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●ドキュメンタリー映画『カナルタ 螺旋状の夢』

近未来の姿がアマゾンの熱帯雨林の中にある

笠原眞弓

 アマゾンの森林を殺しているのは、日本の年金基金と聞いたときは、少なからず衝撃を覚えました。日本国内法では 違法ではないけど、地球上の大事な資源をつぶしているので、世界の嫌われ者になっていると、つくづく思ったのです。

 そして時を置かずして聞いたのは、カナダでのシェールガス採掘問題。法律で守られている原住民の権利を開発側は、一方的に反故にして、警察権力を使って彼らを排除しようとします。それに抵抗して正当な権利を主張している原住民の闘いの様子を原住民の若い女性からきいたのです。その開発事業に関わっているのは、三菱商事や日揮とフレアの合弁会社。そして三菱UFJ銀行やみずほ銀行。なんということかと悲しくなります。

 そんな時に見たこの映画は「あゝ、まだアマゾンは生きていた」と心底ほっとしたのです。太田光海監督は日本人の民族学者。「映像人類学」というまだ日本では耳慣れない学問分野の博士課程の卒業制作です。

 そこは、エクアドル南部の熱帯雨林、シュアール族の住むところです。熱帯雨林というだけあって、よく雨が降ります。シャーマンの家系のセバスティアンとリーダーになる夢を見て、精進して村長になったパストーラ夫妻の生活が、映し出されます。迫力のパストーラの口噛み酒を作っているシーンは、少なからずの抵抗がありますが、そうして作ったお酒を近所の人たちが集まって、屋根の吹き替え作業をしながら飲むのは豪快です。なんといっても、お風呂屋さんの洗い桶のようなもので飲み回すのですから。

 セバスチャンが新しく畑を拓き、近くに家を建てるために森の中を物色する様子、木を選んで切るさま、その一つ一つが、若い仲間に受け継がれていくと思えるのです。日本の農村に最近まであった「結」よりも、もっと自然なかつ、家族的な充実したやり取りなのだと思いました。かといって、現代です。「息子が学校を出て仕事に就く」という、セバスチャンの息子が生まれる前に見た夢も実現するのです。セバスチャンは、木の葉や草の葉などから薬を作り、また使ったたことのない植物から薬草を発見していきます。彼が大けがをした時の対応も、どうなることかと肩に力が入りましたが、納まるところに納まるのです。

 人が宇宙旅行をする時代に、ここには先代から受け継いできた人間の知恵、生き方が示されます。ここまで地球を壊してきた私たちが立ち返るべき近未来の姿かもしれません。彼らの心地よい協力作業、未知へ挑戦する姿など、人間の幸せはどこにあるのかと、つくづく考えさせられたのでした。

 蛇足ですが、画面が行政など公式なものになると、途端に音声が硬質なものになり、違和感を覚えるのはなぜてしょうか。 

*監督:太田光海・121分 10月2日よりシアターイメージフォーラム他、全国公開


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