本文の先頭へ
LNJ Logo 米国労働運動 : AFL-CIOトラムカ会長、急死
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0901us
Status: published
View


【解説】訃報 : 8月5日にナショナルセンターAFL-CIO会長のリチャード・トラムカ氏が急死したことをレイバーノーツ誌9月号が伝えている。12年間アメリカ労働運動を代表してきた同氏は元炭鉱労働者で、歴史的な炭鉱ストライキの指導者であった。同氏の急死を受けてリズ・シューラ―書記長が会長代行を来年6月まで務めており、アメリカ労働運動のトップは女性に替わった。(レイバーネット国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

AFL-CIOトラムカ会長、急死

レイバーノーツ編集部  2021年8月13日


*8月5日、AFL-CIO会長リチャード・トラムカ氏 心臓発作で死去

 2009年からAFL-CIOの会長を務めていたリチャード・トラムカ氏が、8月5日に心臓発作で亡くなった。1949年、ピッツバーグ郊外で炭鉱労働者と主婦の間に生まれたトラム氏は炭鉱で働いたのちに、弁護士となり、その後、33歳で全米鉱山労組UMWA会長になつた。

 レーガン・ブッシュ時代には珍しく労働者の勝利に終わった1989年の9カ月にわたるピットストン炭鉱ストライキの時にトラムカはUMWA会長だった。同社は石炭産業全体の年金・医療基金から撤退しようと大幅な譲歩を組合側に迫ったが、UMWAは反撃して勝利したのである。

 ダン・ラボッツは、レイバーノーツ社の『トリブルメーカーズ・ハンドブック』という本の中で、炭鉱労働者たちが非暴力市民的不服従の訓練をして戦いに備えたことを紹介している。会社側が裁判所から差し止め命令を取り付ける度に、ストライキ労働者たちは巡回ピケや大規模デモなど、別の戦術に果敢に切り替えていった。

 ストライキ開始から5ヶ月が経過し、石炭生産高は30%減少したが、ピッツトン社は依然として交渉を拒否していた。そこでUMWAは新しい戦術を編み出した。バージニア州南西部で採掘されたすべての石炭を選別・洗浄する世界最大級の同社のモス3処理場を占拠するという、周到に準備された大胆な戦術である。

 ある日の夜明け前、工場の門前に1,000人の支援者が集まり、98人の鉱夫と1人の聖職者が、全員扮装して素手で、処理場に入って占拠した。警備員2人は逃げ出した。噂はすぐに広まり、日暮れ時には近隣の州から連帯のキャラバンが来て、2,000人にも群衆が処理場の外で応援した。数日後には、この占拠によって流れが変わり、ピッツトン社は再び交渉のテーブルにつくことになった。

新しい声

 1995年にAFL-CIOとしては初めての競争的役員選挙が行われ、トラムカは「ニューボイス」派の候補者としてAFL-CIO書記長に選出された。ニューボイスは、何百万人もの新規組合員を組織化する必要性を強調し、各構成組合に予算の30%を組織化に充てるよう働きかけた。

 トラムカの在任中、労働運動は多くの問題でより進歩的な立場をとり、特に移民労働者との連携を強めた。「移民があなたの工場を海外に移転させたのですか? 移民があなたの年金と健康保険を奪ったのですか?」と2010年の演説で問いかけた。

 また、2014年にミズーリ州ファーガソンで警察官が食料品店の労働者の息子である黒人のティーンエイジャー、マイケル・ブラウンを殺害した時、トラムカは組合員にアメリカにおける人種差別の現実を率直に議論するよう求めた。そして、AFL-CIOは「人種的・経済的正義に関する委員会」を設置し、全国を回って話し合いを始めた。

 トラムカは、来年6月のAFL-CIOの大会で会長を退任する予定だった。以前から、客室乗務員組合のサラ・ネルソン会長が、リズ・シューラー書記長に挑戦して会長選挙に立候補するのではないかと言われていた。トラムカ死去を受けて、シュラー氏が会長代行を務めている。

 トラムカのリーダーシップの下では、労働組合の将来展望は好転することが期待されたが、実現することはなかった。現在の組合組織率は10.8%だが、トラムカがAFL-CIO会長に就任したときは14.9%だった。労働運動の活性化のためには、ピッツトンで行われたような戦いがもっと必要になることは間違いないだろう。


Created by staff01. Last modified on 2021-08-31 12:37:57 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について