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LNJ Logo 米国労働運動 : コロナ禍下でのストライキの広がりと「非公式ゼネスト」
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【解説】アメリカではコロナ禍下で様々な労働者たちがストライキを含む職場行動で立ち上がっている。しかし、はるかに多くの労働者たちが仕事を辞める、という形で集団的拒否表明をしていて、これは3000万人による「非公式のゼネスト」とも呼ばれていると、10月29日のレイバーノーツのウェブサイトは伝えている(レイバーネット国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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コロナ禍下でのストライキの広がりと「非公式ゼネスト」

ルイ・フェリス・レオン(レイバーノーツ・スタッフ)/マクシミリアン・アルヴァレス(リアルニューズ・ネットワーク編集長)
2021年10月29日


*ニューヨークのブルックリンのユナイテッド・メトロ・エネルギー社に対する6か月のストライキを闘う労働者たち

 豊かで余裕のある人々が家に閉じこもり、パンデミックの最悪の数ヶ月を優雅に乗り切っていたとき、全国の労働者たちは全く違う経験をしていた。アイオワ州、イリノイ州、カンザス州、コロラド州、ジョージア州の1万人の農機具労働者はストライキに入り、ネブラスカ州、ミシガン州、テネシー州、ペンシルバニア州のコーンフレーク製造のケロッグ社の工場で働く1,400人の労働者、アラバマ州のウォリアー・メット・コール社の1,100人の炭鉱労働者、ニューヨーク州とマサチューセッツ州の看護師もストライキに入っていた。さらに、大学の教職員、オレゴン州、カリフォルニア州、ハワイ州のカイザーパーマネント社で働く医療従事者など数千人がストライキの準備をしており、職場放棄の脅しをかけてストライキを回避し、暫定的な協約合意に達し、批准投票を待っている映画・テレビ業界の労働者も続いている。

 それだけでない。ニューヨーク市のタクシー運転手たちは、黄色のタクシーを休車にし、市庁舎の外で1ヵ月以上包囲して、連続24時間体制で抗議活動を行い、先週はハンストにまで発展した。ニューヨーク・タクシー労働アライアンスの組合員や支持者によるハンガーストライキは、10月31日に迫った四半期予算の修正期限に向けて行われている。ビル・デ・ブラシオ市長がその気になれば、略奪的な免許制度の結果として運転手たちが抱えている莫大な借金(1人当たり平均50万ドル)の月々の返済額を下げるために、融資保証を追加する予算修正が可能である。

 このように労働者の戦闘性は高まっている。全体として、また個人レベルでも、労働者は久しぶりに自信を持つようになり、目の前の危機をとらえて有利な状況を切り開こうとしている。パンデミックが全米で猛威を振るう中、経営側は厳しい労働市場で欠員補充に苦慮しているが、労働者たちはこの有利な状況を利用してより良い賃金を要求している。労働者の大胆さと自己主張の強さは、大きなニュースになるようなストライキだけではなく、他の形でも表れてきている。

 コーネル大学の労働争議調査センター(Labor Action Tracker)は全てのストライキなどの労働争議を集計してオンラインのデータベースを作っている。その所長のジョニー・カラス氏は、「世界的なパンデミックの最前線にいた多くの労働者は、経営側が労働力不足で苦労しているという、またとない機会を目の当たりにしています」と述べている。

 「例えば、9月下旬以降、バスの運転手によるストライキが組合員、非組合員を問わず6回行われ、20人から200人の労働者が参加したことが記録されています」とカラス氏は付け加える。「これらのストライキのほとんどすべてが、賃上げ要求を含んでいます。また、安全衛生面での懸念も表明されています」。

「非公式のゼネスト」

 一方、米国では1月から8月にかけて約3,000万人の労働者が仕事を辞めた。これは低賃金でみじめな仕事に対する個人的な対応だが、全体としては集団的な拒否表明であり、「非公式のゼネスト」とか「偉大なる離職行動」と呼んでいる人もいる。

 ニューヨーク市立大学のステファニー・ルース教授(労働学)は、ストライキは労働組合の正式な指令を得て行われるものだけではない、と指摘する。「労働組合の指令によらないストライキや、零細職場での公式ストライキや、全く労働組合が関わらない非公式の労働争議が増えるでしょう」と述べている。

