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LNJ Logo 太田昌国のコラム : ドレスデン空襲、東京空襲から75周年
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 ●第41回 2020年3月10日(毎月10日)

 ドレスデン空襲、東京空襲から75周年


 日本のマスメディアは、国際的な視野を大事にせずに、視聴者や読者を一国主義的な関心の中に閉じ込めることに熱心だ。そのことを最悪な形で象徴するのがNHKの定時ニュースであることは、もはや明らかなことだろう。それに比べるなら、或る程度の渇きを癒してくれるのがNHK・BSの「ワールド・ニュース」だが、昨秋からは日本人解説委員の登場が多くなり、その分つまらなくなった。新聞では、共産党の「しんぶん赤旗」が、時々だが、国際的な視野を広げる記事を提供している。(写真=東京大空襲)

 現在はコロナウイルスの行く末に誰もが一定の関心を持ち続けることに不思議はないが、関心の一極集中はどんな場合にも、現状認識上のゆがみをもたらす。そこで、ここからは、前号を引き継ぐ【承前】として書き継いでいきたい。

 1944年6月に行われた連合国軍のノルマンディ上陸作戦以降、ナチス・ドイツが敗北へと向かう75年前の出来事に、その後も年代記的に順次注目し続けた。2月13日は、第二次大戦末期の1945年同日から15日にかけて英米軍が行なったドイツ・ドレスデンに対する空襲から75周年だった。13日同市で開かれた記念式典ではシュタインマイヤー大統領が「75年前のドレスデン空爆を思い出すとともに、すべての民族大虐殺、戦争、暴力の犠牲者を思い出す」と語り、「我々はドイツの罪を忘れてはならない」と演説した。集まった人びとも、単なる「被災」の土地としてだけではなく、バロック建築物なども多い芸術の都としてのドレスデンがナチス党の一大拠点でもあった過去や、ナチズムが嫌う書物を焚書した最初の地でもあったことも想起したようだ。


 *ドレスデンの空襲

 ネオナチや極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)も集会を開き、「文化都市であるドレスデン空爆は米英によるホロコースト」とか「ドイツの輝かしい歴史の中でナチスのそれは “鳥の糞” のようなもの」などと語っているだけに(以上、引用は「しんぶん赤旗」2月15日〜18日号から)、過去の歴史から何を学ぶかという点で、日本と同じように、ドイツにも明確に分岐する二つの観点があることがわかる。時の政権が、どんな立場で何を語っているかに大きな違いがあるが。

 極右の台頭という逆風に曝されているとはいえ、ナチス体験については一定の内省的かつ実質的な積み重ねをしてきたドイツ社会は、この間、別な問いにも直面している。かつてドイツ領として植民地支配を行なったタンザニアやナミビアなどのアフリカ諸国が、その時代になされた文化財や人骨の返還や賠償を求めて交渉を提起していることである。これは、もちろん、スペイン、ポルトガル、イギリス、オランダ、ベルギー、フランス、イタリア、米国、日本など近代史の展開過程で植民地主義を実践したどの国家社会もが避けることのできない課題である。

 日本にも、対アジアの侵略戦争に関わる事実を追求することで、真実解明・処罰・和解をめざす民衆運動はあり、私もそのいくつかに参加はしている。それが、ドイツのような「広がり」を得ていないのは、対外的には社会全体を否応なく代表する政府・国会のレベルでは戦争責任を自覚する言動と具体的な政策を戦後史の過程で決定的に欠いてきたこと、ましてや現政権の場合には、むしろ侵略の事実を覆い隠し、過去を美化する歴史観を有する極右体質を持つことにある。それがメディア報道、社会教育、学校教育などの在り方も制約し、戦争責任問題を全社会的な課題として取り組むことを阻んできた。

 きょう3月10日は、米軍による東京大空襲が行なわれて75周年の日に当たる。この日の記憶は語り継がれなければならないが、そこには、一ヵ月前のドレスデンでなされた内省的な語りが必要だろう。ドレスデンや東京の場合のように、空からの無差別大量殺戮という戦法を取り上げた前田哲男の重要な著作『戦略爆撃の思想』(朝日新聞社、1988年。その後1997年に社会思想社の現代教養文庫に収められた)も、「ゲルニカ―重慶―広島への軌跡」という世界的な視野の下に書かれている。


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