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復興の聖火はゴールにたどり着けるだろうか〜双葉町・現地レポート

堀切さとみ

3月25日午前9時45分。ついにJビレッジから聖火リレーがスタートした。三日間 かけて福島県をランナーが走る初日、私は双葉町に行った。

福島第一原発に近い浜通りを走ることで原発事故からの復興を世界にアピールは ずだったが、昨年は二日前に中止が決まった。今年はどうなるのか。福島の隣り の宮城県でコロナ感染が拡大したり、著名人を中心に辞退するランナーが続出す る中で本当にやれるのか。前日まで半信半疑だった。

双葉町のコースは、一年前にリニューアルした双葉駅前ターミナル。わずか500 メートルを三人のランナーが走るという。12時前に会場に到着。双葉町からラン ナーがスタートする14時45分までどうやって待とうか。インタビューしようと双 葉町民らしき人を探してみるが、カメラや手帳を持つ人ばかり。

メディアではなさそうな人に声をかけると、東京から来たオリンピック広報課の 職員だったり。地元の聖火リレーの感染対策や警備体制の参考にしようと、視 察に来たという男性もいた。

ゴジラのテーマ曲をバックに、耳覚えのある声が聞こえてくる。「オリンピック、 ふざけんな! オリンピック、やめてしまえ!」。希望の牧場、吉沢正巳さん (浪江町民)だ。「原発のせいで俺たちの故郷はめちゃくちゃだ。復興なんてで きるわけないだろ。コロナ克服五輪? デタラメ言うな!」 

声を限りに泣きそ うな声で叫びながら、ランナーの走るコースをトラックで周回した。あまりの迫 力に怖がる子どももいたが、そばにいた母親に「この人は浪江町の牧場の人で、 殺処分に反対して牛を保護してる人ですよ」と話すと「ああ、そうでしたか。そ ういう牛飼いがいるって聞いたことありますよ」と笑顔で答えてくれた。

14時30分。駅舎の時計前に双葉町出身の声優・桜庭梨那さんがスタンバイ。「応 援は、 声は出さず手旗を振って」と司会者がアナウンスする。間近で観れるの はメディ ア関係者。「一般の人は外で」と係員が指示している。桜庭さんの家 族も応援に 来ていたが、どこで手旗を振ったのだろうか。

14時45分。第一走者が聖火を手にスタート。地元の伝統芸能「標葉せんだん太 鼓」が盛り上げる。何人もの警備の人に囲まれて、三人の走者は滞りなく走り終 えた。あっという間の出来事。後ろを振り返ると、道路の向こう側で沢山の「一 般の人」が見守っていた。町民とおぼしき女性に感想を聞くと「私は警備なの で」と言うので驚いた。一緒に行った双葉町民の鵜沼さんは「ここに来れば双葉 の人に会えると思ってきたのに、ほとんどいなかったね」とガッカリしていた。

「標葉せんだん太鼓」は一年前、双葉駅がリニューアルしたときも太鼓を披露し ていた。代表の横山久勝さん(双葉町民/写真下)は「双葉町の復興? まだ何もしていな い。この駅が新しくなったからと言って、何の影響もない。ただ壊しているだ け」と話した。この日の演目は、相馬野馬追にヒントを得て横山さんが作曲した ものだった。

その野馬追の本拠地である相馬市の市長が翌日(26日)のリレーの挨拶で「原発 事故で死んだ人は誰もいない」と発言し、物議を醸している。復興の聖火はゴー ルにたどり着けるだろうか。


Created by staff01. Last modified on 2021-03-27 08:38:01 Copyright: Default

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