪ければ職場内で仲間外れや村八分(最悪の場合クビ)にされかねず、戦々恐々と身構えているのが今の大阪です。

 そうでなくとも維新が勢力を急拡大してきたここ数年、大阪では格差と差別と分断対立が急速に深まり、友人知人はおろか家族間でさえ無言の対立と睨み合いが深まっており、相手が誰であろうと先ずどんな内容で話し始めるか身構えてしまうのです。それに加え話している間も次にどんな方向にゆくのか神経質なほど値踏みや警戒し、場合によっては言いたいことの半分かそれ以上を隠し、忖度すら辞さないといった態度でギクシャクして気疲れさせられます。

 下手すれば家庭や職場はもとより、地域社会からも浮き上がって友人を失ってしまう危険があります。かくして大阪の人間から本当の意味で相手を敬い慕う心ばかりか、素朴で当たり前の笑顔すら消えてしまった様な気がしてならず、そんな大阪を見切って府外へ流出する人が増えているそうです。

 余り書いていても切りがありませんのでこのくらいにさせて頂きますが、さし当たり来年夏の参議院選挙を如何に迎え乗り切るかを考えてみたいと思います。とはいえ私の様な一介の市民であり凡夫に、これといった特効薬の如き良い考えは浮かびません。それでも市民運動への参加、野党系議員への働きかけ、市民・労働系運動などへの参加と意見発表・交換、そして地道かつ微力で草の根的ではありますが、投票がせめてものお力添えと考えております。

 一方で今回いまいち奮わなかった野党共闘の関係者には、執行部刷新により有能で志のある若手を積極的に幹部に登用するなど、人事面での改革を急いでほしいと思います。同時に政策面でも「どんな事柄を何時からどんな方法で実行してゆきたいのか」「実行することによってどの方面にどんな効果が見込まれ目指すのか」といった、具体的かつ意志未来を持って明確な中長期の将来展望を示せる派閥間抗争にとらわれない強い人物を党首に据えることが、絶対必須と思います。

 長くなってしまいましたが、この国に生き続ける限り避けて通れぬ事項ゆえ、貴団体や心ある有志の方々からのご指導並び助言を賜れればと思っております。どうぞ今後ともよろしくお願い致します。


Created by staff01. Last modified on 2021-11-08 13:29:19 Copyright: Default

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