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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(7.8) : またも沈黙、オリパラ学校連携観戦について
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●根津公子の都教委傍聴記(2021.7.8)

またも沈黙、オリパラ学校連携観戦について

 公開議題は議案「都立高校の設置条例施行規則の一部を改正する規則の制定について」と報告「東京都教育施策大綱子供版の作成について」のみ。19日間連続で前週を上回るコロナ感染者が出ている東京で、都教委は未だオリンピック・パラリンピック学校連携観戦中止を表明しておらず、その件で教育委員から発言があることを期待して傍聴した。

 30分間の議事が終了した時点で、医学博士である秋山教育委員が「教育庁で行っているコロナ感染対策の進捗を教えてほしい」と発言した。担当所管の回答は「6月25日から特別支援学校の教員を対象にワクチン接種を行っている」というもの。都教委が最重要施策としてきたオリパラ教育の集大成と銘打つ学校連携観戦についてはどちらも触れず仕舞い。沈黙は肯定であり加担であることを承知したうえでの沈黙であろう。我が子・我が孫が学校連携観戦で感染しても、五輪学校連携観戦が「子どもたちにかけがえのないレガシーを残した」と言うのであろうか。

 目黒区を皮切りに学校連携観戦を中止した区市町村教委は昨日段階で35自治体となった。都教委と地教委は上下の関係ではなく互いに独立した対等な機関なのだから、都教委が中止しなくても地教委が中止を決められる。これまで長いこと、各地教委は都教委の「指導・助言」に従うだけの教育行政をしてきた中、今回は地教委が保護者や市民の声に耳を傾け、中止を決めたことにほっとする。このことに学び、例えば「君が代」不起立・不伴奏処分をやめるなど、都教委から独立した教育行政を地教委は実行していってほしい。

1.「都立高校の設置条例施行規則の一部を改正する規則の制定について」

 田柄高校の普通科(外国文化コース)、五日市高校の普通科(ことばと情報コース)を廃止し普通科に改編し、立川高校には創造理数科を開設するとのこと。創造理数科設置の目的は、「理数系分野の幅広い教養と情報活用能力等を高いレベルで併せもち、それらを生かして新しい価値(イノベーション)を生み出すことのできる人材の育成」で、大学・企業などの研究機関と連携するという。創造理数科設置は私立のトップクラスの高校に負けない学校を創出するためなのか。

2.「東京都教育施策大綱子供版の作成について」

 東京都教育施策大綱は、東京都のこれからの教育の基本的な方向性を示すものとして、教育委員会と議論を重ね、知事が策定するもの。今年3月に策定したこの大綱は、「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って自ら伸び、育つ教育を目指して」とタイトルをつける。1ページ目に「『チルドレンファースト』の社会を実現」するという小池都知事の挨拶を載せる。大綱を「子どもにもわかりやすく構成してWeb上で公開し各学校や各地教委に周知するとともに、教育施策に関する子ども目線の意見やアイディアを聴取し、今後の施策立案の参考としていく」という。帰宅して都教委のHPを見たら、すでに「子供版」が掲載されていた。

 HPを閲覧していただいた方が早いが、「子供版」はイラストと文字とを使い、「未来の東京をえがいてみよう」「未来の東京を生きていくために」「東京の目指す教育」「『東京型モデル』では次のようなことを大切に考えています」の4画面で表す。

「『東京型モデル』では次のようなことを大切に考えています」では、「一人ひとりに合った学び」「イノベーション人材の育成」「グローバル人材の育成」「インクルージョンの推進」「きめ細かいサポート」「教師力・学校力の強化」と書き、「上のことを実現するために、『こんなことを勉強したいな』、『学校がこうなればいいな』など、アイディアを考えましょう。」と書く。 7月中に2校が小学校6年生を対象に出前授業を行うとのこと。

 子どもたちに都教委の教育の基本方針を理解させようとするのは何のため。全く意味不明。「一人ひとりに合った教育」ではなく、ますますの「差別選別の教育」であること、「インクルージョンの推進」ではなく分離教育であることの矛盾に蓋をし、「グローバル人材の育成」と掲げながらその第1に「日本の伝統や文化を理解します」を掲げる。美しい言葉の羅列をもって、都教委は子どもたちをどう操作しようとしているのか。「子供版」が私には愚作としか思えないが、子どもたちが都教委を身近に感じることで成果があると踏んだのか。それとも、都教委の自己顕示欲の表出か。

 教育委員からは「デザインがあっても理解の助けにならない。『にもかかわらず』など、何年生なら理解できるかを考えて丁寧に作成してほしい」とかの苦言はあったが、「子供版」を授業で使うことへの批判はなかった。


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