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●報告 : レイバーネットTV第163号(2021年10月20日放送)
特集: 総選挙深掘り 原子力村のドン・甘利への「審判」

原発新設をもくろむ自民党政権にノーの一票を!

 今回の衆議院選挙は安倍から引き継いで以来、初めてのものだ。岸田政権の体制を見ると、総裁選のころと少しずつ変化し、いつの間にか全くのアベ・スガ路線である。甘利が中枢に入ったことで、原発が危ないという声が聞こえてくる。誰に投票するかで、日本の今後の運命が決まるといってもいいくらい大事な選挙だということが分かる。(笠原眞弓)

★アーカイブ録画(92分)https://youtu.be/C1le7tg-qhw

進行:北健一・北穂さゆり

◆今月の1枚(レイバーネット写真部)
 日本から四季が消える? 温暖化が進むと秋がなくなるといわれていると、日本の秋を象徴するコスモス畑の写真をアップ。

◆サブコーナー: 東電福島原発刑事訴訟/逆転勝訴に向けて
 聞き手 : 堀切さとみ
 語り手 : 地脇美和さん(福島原発刑事訴訟支援団事務局長/写真下)
     海渡雄一さん(弁護士・福島原発刑事訴訟被害者代理人)

●裁判過程で明らかになったことが、他の裁判を有利に導く

 福島第一原発の事故後、10年3カ月たった今も未解決の事がたくさんある。その1つに、当時の東電3幹部を訴えた刑事裁判がある。地脇美和さんたちは「福島原発刑事訴訟支援団」として関わってきた。2019年9月の一審判決は全員無罪の不当なものであった。地脇さんは、この裁判は苦難の道だったと短い言葉で述べる。告訴を検察が不起訴にしたのち、14000名近くの「不起訴不当の申し立て」が世界中から提出され、強制起訴された。一審では無罪判決だったが、2審では勝訴を目指す。

 法廷で見た勝俣恒久元会長と武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人は、全く反省などしていない。「運が悪かったから」としか思っていないと感じたと地脇さん。この裁判の初めは360度から批判が飛んできたが、裁判の過程で隠蔽されていた事実が判明し、それが他の民事裁判で証拠採用されて周りの空気も変わったとか。

 訴訟被害者の代理人である海渡弁護士は、この裁判のいきさつを解説した本『東電刑事裁判 福島原発事故の責任をだれがとるのか』を紹介しつつ、地裁での無罪判決があったが、決して負けていると思っていないという。それは、地脇さんが言うように、この裁判を通して隠されていた「2008年の時点で15、7メートルの巨大津波が原発をおそう危険性があると警告され、津波対策をする」という方針があったことが暴かれたことだ。津波対策の工程表まで作られたにもかかわらず、実行されなかった。それが「生業裁判」など、複数の裁判で有利な判決を引き出す証拠となったからという。高裁では、裁判官が新たな証拠調べをするかどうかで、結果への期待度を計るが、なんと今回は裁判官が現地に行くことになり、期待度アップである。

 最後に、控訴審のある11月2日午前(時間未定)に地裁を取り囲むヒューマンチェーンへの参加を呼びかけた。

◆ジョニーと乱鬼龍のほっとスポット

 ジョニーHさんの歌は、童謡のメドレーで、岸田首相、今話題のDappiを織り込んで歌う。

 乱鬼龍さんの川柳は「総選挙腐った政治もうサラバ」。そして新作のダシャレグッズ「民をナメンナヨ飴」と「汚れた政治家をすべて落とそう石鹸」の紹介があった。

◆特集:総選挙深掘り 原子力村のドン・甘利への「審判」

ゲスト:日比野敏陽(「京都新聞」東京編集部長・元新聞労連委員長)
    海渡雄一(弁護士・脱原発弁護団全国連絡会共同代表)
    堀切さとみ(『原発の町を追われて』制作者)

●岸田政権誕生で進む再エネの萎縮と原発の新規建設

 19日から選挙戦が始まる中、「アベ・スガ」路線をしっかり継承する岸田が政権をとったら、何が起こるのか。海渡さんはずばり、原子力の推進であり、原発の新設だろうという。日比野さんは、人事の問題を指摘し、自分に有利な人を内閣府に取り立てる。それが役人の出世。10年近くのアベ・スガ政権で、役所の仕事の仕方がそのように伝承されてしまったので、それやめられるかと暗い声。さらに民主党時代に秘密保護法改正案として、せめて裁判官だけでも情報公開するようにという法案が出されたが、ねじれ国会だったため、いまだに政府案として宙に浮いたまま。それが通ったら、裁判は大きく変わると海渡さん。

●読売新聞のスクープの行きついた先

 話は遡って2008年の大津波に関する事例だが、対策工事を検討し、その年の3月には対策工事計画書まで出来ていたが、トップが隠ぺいを決める。国に報告されたのは、2011年の3月8日。その後も隠ぺいは続き、公になったのはその年の8月24日の朝、読売新聞がすっぱ抜いた。東電も保安院もその事実を認め、その後事故調査委員会の報告書に書かれたが、対策会議があったこと、住民への説明書類が作られていたということは、先のコーナーで取り上げた刑事裁判の過程で初めて表に出てきたという。

 ところがこのスクープ以後、大きな問題にもならなかった。しかも読売新聞の原発報道は事故後からこそれまで、熱心で核心を突いたものだったが、この日を境に政府寄りに変化したという。微妙な一致だが、東電の広告とマスメディアの事故に関する記事内容の変化も語られた。