 「労働条件に抗議するために労働者が行う職場行動は、正式なストライキから仕事のスローダウン、病休行使、退職に至るまで、さまざまな方法があることを考慮すべきです。労働者はこれまでも様々な戦術を行使してきたし、それらもみなストライキの一種とみなされるべきです。」

 最近の経済格差の拡大に対する不満を団体交渉やピケに向ける労働者もいる。しかし、労働者は確かに経営者に対して怒っているが、労働者の闘争心の炎は、まだ全国でストライキの大波を起こせるほどの火種にはなっていない。

長い道のり

 労働争議調査センターによると、2021年1月から今日まで、ストライキは258件発生しており、そのうち10月だけ見ても合計で2万4,000人の労働者が関わるストライキが発生している。一方、政府の労働統計では1,000人以上の労働者が関与したストライキのみを集計しているので、2021年の9月末までのストライキ件数を12としている。

 労働者の不満はストライキや抗議行動の増加につながっており、大変重要な事実ではある。しかし、2018年には48万5,000人、2019年には42万5,000人の労働者がストライキを行い、これにはウェストバージニア州からアリゾナ州までの州の教職員や、自動車工場、ホテルなどの労働者が参加したが、それに比べれば少ない。2021年に数万人の労働者が反撃したことは重要だが、米国の労働組合員数はおよそ1400万人であることを考えると、まだまだ少ない。

過酷な戦い

 ニューヨーク州ブルックリンにあるユナイテッド・メトロ・エネルギー社の燃料ターミナルでは、チームスターズ労組第553支部と億万長者のジョン・カツィマティディス氏との間で2年以上にわたる交渉が決裂し、4月から20人の労働者がストライキを行っている。ストライキ開始から6ヶ月が経過し、8人の労働者が解雇通知の手紙を受け取った。チームスターズ労組は、同社が組合活動家を標的にしていたとの疑いで、すでに全国労働関局に告発していたが、調査が進むにつれて新たな告発を行なった。

 ユナイテッド・メトロ・エネルギー社に6年近く勤務しているターミナルオペレーターのアイヴァン・アレイサガ氏(56歳)によると、当初ストライキに参加していた20数名の労働者は現在14名にまで減少しているという。

 「私はこの会社に身を捧げてきました。午後10時から午前7時まで働いてきました。私に家族がいることも考慮されていませんでした。子供と一緒に週末を過ごしたいんです」と彼は言う。「唯一休んだのは、母が亡くなったときです。その3日後には仕事に復帰し、1日も休まず、頼まれたことはすべてやりました」。

 長時間労働に加えて、同じ仕事の業界標準の時給が37ドルであるのに対し、27ドルであることにも気がついた。3児の父である彼は、退職後の生活や年金のことを考え始めた。3人の父親でもある彼は、老後や年金のことを考え始め、経済的な安定を求めて同僚と一緒に組合を結成した。

 「私はもう56歳です。まともな生活をして家族を養うためには、あと何年働けばいいのでしょう」と自問した。

 ストライキに突入した直後、会社は健康保険負担金をカットしたとアレイサガは言う。糖尿病を患っている息子がノースカロライナ州の大学から電話をかけてきて、医療を受けられないでパニックになった経験を語ってくれた。「パパ、どうしたの?」と息子が聞いてきた、「医療が受けられないんだ」。

 アレイサガと彼の同僚は、ニューヨークの学校や病院、地下鉄を暖かく保つための暖房用油、ディーゼル、ガソリンを供給し、地元のガソリンスタンドへの給油も行っている。その労働力は、ニューヨークとその住民にとって必要不可欠である。しかし、現行の労働法では、会社がストライキ中の労働者を解雇することが必要以上に容易になっている。

 「私たちはあきらめません。私たちはすでに多くのものを失ったのですから」とアレイサガは締めくくった。

 この「ストライキの10月」を、ほんの一瞬の明るい出来事で終わらせないためには、アレイサガのような労働者のことを忘れてはならない。その闘いが勝利するよう皆でできる限り支援しなければならない。そして、勝利を困難にしている制度上の障害に対処し、取り除くために共同した戦略を持たなければならない。


Created by staff01. Last modified on 2021-10-31 18:54:12 Copyright: Default

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