 印象的だったのは、海渡さんの甘利さんへの「原発新設」に対する危機感。それはとりもなおさず、原発反対運動がなめられている。ぜひ今回の選挙の争点にしてほしいと訴えた。また、甘利さんがメディアに対する名誉棄損裁判で勝訴して以来、メディアの政府への追及が甘くなっていることをしきりと指摘した。

●ガラパゴス化する日本の再エネシフト状況

 海渡さんは、経済的な観点からも再生可能エネルギーにシフトした方がいいと多くの経営者が思っている。それを阻んでいるのは、経団連の上層部や既存エネルギー部門など。彼らはまともな経済判断が出来ないと海渡さんは指摘する。世界は再エネにシフトしていて、すでに日本はガラパゴスになっていると。
 日比野さんも、日本のいまだにしがみついている石炭火力発電の事例を述べる。
 原発事故後、映像作品を撮るなど、福島を見てきた堀切さんは、最近のラジオ放送の論調が、再稼働に傾き、再エネについても懐疑的であることに、これだけの事故を起こしておきながらあきれるという。

●政権とメディアの距離感は?

 日比野さんたちは、首相や官房長官の記者会見の改善に努力してきた。その画像を流す。昨年の3月ころまでは、1社複数の記者の出席も認められていて、かなりの人数が首相記者会見に出ていたか、コロナを口実に出席者を厳しく規制した。現在、コロナ規制が緩和されたにもかかわらず、こちらは緩和されないままとか。本質的に何も変わっていないという。  もちろん大スキャンダルのDappiにも触れたが、さらに驚くべき情報が、海渡さんからもたらされる。それは日本に「CIA」をつくるということ。つまり「内閣情報局」を作るというのだ。思わず椅子から飛び上がってしまった。内閣が、情報を統制すると宣言しているのと同じだ。北村滋が出版した『情報と国家』(中央公論新社)にあるという。彼は特定秘密保護法や共謀罪、デジタル庁や土地規制法にも関与していたと思われている。

●新聞記者に真に望むこと

 一方地脇さんは、メディアとの関係で印象的なこととして、不起訴処分が出たときの記者たちの反応だという。いつ知ったかという質問ばかりだったとか。報道に望むのは、東電や国の規制機関が何をしていたかを調査して報道してほしいと記者会見で訴えたところ、彼らの不評を買った一方、地脇さんたちが調べて「スクープですよ」と報道に流しても、取り上げられなかったと彼らとのズレを指摘する。

 もう1つは福島で、ものがいいづらくなっていること。福島ではメディア懇談会があり、ポジティブ・ネガティブな言葉の使用頻度の調査をしていて、ネガティブな言葉を遣わないという雰囲気がある。電通が費用を出して様々なことが行われていて、世論操作にもつながっているようで、そのことも知っていただきたいと切々と訴える。

 続けて、地脇さんのお連れ合いの聖孝さんが、今言わないと消えてしまうからと発言。
1、刑事裁判の一審判決の出る日に、TBSのカメラが紙を置いて一等席を確保していた。それに対して福島から来ていた人が、「そんないい場所確保するほどTBSは真面目に報道してきたのか」といい、場所取りの人は何も返せなかったこと。
2、無罪判決が出た後の抗議集会で、福島から来られた人が「こんなに重大な事故が起きているのに、日本のマスコミは報道せず、韓国を腐すようなことばかりを載せる。私たちの話をよく聞いて報道してくれているのは、むしろ韓国のメディアです」と発言した。その時、カメラマンが、覗いていたファインダーから目を背けたと。これこそメディアの原発事故に対する姿勢だと思うし、一生忘れない光景だという。

 それを受けて日比野さんは、とても大事な話として受け止め、現場は下請け、孫請けのようになっていて、現場の声が責任者まで届かないことが、問題だという。海渡さんは、取材には時間を割いて話す。それが実るときも実らないときもあるが、実らなくても何時かそれが役に立つこともあるし、今でもきちっと報道しようとしている人たちがたくさんいて、時々記事になればという。

 北さんは、フリーランスの記者の立場から、彼は現場の個人を見ていても、問題は解決しない。組織そのものが変わっていかなければならないこと。もう一つは、会社の組織体質をどう変えるかではないか。それは今度の選挙の争点のジェンダー平等や多様性の確保に係ることとつながっていくのではないかなとのこと。

●最後に各人が一言ずつ今回の選挙に際して考えるべきことを述べた

 海渡さんは、コロナ禍から人々を救うのは明らかだが、自分のやってきたことのつながりで2つ、原発推進につながる勢力に痛打を浴びせなければならないし、秘密保護法や共謀罪、土地規制法やデジタル法など、戦争をする法律制度を築いてきた。それを、いったんご破算にしなければならない。この2つが重要だ。

 日比野さんは、選挙に関しては「新しい資本主義」に騙されてはいけない。富の再分配とは何か? 本気でやる気があるなら、非正規問題などたくさんあるのに、本気で思っていないから解決しない。そのことを我々メディアがちゃんと伝えなければならない。

 堀切さんは、給食の現場でO-157のような死者の出る事件があれば、抜本的な見直しあるのに、原発の場合、「原発による死者はいません」とごまかす。それが通らないように一人ひとりが声を上げていかなければならない。

 地脇さんは、当事者抜きで、決められていく。国は、原発を維持するために科学や医学を利用する。それよりみんなで考えてささやかな幸せを守れるようにしたいと締めくくった。

*写真撮影=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2021-10-26 17:08:52 Copyright: Default

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